リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

The Role of Reproductive Justice Movements in Challenging South Korea’s Abortion Ban

韓国の堕胎罪撤廃に果たしたリプロジャスティスの運動

Health and Human Rights JournalのDecember 2019 vol. 21 number 2に次の記事があります。韓国の堕胎罪撤廃に至った経緯がかなり詳しく分かります。

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The Role of Reproductive Justice Movements in Challenging South Korea’s Abortion Ban
Sunhye Kim, Na Young, and Yurim Lee

仙台放送:「家族に怒られる…」自宅のトイレで産み 胎児の遺体を放置 当時、未成年だった女に対する初公判〈宮城〉

こういう事件が起きるたびに、「相手の男はなにしてる!」と怒りがおさまらない! 女性だけを責めるのは絶対におかしいと思う。

自宅のトイレで胎児を産み落とし、遺体を放置したとして死体遺棄の罪に問われている当時、未成年だった女に対する初公判が仙台地方裁判所で開かれました。女は起訴内容を認め、「家族に怒られると思い、言えなかった」と話しました。

死体遺棄の罪に問われているのは、美里町に住む、20歳の無職の女です。

起訴状によりますと、女は19歳だった今年9月下旬、自宅のくみ取り式トイレで、胎児を産み落とし、遺体をトイレのタンクの中に放置したとされています。

9日の初公判で、女は「間違いありません」と起訴内容を認めました。

その後の被告人質問で女は、「妊娠しているかもしれないと思っていたが、病院に行けなかった。お腹のなかが動かなくなったので、妊娠は思い違いだと思っていた。産み落としたことに気付いてはいたが、家族に怒られると思い、言えなかった」と話しました。

検察側は「怒られたくないという自分勝手な気持ちから胎児の遺体を放置した犯行に汲むべき事情はない」として、懲役1年2カ月を求刑しました。

これに対し弁護側は、「真摯に反省している」などとして執行猶予付きの判決を求めました。

判決は12月18日に言い渡されます。

仙台放送

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191209-00000004-oxv-l04

日本のMVAキットは2万円

現在、日本では流産に使うMVAキットは保険がきく。

以下の表より、MVA使用の流産と未使用の流産の差額は2万円になるため、それがMVAキットの価格だと推察できる。

日本産婦人科医会「産婦人科社会保険診療報酬点数早見表 平成30年4月」(医会、2018)http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/04/69b407e184dd3d5e48c0ad2551549900.pdf(retrieved on 2019/11/30)

未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎:英米では「消えた術式」がまだ主流に

当然ながら、医療には人を裁いたり、罰を与えたりする役割はない。どんな人に対しても、その人の身体的、精神的、社会的健康を守るために、世界標準の安全な医療が提供されるべきである。それは中絶に対しても変わるものではない。

遠見才希子さんの論考
「未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎:英米では「消えた術式」がまだ主流に」より
president.jp

RCOGの中絶ガイドラインに見る医師たちの態度

残念ながら、日本で中絶医療を独占している指定医師たちは、WHOのガイドラインに従ってないばかりか、独自の手法を次代に伝授していくばかりで、エビデンスに基づいた中絶ケアの方法を打ち立てて来たわけではない。


海外では中絶に関する具体的な方法のガイドライン作りが行われている。


たとえば、英国のRCOGガイドラインは、『人工妊娠中絶を要求する女性たちのケア(エビデンスに基づく臨床ガイドライン)』というタイトルで、日進月歩の科学的エビデンスを盛り込むために改訂をくり返しており、現在は第7版が用いられている。


RCOGの臨床ガイドラインは中絶医療の詳細にわたって、推奨するケアの方法についてエビデンスを示しながら推奨強度別にランクを付けて具体的に提示している。そればかりか、中絶を巡る法的状況や倫理的問題などについても明確な見解を示している。


RCOGのガイドライン編集委員会は、「エビデンスを基盤にした医療とは、最良の研究で得られたエビデンスと臨床的な専門性および患者の価値観と統合させることを意味する」(RCOG, 2011)と捉えており、ベストプラクティスの実現を妨げている社会文化的な要因にも目を配っているためである。


そこには、プロとして一定の良識を共有しながらケアの受け手のためにより良い医療の実現を目指していくという明確な姿勢が感じられる。日本の指定医師たちにも、科学的エビデンスに基づいてより良い中絶医療を提供していく姿勢を求めたい。

十代の妊娠中絶とハイリスク出産の関係?

厚生労働省の周産期医療に関する都道府県向け報告書です。何年のものかにわかに分からなかったけど、とりあえず忘備録として貼り付けておきます。

十代の人工妊娠中絶率のところに次のコメントが見られます。

人工妊娠中絶を経験すると、その後の妊娠時にハイリスク出産となる可能性が高くなります。した
がって人工妊娠中絶実施率は、近い将来の周産期医療に影響を与えるものと考えられ
ます。

中絶後の妊娠が「ハイリスク出産」となるってどういうことでしょう? 搔爬をした場合にアッシャーマン症候群になりやすくなり、流産しやすくなるというのであれば理解できます。なお、吸引中絶や薬による中絶を行った場合は、アッシャーマン症候群になるるリスクが高まることはありません。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/kanrenjigyou-s.pdf

予定外妊娠が年間61万件 失敗少ない避妊法にすれば…

朝日新聞2019年11月27日に掲載

日本の15~44歳の女性の予定外妊娠は年間61万件にのぼるとする推計を、バイエル薬品と東京大の研究チームが発表した。低用量ピル(経口避妊薬)など、失敗の少ない避妊方法が増えれば予定外の妊娠が減り、経済的、社会的な負担を減らせるという。

 同社と東京大の大須賀穣教授(産婦人科)によると、1年間の出生数や人工中絶数などを基に予定外の妊娠数は年61万件と推計した。その分娩(ぶんべん)や中絶にかかった費用は2520億円で、予定外妊娠する可能性のある女性が使った避妊費用は373億円だった。

 コンドームよりも失敗が少ないとされる、低用量ピルや子宮内避妊器具(IUD)などの使用が10%増えると、避妊費用は109億円増える一方、予定外妊娠数は4万件、分娩・中絶費用も181億円少なくなるとした。最適な使い方の場合に予定外妊娠は7万件減り、分娩・中絶費は280億円削減できるという。

 研究チームは、失敗の少ない避妊方法を多くの人がとった場合でも、IUDなどの普及が進む海外の事例から出生率の低下にはつながらないとみている。大須賀教授は「より失敗率の低い避妊法の選択は、経済的のみならず社会的な負担の軽減につながる」としている。(姫野直行)

論文はこちら
日本における予定外妊娠の医療経済的効果