リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

1948年に成立した優生保護法が目的としていたもの

法案提出者の説明

優生保護法案提案者の谷口弥三郎は第2回国会 参議院 厚生委員会(第13号 昭和23年6月19日)で次のように述べています。

我が國は敗戰によりその領土の四割強を失いました結果、甚だしく狭められたる國土の上に八千万からの國民が生活しておるため、食糧不足が今後も当分持続するのは当然であります。総司令部のアツカーマン氏は「日本の天然資源は必ずしも貧弱ではないが、未だ十分開発利用されていない。併し山岳溪谷に富んでいるから、灌漑と発電の惠沢大きく、漁場にも惠まれているので、科学を発達利用すれば、八千万人口までは自給自足し得るも、それ以上は困難である」と言つております。現在我が國の人口は昨年十月一日調査では七千八百十四万人余、本年の人口自然増加は百二十万人、本年度の引揚者総數は七十万人となつておりますので、その総計は八千四万人となり、すでに飽和状態となつております。
 然らば如何なる方法を以て政治的に対処するか。第一に考え得ることは移民の懇請でありますが、毎年百万人以上の移民を望むことは到底不可能と思われますので、その幾分かずつでもよろしいから大いに努力して懇請すべきであります。第二の対策は、食糧の増加を図るため未開墾地を開拓し、尚水産漁業の発達を促し、増産方面に全力を盡すべきであります。第三の対策として考えらるることは産兒制限問題であります。併しこれは余程注意せんと、子供の将來を考えるような比較的優秀な階級の人々が普通産兒制限を行い、無白覺者や低脳者などはこれを行わんために、國民素質の低下即ち民族の逆淘汰が現われて來る虞れがあります。現に我が國においてはすでに逆淘汰の傾向が現われ始めておるのであります。例えば精神病患者は昭和六年約六万人、人口一万に対し九・九八、昭和十二年約九万人、人口一万に対し一二・七七、失明者も同樣で、昭和六年七千六百人、うち先天性が二千二百六十人、昭和十年は六千八百人で、うち先天性が四千二百三人という状態に増加し、又浮浪兒にしても從前はその半數が精神薄弱即ち低脳であるといわれていたのが、先月九州各地の厚生施設を巡視した際、福岡の百道松風園及び佐賀の浮浪兒收容所における調査成績を見ますると、低脳兒はおのおの八〇%に増加しております。この現象は直ちに以て日本食糧の状況を示すものであると思います。從つてかかる先天性の遺傳病者の出生を抑制することが、國民の急速なる増加を防ぐ上からも、亦民族の逆淘汰を防止する点からいつても、極めて必要であると思いますので、ここに優生保護法案を提出した次第であります。
 次に本法案の大綱について御説明いたします。この法案は、第一章総則、第二章優生手術、第三章母性保護、第四章優生保護委員会、第五章優生結婚相談所、第六章届出、禁止等、第七章罰則、それに附則を合せまして全体で三十七ケ條から成つています。
 第一章の総則におきましては、この法案の目的と定義とを示しました。即ち第一條において、この法案が優生学的見地に立つて将來における國民素質の向上を図ると同時に、現在における母性の生命健康の保護をも併せ図ることを目的とする旨を規定いたしました。第二條においては、この法案中に使われている優生手術と人口妊娠中絶との意義を明らかにしてあります。優生手術にはいわゆる去勢を含まないこと、人工妊娠中絶は、胎兒が母体外で生きておらない時期即ち大体六ケ月以内において行われる処置であることを主として規定をいたしました。
 第二章優生手術の章におきましては、第三條に同意を前提とした任意の優生手術を規定し、第四條から第十一條に亘つて社会公共の立場から強制的に行い得る優生手術を規定いたしました。現行制度では、優生手術を受けるには、本人、その代理者又は公益の代表者からの申請と主務官願の可否の決定とがなければ行い得ないことになつているのでありますが、第三條に列記したものについては、かような手続を要せず、本人と配偶者の同意があれば医師が任意に優生手術を行い得る途を開きました。併し任意の優生手術は本人が事の是非を十分に判断した上で同意するということが、その本質的要素でありますから、未成年者、精神病者、精神薄弱者のように自分だけで意思決定ができない者については、これを認めないこととして、この制度が相続權侵害のために悪用されることのないようにいたしました。第四條以下のいわゆる強制断種の制度は社会生活をする上に甚だしく不適應なもの、或いは生きて行くことが第三者から見ても誠に悲慘であると認めらるものに対しては、優生保護委員会の審査決定によつて、本人の同意がなくても優生手術を行おうとするものであります。これは悪質の強度な遺傳因子を國民素質の上に殘さないようにするためには是非必要であると考えます。ただこの場合には社会公共の立場からとはいえ、本人の意思を無視するものでありますから、対象となる病名を法律の別表において明らかにすると共に、優生保護委員会の決定についての再審査の途を開く外、更に裁判所の判決を求めるようにいたしました。強制断種の手術は專ら公益のために行われるものでありますから、その費用を國庫において負担することとし、その旨を第十一條に規定いたしました。
 第三章母性保護の章は人工妊娠中絶に關する規定であつて、妊娠中絶は医学上の立場から母体の生命を救うため必要であると思わるる場合にのみ合法制を認められ、一般的には刑法上堕胎の罪として禁止されておるのでありますが、この法案で母性保護の見地から必要な限度においては更に廣く合法的に妊娠中絶を認めようとするものであります。即ち客観的にも妥当性が明らかな場合には本人及び配偶者の同意だけで行い得ることとし、その他の場合には同意の外に地区優生保護委員会の判定を必要としました。
 第四章は優生保護委員会に關する規定であり、この委員会は自己の責任において審査決定をなし得る処理機關であつて、中央、都道府縣及び地区の三種と相成つております。
 第五章は優生結婚相談所、第六章は優生手術又は人工妊婦中絶を行なつた場合の医師又は指定医師の届出、秘密保持等に關する規定、第七章は罰則の規定であります。以上が大体の内容の説明であります。」

