リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

新生児遺棄疑い20歳母逮捕 愛知・西尾、専門学校生

東京新聞 TOKYO WEBの記事

2020年6月6日 13時06分 (共同通信
 愛知県西尾市の公園で、へその緒が付いた生まれたばかりの男児の遺体が見つかった事件で、県警は6日、死体遺棄の疑いで、同市住崎、母親の専門学校生滝本有生容疑者(20)を逮捕した。県警によると「間違いありません」と容疑を認めている。
 逮捕容疑は2日、西尾市の住崎1号公園のトイレ内で男児を出産し、その後死亡した男児の遺体をポリ袋に入れ、同日正午ごろ、公園の植え込みに遺棄した疑い。
 事件は2日、市職員がポリ袋を発見し「赤ちゃんらしき遺体がある」と110番。駆け付けた西尾署員が、トイレ近くの植え込みで遺体を確認した。男児は衣服を身に着けていなかった。

こんな悲惨な出産に追い込まれた女性は今の世の中のリプロ軽視の被害者でもあります。二度とこのような痛ましい事件が起こらないように、対策を練る必要があると思います。

英米:COVID-19時代の中絶模様

テレメディシンを巡る2国間の違い イギリスOK! アメリカNG!

コロナ禍があったことで、中絶薬の自己投与が合法化されたイギリスから、3人の女性が「ちょっと不安だったけど、やってみたら、何も問題なかった! おかげでエンパワーされた!」という証言が。

一方のアメリカは、テレメディシンを禁止しているFDA(食品・医薬品局……健康に関わる国の機関)のために、「不要な制限」がなされているという声が。

英語ですが、忘備録も兼ねて在り処だけ紹介しておきます。

英:https://www.vice.com/en_uk/article/889nz4/how-to-get-abortion-during-coronavirus-lockdown-uk


米:Telemedicine Abortion Gains Momentum During Pandemic | MedPage Today

千葉県市原市で虐待死「訪問2回、目視できず」

朝日デジタル 2020年6月5日 11時30分

1月のネグレクト致死事件

 生後10カ月の次女に食事を与えず放置したとして母親が保護責任者遺棄容疑で千葉県警に逮捕された事件で、母親や次女が住んでいた市原市は4日、昨年12月以降に2回、保健師らが自宅を訪問したが、次女を目視できていなかった、と発表した。市は、対応は適切だったとしている。

 市はこの日、次女死亡にかかわる経緯を発表。昨年3月に次女が生まれ、翌4月に保健師が自宅を訪問し、体重増加が良好な次女を見たうえで、「母親の健康状態に不安がある」として、継続支援対象とした。

 昨年12月20日、必要な予防接種や健康診断を受けていなかったため、保健師が自宅を訪問。長女や長男の健康は確認できたが、次女は泣き声を確認しただけだった。訪問の主目的は受診を促すためだったが、次女の目視をできなかったため、母親に再訪問の約束をした。

 だが、今年1月21日の訪問予定を母親が当日キャンセル。このため、同23日に市の相談員と保健師が事前の約束なしで訪問した。子どもの足音を聞いたが、玄関口からの声かけや呼び鈴に応じないため、戻ったという。

 目視確認をしなかった理由について、山形昌啓・市子ども福祉課長は「市に強制力がなく、家の中を見る権限がなかった。当時としてやるべきことはやった」と説明した。これまでの対応について「適切な対応をしてきた」と話した。

 県警によると、次女は1月25日、救急隊に心肺停止の状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は不詳だが、低栄養と脱水による衰弱死とみられる。捜査関係者によると、次女はあばら骨が浮き出るほど痩せた状態で、生後10カ月の平均体重を下回る5キロ以下だったという。(高室杏子、福冨旅史)

ニュージーランドでも少女たちにサニタリーグッズの無料支給を開始

世界では貧困女子に無料で供給 ナプキンがなくて学校に行けない女子が出ないように

最近、イギリス、アイルランドケニアなど、あちこちの国々で始まっています。生理用品の無料支給。こうした国々の多くは、避妊や中絶も国の保険などで実質無料なので、生理ナプキンどころか、バカ高い避妊や中絶まで自前の日本とは天と地の状況です。

結局、女性に生まれたことのツケは国/社会が負担するということ。せめてそれくらいできることは国がするので、皆さんは、しっかし学んで、働いて、そして人生のどこかで、できれば産んでくださいね……という発想なのかなぁ?

