リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ナイロビ・サミット(ICPD25)

国連人口基金東京事務所の報告より

ICPD25周年 ナイロビ・サミット開催報告

1994 年の国際人口開発会議/カイロ会議で、人口問題に関する各国の合意に基づいてカイロ行動計画が採択されました。あれから25 年がたち、「残された課題」を達成することを目的として、2019 年 11 月 12~14 日にナイロビ・サミット(ICPD25)が開催されました。
本サミットは、ケニア政府、デンマーク政府及び UNFPA が共催し、ケニヤッタ大統領、メアリ― デンマーク皇太 子妃殿下(UNFPA 親善大使)をはじめ、各国の首脳、大臣、政府機関、国会議員、地方自治体、国際機関、民間企業、研究機関、NGO、市民団体(ユース、障がい者団体、宗 教団体など)から 170 ヵ国以上、総勢 8300 名以上が出席した包括的なサミットとなりました。


【コミットメント】

本サミットの特徴は、サミットを議論する場で終わらせず、閉幕後に「行動計画」を達成させるための参加者らによる「コミットメント」の表明にあります。コミットメントの数は1253に達し、こちらからご覧いただけます。

各国政府・NGO・企業等から提出されたコミットメントの総数は 1,253 件、総額 80 億米ドルにのぼりました。コミットメントは下記の5つのテーマに沿って提出され、提出された内訳は次のとおりです。(※小数点以下の繰り上げの都合、以下は合計が101%となっています)

【43%】 UHC 達成のためのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの完全普及

【23%】 経済成長と持続可能な開発を推進するための人口動態の多様性の活用

【21%】 ジェンダーに基づく暴力と有害な慣習(児童婚、FGM)への対応

【8%】  人道危機下におけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケアに関する権利の保障

【6%】  ICPD 行動計画の達成とこれまでの成果を維持するための資金調達

【ナイロビ声明】

今般のサミットでは、ナイロビ声明として12のコミットメントが制定されました。

声明の全文はこちらです(英文)

ICPD 行動計画の達成を加速させ、持続可能な開発のための 2030 アジェンダを実現する
家族計画サービスへのアクセスが満たされない状況を ZERO に
妊娠・出産による妊産婦の死亡・疾病を ZERO にし、UHC 政策に組み込む
すべての若者が正しい知識と情報を入手し、自身で SRHR の選択ができるようにする
ジェンダーに基づく暴力と児童婚や FGM などの有害な慣習や差別を ZERO に
ICPD 行動計画の実現を推進するための国家予算配分と新しい資金調達の検討
ICPD 行動計画を実施するための国際的な資金調達を増加する
人口の多様性に考慮しボーナスを活用するために、若者、特に少女に対する教育、雇用、健康などへの投資
あらゆる差別の無い、平和かつ公正で包括的な誰も取り残されない社会づくり
適格なデータに基づく政策を可能にするためのデータシステムの構築
若者の健康とウェルビーイングに関する決定プロセスに当事者である若者を含める
人道危機や紛争後の脆弱な状況における基本的人権の確保と SRHR の保障

tokyo.unfpa.org

日本産婦人科医会の「人工妊娠中絶の定義」

人工妊娠中絶の定義

 母体保護法第2条第2項では、人工妊娠中絶を次のように規定している。

 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出することをいう。なお、胎児付属物とは胎盤、卵膜、暖帯、羊水のことである。

 この胎児が母体外において生命を保続できない時期、すなわち胎児が生存の可能性がない時期の判断に関しては、母体保護法第14条に基づいて指定された医師(指定医師)によって個々の事例について行われるものであるが、当初は、昭和28年6月の厚生事務次官通知「優生保護法の施行について」をもってその時期の基準は、通常妊娠8月未満とされてきたのである。

