リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

あの日、中絶を選んだ少女へ 誕生の瞬間、SNSで発信

朝日新聞2019年11月23日

文章のみ貼り付けておきます。

 出産の写真と映像をインスタグラムで発信する現役助産師2人組がいる。沖縄を中心に活動するフォトユニット「UMARE(ウマレ)」のasa(あさ)さんとmaki(まき)さん。陣痛から分娩(ぶんべん)まで、妊婦と家族に寄り添って記録する「バースフォト」を手がける。

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へその緒がついたまま、お母さんのおなかの上で元気よく泣く赤ちゃん=沖縄県、UMARE撮影

 フォロワーは開設2年で1万人を突破。今年5月に沖縄で開催した初の単独写真展は3日間で5千人が来場し、高校で授業に参加するなど、活動の場を広げている。目的は若者への性教育だ。

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力強い泣き声が聞こえてきそうな1枚=沖縄県、UMARE撮影

 asaさんは助産師学校時代に実習先の病院で見た光景が忘れられない。姉に付き添われ中絶に訪れた17歳。胎児を子宮の外に出すため薬で起こした陣痛に「きたきた、痛い、ガチ」とふざけると、姉は「マジ? ウケる」とちゃかした。笑い声が響く分娩室から出てきたのは、白いトレーに載せられた真っ赤な胎児だった。身長15センチ。未完成の皮膚は透明で骨が透けて見える。「中絶を短絡的に考えてる」。こらえきれない怒りは湧くけれど、学生で何もできない自分がもどかしかった。

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普段目にすることがない胎盤。妊娠中、お母さんと赤ちゃんをつなぎ守ってきた=沖縄県、UMARE撮影

 転機は助産師3年目に訪れた。職場の先輩だったmakiさんと意気投合。「出生率日本一の場所で、たくさんのお産に立ち会おう」と関西から移住した。しかし、あこがれの地で予想外の現実にぶつかる。10代の中絶の多さ、出産や子育てで学校を休む高校生。

 一番驚いたのは、産後の家族計画支援で初めて正しいコンドームの使い方を知る若い母親がいたことだ。実情を知り驚いた。文部科学省が中学校の保健体育授業のガイドラインを示した学習指導要領には「避妊」や「性交」の言葉はない。受精や妊娠は教えるが「妊娠の経過は取り扱わない」と定めているからだ。「肝心なことが教えられていない」。憤りが行動へかき立てた。

駆け出しの頃は分かっていなかったと、最近思うことがある。あの17歳の少女に何があったのか。

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陣痛は痛みと休みの繰り返し=沖縄県、UMARE撮影

 命の大切さを伝えようと、若い世代がアクセスしやすいSNSで発信することを決めた。インスタグラムを選んだのは出産の壮絶さをありのままに伝えられるから。痛みに声を上げ、体は傷つき血も出る。出産中に大出血を起こして亡くなる人もいた。「写真と映像を見て、それは今自分が望む場面か考えて欲しい」

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生まれた瞬間の母親の表情を逃さない=沖縄県、UMARE撮影

 公開を始めると先輩助産師からは「神聖なお産を人目にさらすなんて」という声もあった。だが、教育現場の反応は意外だった。

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やっと握手=沖縄県、UMARE撮影

 今年6月、沖縄県内の高校から「保健体育の授業で写真を使わせてほしい」と声がかかった。2年生男女120人。写真パネルを並べて状況を想像してもらい、今自分や彼女に子どもができたらどうするかと問いかけた。

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口から羊水をピューっと出す赤ちゃん。医師も助産師もみんな笑顔になる=沖縄県、UMARE撮影

 ある女子生徒は「産めない。まだ学生だから」。胎盤の写真を見た女子生徒は「自分の体から出てくると考えると少し怖い」と、自分の身に引き寄せて考えてくれていた。

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出産した直後のママの表情=沖縄県、UMARE撮影

 別の学校関係者からも「映像から性衝動の先をイメージできるのが素晴らしい」と背中を押された。

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生まれたての我が子を抱く父親=沖縄県、UMARE撮影

 今は非常勤の助産師として働きながら活動する。出産のタイミングは予測不可能で予定日前後2週間は仕事を休んで24時間態勢で待機する。写真はmakiさん、動画はasaさんの担当。妊婦さんからの電話を合図に早朝や深夜でも病院へ向かう。狭い分娩室の中で医師やお産を担当する助産師の邪魔にならず、しっかりと誕生の瞬間を捉えられるようにポジション取りには神経を使う。撮影した写真と動画は2人で選びインスタへ。写真に付ける文章は書いては消し、一晩寝かせて読み返し、本当に伝えたいことが伝えられる文章になっているか何度も推敲(すいこう)する。