New Zealand tackles 'period poverty' with free sanitary products for all schoolgirls

母体保護法医指定権限をもつ県医師会の公益法人化(できない)問題

母体保護法指定医問題

http://www.jaog.or.jp/sep2012/know/kisyakon/42_110309.pdf
そういえば、上記の日本産婦人科医会会長寺尾 俊彦氏(当時)の第42回記者懇談会(2011.3.9)資料のスライド17,18で示されていた「公益法人制度改革」による母体保護法指定医を指名できない都道府県が出てくるという問題はどうなったのか?

公益法人制度改革(平成18年6月2日公布、平成20年12月1日施行)

母体保護法第14条
医師の認定に依る人工妊娠中絶可能な医師は
都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師」
と改正された。

公益法人制度改革への対応についての調査(21年10月)
公益法人移行予定: 13医師会
一般社団法人移行予定: 6医師会
検討中: 22医師会

母体保護法施行令 平成24年1月20日
第1条
 都道府県知事は、母体保護法第15条第1項の規定による指定をしたときは厚生労働省令で定める様式による指定証を当該指定を受けた者(被指定者)に交付しなければならない。
2 都道府県知事は、(被指定者から申請があったときは、厚生労働省令で定める様式による標識を交付しなければならない。

母体保護法施行規則 平成27年8月4日
第2章 母性保護
第8条 指定医師の標識の交付
 都道府県の区域を単位として設立された公益法人たる医師会は、法第14条第1項の規定により医師を指定したときは、別紙様式第7号による標識をその医師に交付するものとする。
第9条 指定の申請
第10条 指定証及び標識
第15条 指定の取消
第16条 認定の申請
第17条 認定講習の認定基準

 この標識の交付元が認定機関なんですね。

 実際、島根県医師会福井県医師会はまだ一般社団法人である。こうした都道府県での母体保護法医の指名権は、いったいどうなっているのだろう。

 もし、ただの民間団体でしかない「一般社団法人」が指名権をそのまま引き継いでいるとしたら、母体保護法がそうした団体に業務独占の権限を与えているのは法的に問題があるのではないか。