以上、太字にしたところを見ていただくと、まず「急激な人口増加の対策の一つとしての産児制限」を構想し、しかもただ産児制限をしたのでは逆淘汰が起きてしまうとして、「國民の急速なる増加を防ぐ上からも、亦民族の逆淘汰を防止する」という優生政策を打ち出しています。その結果、第一章では、「優生学的見地に立つて将來における國民素質の向上を図ると同時に、現在における母性の生命健康の保護をも併せ図る」ことを目的に掲げています。

若干的な倫理的反論もあったのですが、基本的にこの考え方が踏襲されていったと考えられます。強制不妊手術等の旧優生保護法問題の端もここに発しています。


中絶に関連して言えば、優生政策をひっこめた時にその対案を盛り込まなかったため、「将来的な展望」のない法律になってしまい、ただただ「現状維持」する体制が作られてしまうことになったと考えられます。

France and China Allow Sale Of a Drug for Early Abortion

By Gina Kolata, Special To the New York Times, Sept. 24, 1988

Credit...The New York Times Archivesより
全文はこちら

以下、記事の冒頭を仮訳します。

France and China this week approved marketing of a new drug that induces abortion early in pregnancy, and two family planning experts said they believed an American company would soon apply for permission to market the drug in the United States.

But even if the American company seeks permission to sell it here, it could be years before the drug receives Government approval.

The drug, RU 486, was approved in in France yesterday and in China on Sunday. Family planning experts said evidence indicated that when used in the first trimester the drug was safer than surgical abortion, as well as less expensive. The experts predicted that the drug would replace up to half the surgical abortions in France.

(仮訳:フランスと中国が今週、妊娠初期の中絶を誘発する新薬の販売を承認したことを受けて、2人の家族計画専門家は、アメリカの会社が近いうちにアメリカでの販売許可を申請するだろうと述べた。

しかし、米国企業が米国での販売許可を申請したとしても、この薬が政府の承認を得るまでには何年もかかる可能性がある。

RU 486は、昨日フランスで、日曜日には中国で承認された。家族計画の専門家によれば、妊娠初期に使用する場合、この薬は外科的中絶よりも安全であり、コストも低いという証拠があるという。専門家は、この薬がフランスにおける外科的中絶の半分までを代替するだろうと予測している。)


不買運動に関するところを仮訳してみます。

Richard Glasow, education director of National Right to Life in Washington, said the group is encouraging anti-abortion groups in France to protest the marketing of RU 486, known as Mifegyne in France. The group has also written to the French Ambassador to the United States threatening a worldwide boycott of all products of Roussel-Uclaf and its parent company, Hoescht Pharmaceuticals of Germany.