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髪がぬれたまま。生まれたての赤ちゃん=沖縄県、UMARE撮影

 本名と顔を隠して活動するのは、インスタグラムに掲載したエピソードから個人を推測されないためだ。

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手がピーン=沖縄県、UMARE撮影

 駆け出しの頃には分かっていなかったと、最近思うことがある。あの日、実習先で見た17歳の少女。学校、経済的な理由、性暴力。今ならいくつでもあがる中絶の背景を想像できなかった。姉に付き添われて来た意味も。「1人で背負いこまないで」と過去に戻って寄り添いたい。育てられないなら産まない選択も命に対する責任の取り方のひとつだと。でも不必要な中絶は減らしたい。だから、幅広い世代と様々な立場の人にもっと性教育を広めたい。

 「知識は自分と相手と小さな命を守る武器です」

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「UMARE」の(左から)makiさんとasaさん=2019年9月13日午後、沖縄県南城市、遠藤真梨撮影

 インスタグラムのアカウントは(@umare_mw)(遠藤真梨)

記事全容は朝日新聞のサイトで。
digital.asahi.com

あの日、中絶を選んだ少女へ 誕生の瞬間、SNSで発信

朝日新聞 デジタル apital

 駆け出しの頃には分かっていなかったと、最近思うことがある。あの日、実習先で見た17歳の少女。学校、経済的な理由、性暴力。今ならいくつでもあがる中絶の背景を想像できなかった。姉に付き添われて来た意味も。「1人で背負いこまないで」と過去に戻って寄り添いたい。育てられないなら産まない選択も命に対する責任の取り方のひとつだと。でも不必要な中絶は減らしたい。だから、幅広い世代と様々な立場の人にもっと性教育を広めたい。

 「知識は自分と相手と小さな命を守る武器です」

digital.asahi.com

ルポ貧困女子 飯島裕子著

忘備録

婚活ブームに関して興味深いデータが集められているので、メモしておきます。

  • 2009の流行語「婚活」~最初に用いたのは社会学山田昌弘少子化ジャーナリスト白河桃子(『「婚活」時代』ディスカヴァー・ツウェンティワン 2008年)(p.141)
  • 1965年以来、長期にわたって、恋愛結婚全盛の時代が続いてきたが、婚活ブーム以降、かつての見合い結婚に近い形の知人からの紹介や結婚情報サービスを使う人も増えてきている。こうした婚活ブームの背景には、「負け犬」の先に待っている無縁社会への恐怖もあったに違いない。(p.142)
  • 震災後、結婚に向かう人も増えた。ある百貨店では、震災翌月の婚約指輪の売り上げが通常より四割増え、結婚情報サービスの資料請求や入会が軒並み増加したという。女性誌では「「いますぐ結婚したいっ!」はダメですか? 寄り添いたいからキズナ婚:(『MORE』2011年9月号)などの特集が組まれている。(pp.142-3)

少子高齢化に対する施策についても。

  • 安倍政権は、女性の活躍を成長戦略の柱とし、女性が働き、子を産み、育てやすい環境を整えるため、としてさまざまな政策を打ち出している。

 しかし、少子高齢化社会に対する施策は、安倍政権成立のずっと以前から進められてきた。

  • 「改正育児・介護休業法」(2001年)」
  • 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(2007年) (以上、p.143)
  • 2015年9月第三次安倍内閣成立と同時に「一億総活躍社会」実現が掲げられ、新「三本の矢」の一つとして、「夢を紡ぐ子育て支援」(希望出生率1.8)が大々的に掲げられた。……政府は早速、子育て支援として「三世代同居・近居の推進」を閣議決定したほか、待機児童ゼロへの「積極的取り組みを行う」としている。(pp.143-4)
  • また同じ月に菅義偉官房長官は、国民的人気俳優と女優の結婚に対して、「結婚を機に、やはりママさんたちが、一緒に子どもを産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれればいいなと思っています」と発言。(p.144)

*産経ニュースによれば、『正論』10月号に八木秀次(麗澤大教授)が「福山雅治さん、ぜひとも「国家に貢献」を!」という記事を寄せている中で、菅義偉内閣官房長官が9月29日のテレビ番組で行った発言として引用している。この引用によれば、最後に「たくさん産んでください」とも付け加えていたようだ。https://www.sankei.com/premium/news/151109/prm1511090007-n1.html