最新のベトナム中絶情報

More to Demand: Abortion in Vietnam

  • ベトナムは東南アジアでは最もリベラルな中絶政策をもつ。
  • 中絶が合法化されたのは1945年。
  • ベトナム政府は1960年代頃から中絶を基本的に社会公正の問題とみなしてきた。
  • ベトナム憲法リプロダクティブ・ヘルスを含むあらゆる側面及び条件で男女は等しい権利を享受すると宣言している。
  • 国家、社会、家族、及び国民は、母子に医療と保護を提供し、人口及び家族計画プログラムを実行する責務を有する。
  • ベトナム政府は1980年代より小家族を奨励するようになった。
  • 2006年の時点で避妊の普及率は67%、中絶数は年間50万件を超えている。
  • 中絶はMOHネットワークの医療施設で行われる。
  • 中絶サービスは3つの医療施設レベルで分けられ、(1)中央および県立病院では妊娠6週~18週までの中絶が行われているが、(2)妊娠6週~12週までなら地区保健所でも可能で、(3)妊娠6週までであれば地域診療所でも受けられる。
  • 胎児に障害がある場合、レイプの結果妊娠した場合、母親の生命が危険に晒されている場合は、妊娠22まで中絶を受けられる。
  • 中絶を合法的に行えるのは、医師、補助医師、MOH公認の訓練を受けた助産師である。
  • 一般に、中絶費用は第1トリメスタでVND40,000(US$4)から第2トリメスタのVND1,500,000(US$100)と幅が大きい。貧困地帯や遠隔地では無料でサービスが提供されている。また、避妊計画に参加している者が避妊に失敗した場合も無料で中絶を受けられる。
  • 政府は1980年代と1990年代に家族計画のために大量に資金をつぎ込んだが、サービスを使えるのは妊娠可能期にある既婚カップルに限定されている。そのため妊娠可能期にある未婚女性の立場は弱く、政府が補助金を出しているようなプログラムや製品を使えない。
  • ベトナム政府の中絶に関する方針や家族計画プログラムは女性のエンパワーメントを旨としているが、男性たちに自分の責任に気づかせるための方策は未だ不足している。多くの場合、どの避妊方法を用いるのかは男性が決定しているため、女性たちは望まないセックスや安全でないセックスに至り、中絶においやられている。
  • 女性たちは中絶の経験を相当な心配と恐怖で見ている。中絶はできる限り避けるべきものだとされる。避妊の代わりにしてはならないのだ。医療的、経済的、社会的な様々な原因によって、女性たちは中絶に追いやられている。
  • ベトナムでは妊娠6週から12週までの中絶では、MVA(手動吸引器)が使われている。
  • 第2トリメスタの中絶にはKovacs(生理食塩水注入法)が一般的である。
  • ベトナムの中絶数は1995年に130万件でピークを迎え、2003年には50万件まで減少した。出生100に対する中絶比率は38.7である。
  • 中絶がこれほど広く使われている原因の一つは、リプロダクティブ・ヘルスへの認識や関連サービスが不十分なためである。たとえばコンドームが無料で配られていても、使い方は教えられていない。家族計画などに関するカウンセリングも行われていない。中絶後のケアにも関心が向けられておらず、中絶後の避妊も教えられていない。
  • 1980年代の経済的危機以降は資源不足が深刻で、周縁にいる人々に手が届いていない。
  • IpasがMOHや官民と共に開始した包括的女性中心的高品質中絶ケア(CAC)モデルは、女性たちに選択肢を学ばせることで自分にとって最良の選択をできるように女性をエンパワーしている。
  • 昔から使われているがリスクの高いD&CやKovacsに置き換えることを狙って、IpasはMVAやD&Eなどのより安全な中絶の手法を導入している。カウンセリング・サービスや避妊や性感染症の情報提供も重要だ。「以前もカウンセリングを提供していたが不十分だった。より包括的なカウンセリングを導入したい」
  • Ipasのイニシアチブで「スマート・ウィミン・クラブ」という中絶を経験した女性同士で自らの経験を語り合い、互いに感情的なサポートを得る活動も行っている。
  • 中絶サービスの質の向上のために、WHOやIpasの技術協力を得て『全国中絶標準ガイドライン』を策定した。
  • 安全な中絶に関するアドボカシー・ワークショップも政府とIpas等の協力で実施している。

次の段階では:

  • 中間レベルの医療提供者の役割が低く見積もられており、国内の地域差も大きい。中間レベルの医療提供者は質の高い中絶サービスを行うだけの能力も技能も備えているのに、公立病院レベルでの中絶には関われないのは、医師が特権を握っているためである。現在、中間レベルの医療提供者たちは薬による中絶の際のカウンセリングしか行えない。

ベトナムには2つの明らかな目標がある:(1)中絶に頼る比率を引き下げること、(2)より質の高い中絶を提供することである。
More to Demand: Abortion in Vietnam