''If such a massive boycott by right-to-life organizations, church groups with strong pro-life positions, and pro-life hospitals were to be initiated, any profits from the drug would be swallowed up many times over by the loss of business,'' the group said in its letter.

Dr. Glasow explained that National Right to Life considers RU 486 to be a ''death drug'' because it induces abortions. The group opposes all pregnancy terminations.

(仮訳:ワシントンにある『ナショナル・ライト・トゥ・ライフ』の教育担当ディレクター、リチャード・グラソー氏によると、同団体はフランスの反妊娠中絶団体にRU486(フランスではミフェジンと呼ばれている)の販売に抗議するよう働きかけているという。また、駐米フランス大使に手紙を出し、ルーセル・ウクラフ社とその親会社であるドイツのヘーシュト・ファーマシューティカル社の全製品を世界的にボイコットすると脅している。

右翼団体、強い支持を持つ教会団体、支持を持つ病院などによるこのような大規模なボイコットが開始されれば、この薬から得られる利益はビジネスの損失によって何倍にも飲み込まれてしまうだろう」と同団体は書簡の中で述べている。

グラスー博士は、『全米生命』がRU486を、中絶を誘発する「死の薬」と考えていることを説明した。同団体はすべての妊娠中絶に反対している。)

出産一時金のしくみ

中期中絶にも出るお金~自分で手続きすると「多額の費用がかかる」と言われるが……?

実態はどうなんでしょう?

世田谷区の例で見ていきます。面倒そうですが、「多額の費用がかかる」というのは当てはまらないような気がします。いったん全額負担することを「多額の費用」と言っているのでしょうか。補てんされるには1カ月ほどかかるようですから。

申請方法
出産後、医療機関等への支払いを済ませてから申請してください。申請書類受理後、約1か月後に世帯主の銀行口座に振込みます。


申請に必要な書類
1. 出産育児一時金支給申請書(※郵送で申請する場合はお問い合わせください。)
2. 医療機関等と取り交わした直接支払制度を利用しない旨の合意文書の写し
3. 医療機関等より発行された出産費用の領収・明細書の写し(直接支払制度を利用していない旨の記載があるもの)
4. 出産した方の保険証
5. 世帯主と出産した方のマイナンバーカード(個人番号カード)または通知カード
6. 世帯主の口座番号等がわかるもの
7. 本人確認資料

本人確認資料とは、運転免許証、パスポート(日本国発行のもの)、マイナンバーカードなど官公署発行の写真入り証明書です。詳しくは、国保・年金課 保険給付係へお問い合わせください。

なお、死産・流産の場合は上記に加え下記の書類が必要です。

8. 上記1、2と妊娠85日以上の分娩であることがわかる書類の写し
9. 医師等の証明書、死産届、死胎火葬許可証、母子手帳(いずれか1点の写し)
(注意)妊娠85日(妊娠4か月、12週+1日)以上の分娩(死産・流産・人工妊娠中絶を含む)であることが支給条件となります。

入間市の説明で、40万4000円という数値の意味が分かりました。つまり、妊娠22週未満しか許されていない中期中絶は必然的に40万4000円になるんですね。(他の機関は別の扱いかもしれませんが。)以下参照。

支給金額
産科医療補償制度(注1)対象の有無 支給額
対象の場合 42万円
対象外の場合 40万8千円(注2)
注1)(財)日本医療機能評価機構が運営する産科医療補償制度に加入する病院、診療所または助産所(以下「医療機関等」という。)の医学的管理下における在胎週数22週以降に達した日以後の出産の場合、対象となります。

注2)健康保険法施行令の一部改正に伴い、令和4年1月1日以降の出産に係る支給額が改定されました。(40万4千円→40万8千円)

平成17年(2005年)の段階で出産育児一時金は30万円であったことが国会答弁で明らかになっています。
第162回国会 参議院 決算委員会 第7号 平成17年4月11日 なお、西島英利氏は自民党議員