  • トップアイドル(23歳)がフジテレビ系のトークショーに出演した安倍首相を前に、「体の限界がくるまで子どもをたくさん産んで国に貢献したい。しっかり仕事もします」といった趣旨の発言をしている。(pp.144-5)

Biglobeニュースによれば、この発言主はHKT48指原莉乃
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0503/mcz_160503_4167370363.html

  • 「出産」「国家」「貢献」といったキーワードが結びつき、戦前の「産めよ殖やせよ国のため」を連想させられる。(p.145)

以下の表も役立ちそう。

表5-1 近年の少子化対策関連法等一覧
1994年 エンゼルプラン
2000年 新エンゼルプラン
2001年 改正育児・介護休業法
2003年 次世代育成支援対策推進法少子化社会対策基本法
2004年 少子化社会対策大綱、子ども・子育て応援プラン
2007年 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
2010年 子ども・子育てビジョン
2013年 待機児童解消加速化プラン
2015年 一億総活躍――希望出生率1.8

おまけ。

  • 安倍政権は成長戦略の柱として、女性活躍推進を掲げてきた。しかし、女性活躍に関わる政策はいずれも、日本の喫緊の課題とされる少子化対策と表裏となっているものばかりだ。そに違和感と窮屈さを感じる人は少なくないだろう。
  • かつて”女性は産む機械”というストレートな発言をし、集中砲火を浴びた大臣がいた。しかし経済的功利と少子高齢化対策のため、女性活躍を推進するという発想は、女性を”モノ扱い”するのと同じであり、この発言と同根ではないか。(p.162)

*以下、Wikipediaより
柳澤 伯夫(やなぎさわ はくお、1935年8月18日 - )は、日本の大蔵官僚、政治家。
2007年1月27日、島根県松江市で開かれた自民党県議の集会で『これからの年金・福祉・医療の展望について』を議題に講演した際、少子化対策について、「機械って言っちゃ申し訳ないけど」「機械って言ってごめんなさいね」との言葉を挟みつつ、「15-50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と女性を機械に例えた発言として報じられた。
(出典: “女性は「産む機械、装置」 松江市柳沢厚労相”. 共同通信社. 47NEWS. (2007年1月27日) 2014年4月19日閲覧。)

強制不妊訴訟をめぐる主な争点

【図解・社会】強制不妊訴訟をめぐる主な争点(2019年5月):時事ドットコム

【図解・社会】強制不妊訴訟をめぐる主な争点(2019年5月)

強制不妊訴訟をめぐる主な争点
優生保護法違憲=国の賠償は認めず-強制不妊、初の司法判断・仙台地裁
※記事などの内容は2019年5月28日掲載時のものです


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jiji.com 【図解・社会】強制不妊訴訟をめぐる主な争点(2019年5月)より

 旧優生保護法に基づき不妊手術を強制された女性2人が、国を相手取り計7150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、仙台地裁であった。中島基至裁判長は旧法の規定について、「個人の尊厳を踏みにじるものだ」と述べ、憲法に違反すると判断した。一方で、被害を救済する法律が作られなかったことについて、「立法措置が必要不可欠であることが明白だったとは言えない」と述べ、賠償支払いは認めなかった。
 旧優生保護法違憲性が争われた訴訟で、初の司法判断。7地裁で係争中の同種訴訟にも影響を与えそうだ。原告側は控訴する方針。
 原告側は、旧優生保護法違憲で、国が救済の立法措置を長期にわたり怠った「立法不作為」の過失があったと訴えていた。
 中島裁判長は判決で、誰といつ子を持つかを選ぶ「性と生殖に関する権利」は、幸福追求権を保障する憲法13条に照らし尊重されるべきだと言及。強制不妊手術について「不合理な理由により、子を産み育てる幸福の可能性を一方的に奪い去るものだ」と述べ、旧法の規定は憲法に違反すると判断した。
 その上で、旧法が推進した「優生思想」が法改正まで社会に根強く残っていたことや、手術を裏付ける証拠の入手が容易ではなかったことを挙げ、被害者が早期に賠償請求することは困難だったとし、救済のための新たな立法の必要性を認めた。
 ただ、新たな法律の要件や賠償額などは、国会の裁量に委ねられていると指摘。さらに、国内では性と生殖に関する権利をめぐる法的議論の蓄積が少なく、旧法をめぐる司法判断もなかったとして、国会の立法不作為が違法とまでは言えないと結論付けた。
 原告側は、不妊手術そのものに対する国の賠償責任も主張。これまで賠償請求できなかったことにはやむを得ない事情があり、20年で請求権が消滅すると規定した民法の「除斥期間」を原告らに適用するのは違憲と訴えたが、中島裁判長は除斥期間の規定