「科学」と「迷信」のあいだで:ベトナムの若者の中絶に対する道徳観

忘備録

Between “Science” and “Superstition”: Moral Perceptions of Induced Abortion Among Young Adults in Vietnam
Article (PDF Available) in Culture Medicine and Psychiatry 26(3):313-38 · October 2002 with 412 Reads 
DOI: 10.1023/A:1021210405417 · Source: PubMed
Cite this publication
Tine Gammeltoft
29.9University of Copenhagen
Abstract
Despite the increasing use of reproductive technologies the world over, anthropological studies have paid remarkably limited attention to the ethical dilemmas involved in people's choices of such technologies. Against this background, the author analyzes moral perceptions of induced abortion among unmarried young adults in urban North Vietnam. While the ethical aspects of abortion are shrouded in silence in public life in Vietnam, the young people participating in the study expressed strong moral scepticism towards the practice of abortion, even while undergoing it themselves. Through the analysis of young people's experiences and perceptions, the paper demonstrates how moral ideas are tied to particular social situations and structured by larger socio-political circumstances. It is argued that moral notions which are dominant in a society's public sphere may not be representative of the moral sentiments that are lived in practice and felt in private.

https://www.researchgate.net/publication/10927372_Between_Science_and_Superstition_Moral_Perceptions_of_Induced_Abortion_Among_Young_Adults_in_Vietnam

The Ritualisation of Abortion in Contemporary Vietnam
Article · February 2009 with 154 Reads 
DOI: 10.1111/j.1835-9310.2003.tb00226.x
Cite this publication
Tine Gammeltoft
29.9University of Copenhagen

https://www.researchgate.net/publication/229476539_The_Ritualisation_of_Abortion_in_Contemporary_Vietnam

韓国史上最悪の性犯罪 被害女性は289人 検挙は430人 有料会員26万~30万人とも

n番部屋事件:大規模な組織的オンライン性犯罪 とんでもない性暴力 性虐待 幼児ポルノも……

Livedoorのニュースより。
news.livedoor.com

韓国の人口は日本の約半分の5146万、ざくっと半分が男性だと仮定すると2573万、となると有料会員の比率は1%強くらいになる。

でも、さすがにこれは多すぎるようで、ふぇみん2020年6月5日(3255号)によれば「有料会員は、警察の発表で1万5000~2万人(利用者を単純合計して26万人と推定されるが、重複した利用者が多い」そうだ。

文春オンラインもこの事件を取り上げている。
「これはゲームなんだよ」平凡な大学生が韓国史上最悪の性犯罪「n番部屋事件」を起こすまで | 文春オンライン

こういう話は、かえって性的好奇心を刺激することもあるので、わたしのブログではあまり扱わないのだけど、今回のはあまりに酷いので、警告の意味もこめて取り上げることにしました。

日本も、対岸の火事ではなく、類似した問題が生じているのではないかと危惧しています。

ベトナムの中絶情報

abortion in Vietnam

実習生の堕胎疑惑事件を考えてみるために、ベトナムの中絶状況について調べはじめました。

情報源を示します。

フェミニスト・アドボカシー組織のIsisによるベトナムの中絶事情の解説。2020年版で最新情報がまとまっています。
Isis International More to Demand: Abortion in Vietnam

2003年の論文で少々古いのですが、思春期リプロダクティブ・ヘルス(ARH)という概念を用いて、若者の避妊・望まない妊娠・中絶にまつわるベトナムの状況がよく分かる論文です。Adolescent and Youth Reproductive Health in Vietnam: Status, Issues and Programs

ベトナムの家族計画協会のサイトもありました。
Viet Nam, Commitment Maker since 2016

Guttmacher Instituteは、中絶情報&統計の宝庫です。目についたものをご紹介。

2014年 In Vietnam, Telephone Follow-up for Medication Abortion Is Feasible | Guttmacher Institute


2012年 
Use of Medicines Changing the Face of Abortion | Guttmacher Institute


2011年 Medication Abortions May Be Equally Safe Whether Done at Home or Clinic | Guttmacher Institute


2010年 The Role of Abortion in the Last Stage of Fertility Decline in Vietnam | Guttmacher Institute


1999年 Safety, Efficacy and Acceptability of Mifepristone-Misoprostol Medical Abortion in Vietnam | Guttmacher Institute

ベトナムの中絶事情の変遷が少し見えてきました。