西島英利君 是非、縦割りではなく、やはり全体的に見てこの予防というものを考えていかないと実は上がらないのではないかなというふうに思いますので、是非その点をお願いを申し上げたいと思います。
 もう一点だけ質問さしていただきたいんですが、実は出産育児一時金の問題でございます。
 これは、出産をされる方には法定的には三十万円が支給をされるということになっておりまして、正常分娩についてはこれは保険で見れないわけでございますから、この出産一時手当金という形で支給をされるようになっているところでございます。
 しかし、昨今の新聞情報によりますと、実はこれが必ずしも三十万円でなくて、例えば健康保険組合でいえば、大企業であれば、これには付加という形で三十万円以上のお金がここで給付をされている。ましてや、先日のある新聞に書かれたところによりますと、公務員の共済保険であると正にもっと大きな金額が実はそこで支給をされているということが書かれていたところでございます。さらには、この分娩に要する費用というのはとてもこの三十万円では賄えないと言われておりまして、なかなかこの少子化の中で分娩をするというのも経済的にかなり苦しい部分もあるのではないかというふうに思っています。
 もう一つ、これ実は私も専門じゃないんで驚いたんですが、ある産婦人科の先生から得た情報でございますけれども、流産、早産や死産の場合、妊娠持続期間が妊娠八十五日、つまり妊娠四か月たっていれば、流産、早産、生産、死産の区別なくこれは支給されると。ところが異常分娩になりますと、流産も含めてでございますけれども、これは保険で適用されるわけでございますですね。そういう意味では、大きな不公平というのがここに起きているのではないかというふうに思います。
 この少子化対策という点から考えても、やはり私は、この三十万円を支給するのであれば、私は保険診療としてやっぱり正常分娩であっても私はこの保険の中で見ていくべきではないかというふうに思うんでございますけれども、この点についてお考えをお示しいただければと思います。


産科医療保障制度について
第186回国会 参議院 厚生労働委員会 第2号 平成26年3月13日(2014)
この議員の父は日本医師会の会長を務めた武見太郎。

武見敬三君 与党質問ではありますが、やはり緊張感のあるしっかりとした議論をさせていただければというふうに思います。
 まず最初に、順番を変えて、最初に産科医療補償制度についての運営の仕方、これをまず大臣にお聞きしたいと思います。
 この制度は、そもそも、福島県の大野病院というところで産科の医師が実は逮捕されるという事件が起きて、結果としてこの産科医は全く無罪ということで、その逮捕されたこと自体が誤りだったということが明確になりました。そしてこの間、私どもの間で、やはりこうした産科医と、そして妊婦あるいは患者との間の信頼関係というものをきちんと確保していくための仕組みをつくらなければいけないと、こういう観点から、中立的な立場で管理運営するこうした産科医療補償制度というものをやはり創設し、そして、脳性麻痺児が実際にお生まれになったときの補償をそこを通じて行い、それによってこうした訴訟というところにまで発展しないようにこれを抑制する仕組みをつくろうということでこの産科医療補償制度というものが発足したというのがその経緯で、実は私自身もこの制度発足に深く関わりました。
 そして、それを五年後見直しということで今日見直すときに、出産育児一時金から三万円、これを実際に保険料として払っていただくという形で当初整えたものが、やはりまだ実際のそうした補償する額というものが定まっていなかったということが実際にはなかなかあるものですから、結果としてそれによってかなりの余剰金ができるんじゃないかというようなこともあって、改めて、じゃ、どのような形で補償の対象を考えるか、この補償の対象を広げようということで、議論がこの五年後見直しの中で始まりました。
 これに、病院評価機構という中立的な立場のところに運営委員会というのがあって、その運営委員会というところでは実際に三十一週、千四百グラムというような結論をお出しになった。しかし、更にこれに加えて、関連する産婦人科学会を含めた、現場を理解し、かつ学問的な基盤のあるところの四つの学会、医会が代表者名でこうしたことを裏付ける申入れもされたと。こういうようなことがあって、実際に結果どうなったかというと、それは、今度は厚生労働省社会保障審議会医療保険部会というところが厚生省の中では実際に審議し、事実上その決定を行うという役割を担う形になって、結果としては、この三十二週、そして千四百グラムという形で落ち着いたという経緯があります。

いつから直接支払制度になったかについては、国民民主党足立信也議員が証言している。
第203回国会 参議院 厚生労働委員会 閉会後第1号 令和2年12月10日

医療機関というのはやっぱり別なんですよ。キャッシュフローがないんですよ。だから、執行は速さというのが大事で、これも一つ例を挙げますけれども、出産育児一時金を、今まで産婦さんが払っていたのを後で償還されましたね。それを保険者の方から直接医療機関へ、あるいは出産施設へ払うように変えましたね。あれ、二〇一〇年の四月から本格施行ですよ。このときに何が問題になったか。保険者から直接払われるようになると二か月掛かると、二か月もたないと言われたわけですよ。一か月だったら何とかなるということで、私、政務官でしたけど、一か月で払えるように変えたんですよ。だからできたんです。それだけキャッシュフローがないんですよ。だから、ここの医療機関介護施設のところはもう直接早くやらないとという話になるわけですね。