Health Canada approves updates to Mifegymiso prescribing information: Ultrasound no longer mandatory

ヘルスカナダ 中絶薬の処方前の超音波診断を要件から外す(要約あり、本文は英文)

ヘルスカナダとは、カナダの保健医療を束ねる行政機関です。これまで、中絶処方のためには超音波診断で妊娠週数を確定する必要がありましたが、この要件のために中絶が先送りになるデメリットと、超音波診断を先に受けないことで生じうるデメリットを比較して、早めの中越を行えるように先に薬を処方できるようになりました。なおカナダは妊娠週数の縛りもなく、法的には、中絶はすべて自由に行えるようになりました。ただし、地域によってアクセシビリティは異なり、ユニバーサルケアが残された課題になっています。

https://healthycanadians.gc.ca/recall-alert-rappel-avis/hc-sc/2019/69620a-eng.php

ナイロビ・サミット(ICPD25)

国連人口基金東京事務所の報告より

ICPD25周年 ナイロビ・サミット開催報告

1994 年の国際人口開発会議/カイロ会議で、人口問題に関する各国の合意に基づいてカイロ行動計画が採択されました。あれから25 年がたち、「残された課題」を達成することを目的として、2019 年 11 月 12~14 日にナイロビ・サミット(ICPD25)が開催されました。
本サミットは、ケニア政府、デンマーク政府及び UNFPA が共催し、ケニヤッタ大統領、メアリ― デンマーク皇太 子妃殿下(UNFPA 親善大使)をはじめ、各国の首脳、大臣、政府機関、国会議員、地方自治体、国際機関、民間企業、研究機関、NGO、市民団体(ユース、障がい者団体、宗 教団体など)から 170 ヵ国以上、総勢 8300 名以上が出席した包括的なサミットとなりました。


【コミットメント】

本サミットの特徴は、サミットを議論する場で終わらせず、閉幕後に「行動計画」を達成させるための参加者らによる「コミットメント」の表明にあります。コミットメントの数は1253に達し、こちらからご覧いただけます。

各国政府・NGO・企業等から提出されたコミットメントの総数は 1,253 件、総額 80 億米ドルにのぼりました。コミットメントは下記の5つのテーマに沿って提出され、提出された内訳は次のとおりです。(※小数点以下の繰り上げの都合、以下は合計が101%となっています)

【43%】 UHC 達成のためのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの完全普及

【23%】 経済成長と持続可能な開発を推進するための人口動態の多様性の活用

【21%】 ジェンダーに基づく暴力と有害な慣習(児童婚、FGM)への対応

【8%】  人道危機下におけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケアに関する権利の保障

【6%】  ICPD 行動計画の達成とこれまでの成果を維持するための資金調達

【ナイロビ声明】

今般のサミットでは、ナイロビ声明として12のコミットメントが制定されました。

声明の全文はこちらです(英文)

ICPD 行動計画の達成を加速させ、持続可能な開発のための 2030 アジェンダを実現する
家族計画サービスへのアクセスが満たされない状況を ZERO に
妊娠・出産による妊産婦の死亡・疾病を ZERO にし、UHC 政策に組み込む
すべての若者が正しい知識と情報を入手し、自身で SRHR の選択ができるようにする
ジェンダーに基づく暴力と児童婚や FGM などの有害な慣習や差別を ZERO に
ICPD 行動計画の実現を推進するための国家予算配分と新しい資金調達の検討
ICPD 行動計画を実施するための国際的な資金調達を増加する
人口の多様性に考慮しボーナスを活用するために、若者、特に少女に対する教育、雇用、健康などへの投資
あらゆる差別の無い、平和かつ公正で包括的な誰も取り残されない社会づくり
適格なデータに基づく政策を可能にするためのデータシステムの構築
若者の健康とウェルビーイングに関する決定プロセスに当事者である若者を含める
人道危機や紛争後の脆弱な状況における基本的人権の確保と SRHR の保障

tokyo.unfpa.org