 ここにおける生命の保続すなわち、生存の可能性とは、出産時の生死のことではなく、その予後のことである。

 しかし、医学の進歩にともない、未熟児保育の医学的水準等も向上してきており、また指定医師は、その医学水準に基づいて生命の保続の時期についての判断を行っているところである。このような現状に鑑み、厚生省では関連団体等の意見を聴取し、厚生事務次官通知をもって当時の優生保護法により人工妊娠中絶を実施することのできる時期を昭和51年1月には「通常満24週未満」に、さらに平成3年1月からは「通常満22週未満」に改めた。

優生保護法第2条第2項の「胎児が、母体外において生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。この時期の判断は、個々の事例について優生保護法第14条に基づいて指定された医師によって行われるものであること。
(平成2年3月20日、厚生省発健医第55号、厚生事務次官通知)

 さらに、人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更に伴い、その円滑な実施を図るため出された保健医療局精神保健課長通知によると

1. 優生保護法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準の変更は、最近における未熟児に対する医療水準の向上等により、妊娠満24週未満においても生育している事例がみられることにかんがみ行われたものであること。
2. 事務次官通知により示している基準は、優生保護法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することができない時期」に関する医学的な観点からの基準であり、高度な医療施設において胎児が生育できる限界に基づいて定めたものであって、当該時期以降のすべての胎児が生育することを必ずしも意味しないものであること。
3. 優生保護法により人工妊娠中絶を実施することができる時期の判定は、優生保護法第14条の規定に基づき都道府県の医師会が指定した医師が個々の事例において、医学的観点から客観的に判断するものであること
(平成2年3月20日、健医精発第12号)

 即ち、この基準はあくまで医学的な観点からの基準であり、一般医療レベルでの可能性をとりあげているものではない。中絶を実施できる時期は、個々に指定医が医学的観点から客観的に「胎児が母体外において生命を保続できない」と判断する時期であり、その判定は、専門家である指定医に委ねられ、指定医の裁量権が強調されている。指定医の責任は重く、その判断は明確な医学的理由があげられ、他医も納得するような客観的な判断でなくてはならない。

日本産婦人科医会の「人工妊娠中絶の定義」より

ロシアの中絶(1932年)

Wikipediaによれば、ロシアは1920年に中絶を合法化し、その後、1936-55年にかけては禁止したり許可したりをくり返したとされる。

たまたま1932 年のロシアの中絶クリニックを視察した結果を報告している英語の文献を見つけた。

妊娠3か月未満は女性の権利として認められており、それ以上は何らかの理由(医療的~経済的)があれば許可される。麻酔なしでscraping(掻き取る)のが普通で、そのクリニックでは1日60件以上の中絶を行い、年間に子宮穿孔は2、3件であるという。興味深い。
Abortion in Soviet Russia

Late medical termination of pregnancy: 16-23 weeks

中絶薬(ミフェプリストン+ミソプロストール)による後期(第2三半期後半の)中絶の患者向け説明書(イギリス Lillian Holland Ward, St Mary’s Hospital)

詳細にわたって自分がどんな処置を受けるのかがよく分かるし、リスクをデータで示すことで患者を安心させるような内容になっています。イギリスの産婦人科医療には、一貫して患者に情報をきっちり提供するという態度が感じられます。なお、こうした遅いタイミングで中絶するのは、ほとんどが胎児に重篤な問題があった場合だと考えられます。

ダウンロードするには、以下のサイトで”Late medical termination of pregnancy: 16-23 weeks”を検索してください。
https://www.imperial.nhs.uk/our-locations/st-marys-hospital/wards

裁判員裁判の難しさ

嬰児の死体遺棄について

裁判員経験者の意見交換会 令和元年10月28日 東京地方裁判所
嬰児殺の罪が軽くなることについての疑問が呈されている。

[https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/file/saibanin-giji-R011028.pdf:title=裁判員経験者の意見交換会
1 日時 令和元年10月28日(月)午後3時から午後5時まで
2 場所 東京地方裁判所第2会議室]