良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律

第204回国会 参議院 厚生労働委員会 第17号 令和3年5月20日

この日、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が可決され、以下の附帯決議も付けられた。

自見はなこ君 私は、ただいま可決されました良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党日本維新の会及び国民民主党・新緑風会の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 一、医療機関に勤務する医師に対する時間外労働の上限規制の適用に当たっては、大学病院等が地域の医療機関から医師を引き揚げることなどにより、地域の医療提供体制に影響を及ぼすことがないよう、特定労務管理対象機関の指定制度の趣旨を周知徹底するとともに、地域の医療提供体制の確保のために必要な支援を行うこと。
 二、医療機関勤務環境評価センターの指定に当たっては、当該指定を受けようとする一般社団法人又は一般財団法人が、労働時間短縮計画案の策定に当たって、現場の医師等の意見聴取が適切に行われたかどうかを確認し、医療機関における医師の長時間労働の実態及び労働時間短縮の取組状況を客観的に分析・評価する体制が整備されているとともに、労務に関する知見等に基づき評価可能な体制を有している法人を指定すること。また、同センターと都道府県の医療勤務環境改善支援センターとの役割分担を明確にし、両センターが連携して機能を果たせるよう取組を進めること。
 三、労働時間短縮計画の案については、対象となる医師の時間外労働の上限規制及び当該労働時間短縮計画の案の内容について十分な説明が行われ、対象となる医師からの意見聴取等により、十分な納得を得た上で作成されるべきであることを指針で明確にし、その周知徹底を図ること。
 四、地域医療確保暫定特例水準の指定を受けた医療機関において労使が締結する三六協定で定める時間外・休日労働時間数については、当該医療機関における地域医療確保暫定特例水準の対象業務に必要とされる時間数であることを合理的に説明できる必要があるとともに、当該医療機関の労働時間短縮の取組の実績に応じて協定時間数を見直すべきことを指針において明確にすること。
 五、令和十七年度末を目標とする地域医療確保暫定特例水準の解消に向けた時間外・休日労働時間の短縮を着実かつ計画的に進めるため、関係自治体及び医療機関に必要かつ十分な支援を行うとともに、定期的に各医療機関における医師の労働時間の短縮の実態調査を行い、課題を明らかにした上で、当該水準における時間外労働の上限の段階的見直しを検討すること。また、集中的技能向上水準については、医師の労働時間の短縮の実態を踏まえつつ、その将来的な縮減に向けた検討に着手すること。
 六、長時間労働となる医師に対する面接指導の実施においては、医療機関の管理者及び面接指導対象医師が、第三条による改正後の医療法附則第百八条が求める義務に誠実に従うよう都道府県による指導の徹底を確保すること。加えて、労働時間の記録・申告が適切かつ確実に行われるよう、必要かつ十分な支援を提供すること。また、面接指導実施医師が「措置不要・通常勤務」以外の判定・報告を行った場合には、医療機関の管理者はその判定・報告を最大限尊重し、面接指導対象医師の健康確保のため適切な対応を行うべきであることを指針等で明確にし、都道府県による指導の徹底を確保すること。
 七、医療機関の管理者が良質な医療を提供する観点から必要と認めるときは、当該医療機関に勤務する医師のうち、時間外・休日労働の上限が九百六十時間以下の水準が適用されるものについての労働時間短縮計画も自主的に作成し、同計画に基づいて取組を進めることが望ましい旨を指針において明確にし、その周知徹底を図るとともに、更なる労働時間の短縮に向け継続的に支援を行うこと。
 八、医師の夜間勤務、特に、第二次救急医療機関や急性期病院における夜間勤務については、通常の勤務時間と同態様の業務を行う場合には時間外労働として扱うなど、労働時間の適切な管理が必要な旨を周知徹底するとともに、交代制勤務を導入する等により、夜間勤務の負担軽減を図る医療機関に対し、必要な支援を行うこと。
 九、医師の労働時間短縮を着実に進めるために、現行制度下におけるタスクシフトやタスクシェアの普及を推進するとともに、全ての医療専門職それぞれが、自らの能力を活かし、より能動的に対応できるよう、更なるタスクシフトやタスクシェアについて、諸外国の例を研究しつつ必要な検討を行うこと。その際、各医療専門職の労働時間への影響に十分留意すること。
 十、医師の労働時間短縮に向けた医療機関内のマネジメント改革を進めるため、医療機関の管理者、中間管理職の医師等に対し、労働法制に関する研修・教育を推進すること。また、医療機関において管理職の地位にある勤務医が、労働基準法上の管理監督者には該当しないにもかかわらず、労働時間規制が適用除外されるものと取り扱われることがないよう周知・啓発を行うこと。
 十一、医療機関における医師の時間外労働・休日労働に対する割増賃金の支払状況や、健康確保措置の実施状況などの実態を踏まえ、医療機関が労働法制を遵守しつつ、医師、看護師等の医療従事者を確保できるよう、診療報酬における対応も含め、医療機関への財政支援措置を講ずること。
 十二、診療以外の研究、教育においても重要な役割を担う大学病院において労働時間短縮の取組を着実に進めるため、大学病院における医師の働き方の諸課題について文部科学省厚生労働省が連携して速やかに検討を開始するとともに、その検討結果に基づいて財政上の措置を含めた必要な支援を行うこと。
 十三、在宅医療や看取りなど地域包括ケアを進める上で重要な役割を担う診療所の医師の働き方改革についても検討を加え、その結果に基づいて必要な支援を行うこと。
 十四、医学部教育と臨床研修を切れ目なくつなぐ観点から、医学部における共用試験の公的化を踏まえ、診療参加型臨床実習に即した技能習得状況を確認するための試験の公的化を含め、医師国家試験の在り方を速やかに検討すること。
 十五、医療機関における育児休業制度の規定状況、利用状況等について調査を実施し、臨床研修以降の研さん期間中の医師が育児休業を取得しやすくなるような方策の検討を含め、出産・育児期の女性医師を始めとする子育て世代の医療従事者が、仕事と出産・子育てを両立できる働きやすい環境を整備するとともに、就業の継続や復職に向けた支援策等の充実を図ること。
 十六、外来機能の明確化・連携に当たっては、診療科ごとの外来医療の分析、紹介・逆紹介の状況の分析等をできる限り行うとともに、紹介を基本とする医療機関からの逆紹介の促進を図ること。また、かかりつけ医機能を発揮している事例等を調査・研究し、その好事例の横展開を図るとともに、国民・患者がかかりつけ医機能を担う医療機関等を探しやすくするための医療情報の提供内容等の在り方について検討すること。
 十七、地域医療構想については、各地域において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生じた医療提供体制に係る課題を十分に踏まえ、地域包括ケアの観点も含めた地域における病床の機能の分化及び連携の推進の在り方について検討し、その結果を踏まえつつ、必要な取組を進めること。また、検討に当たっては、地域の様々な設置主体の医療機関の参画を促すこと。
 十八、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生じた医療提供体制に係る課題を十分に踏まえ、地域の医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携、医師の地域間及び診療科間の偏在の是正等に係る調整の在り方その他地域における良質かつ適切な医療を提供する体制の確保に関し必要な事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
 十九、都道府県における適切な医療提供体制の確保を図る観点から、第八次医療計画における五疾病・六事業については、ロジックモデル等のツールを活用した実効性ある施策の策定など、医療提供体制の政策立案から評価、見直しに至るPDCAサイクルの実効性の確保に努めること。
 二十、新型コロナウイルス感染症患者の受入れ等に伴い医療機関が厳しい経営状況に置かれていることに鑑み、医療機関の経営状況について速やかに把握し、その状況等を踏まえ、医療機関に対し財政上の支援等必要な措置を講ずること。また、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延した場合等において医療提供体制の確保を図るため、医療機関及び医療関係者に対する支援その他の必要な措置の在り方を検討すること。
 二十一、将来に向けて、質の高い地域医療提供体制を守るため、医師の働き方改革や医師の偏在対策、地域医療構想、外来医療の機能の明確化・連携などを丁寧かつ着実に進めることが重要であり、それらを医療機関に寄り添って進める都道府県の業務体制の強化を推進すること。

アメリカ産科婦人科医会(ACOG)の中絶ポリシー

1993年に策定され2020年までに改定・再確認が繰り返されてきました

Abortion Policy | ACOG

一部仮訳します

医学の知識や患者のケアは固定されたものではありません。医療行為の革新は、医学の進歩と健康の改善に不可欠です。医学研究は、エビデンスに基づく医療の基礎であり、新しい研究は医療の改善につながります。ACOGは、医療の進歩を妨げるような法律や規制に反対します。例えば、医療従事者がエビデンスに基づいた現行のプロトコルに従って薬による中絶を行うことを禁止する法律は、科学の進歩を無視し、医療従事者が患者に最善の治療を提供することを妨げます。

……中略……

中絶を行う場合は、安全に、できるだけ早い時期に行うべきです。ACOGは、経済状況に関わらず、すべての人が治療を受けられることを支持し、すべての生殖に関する選択肢を利用できることを支持する。ACOGは、医療へのアクセスを制限したり遅らせたりする不必要な規制に反対します。

 

中国の中絶薬事情

在米中国大使館の資料

これは信憑性がありそうです!

Family Planning in China: RU-486, Abortion and Population

RU-486 Manufacturers in China

ある中絶薬(ミフェプリストン)製造会社の歴史(概要)の中に、次の一文が見られます。

In 1991, the company began producing the family planning pharmaceutical RU-486.
1991年に、同社は家族計画薬RU-486の製造を開始した。

「家族計画薬」という表現が目を引きます。やはり「一人っ子政策の一環」として取り入れたという意識が強いのでしょう。


Wikipediaの"Mifepristone"に、Roucel-Uclaf社が中国に販売しなかった話が出てきます。それによると、中国は1985年から治験を開始、1988年に承認したが、Roucel-Uclaf社から販売を断られたので1992年に自前で開発製造したとのこと。

私の好きなEvin厚生大臣のコメントも出てきます。仮訳します。

フランスのクロード・エヴァ厚生大臣はこう説明しています。「中絶の議論で、医療の進歩を象徴する製品を女性から奪うことはできなかった。政府が薬の認可をした瞬間から、RU-486は単なる製薬会社の財産ではなく、女性の道徳的財産となったのです」[52]。

この[52]の資料はこちら

中絶法規の見直しが進む台湾

2021年11月の英文記事2本+中国語記事1本

配偶者同意要件も見直しの内容のひとつです。

newbloommag.net

仮訳してみます。

中絶法改正案は保守派に抵抗される可能性が高い
ブライアン・ヒオエ11/07/2021


 台湾では、厚生省が遺伝保健法の改正を計画していることから、今後、堕胎権に関する法廷闘争が繰り広げられる可能性がある。1月に専門家との協議を経て、文章が公表される予定だ。

 すなわち、台湾では現在、人工妊娠中絶を行うには配偶者の同意が必要だが、厚生省による法改正の計画は、これを不要にするものである。この法律に関してもう一つ争点になりそうなのは、未成年の女性が中絶を希望するかどうかの選択に関する同意である。新しい要件では、未成年の未婚女性が中絶を受ける前に法的代理人に相談することが規定される予定だ。また、「遺伝健康法」という名称が誤解を招く恐れがあるため、「不妊健康法」に名称を変更する予定である。

 台湾は、特に2年後に同性婚の合法化への道を開いた2017年の大法官会議の決定以降、性的自由についてアジアで先進的なランドマークを設定したと評価されている。とはいえ、性的な自由が懸念されるところでは、多くの制限的な法律が残されたままである。

 例えば、トランスジェンダーの女性が法的な性別を変更したい場合、外科手術で陰茎と睾丸を摘出しなければならず、トランスジェンダーの男性が外科手術で胸と子宮と卵巣を摘出しなければならないという長年の規則を裁判所が破棄したのは、9月になってからのことだった。このように、これらの規則は、トランスジェンダーの人々が法的な性別を変更するために不妊手術を受けることを要求していた。

 同様に、姦通を犯罪とする法律も、憲法裁判所の判決を受け、昨年になってようやく破棄された。台湾の姦通罪はアジアで最後の法律の一つであり、姦通事件の証拠を提供するために、日常的にストーキング、脅迫、恐喝を行う私立探偵の正に家内工業が出現したのであった。しかし、現在でも不倫を理由に民事訴訟を起こすことは可能である。

 同性婚が合法化されたとはいえ、台湾人が外国人と結婚するには、同性婚を合法化している国の人でなければならないという指摘がある。同性婚が合法化されていない国の外国人同士も、台湾で結婚することはできない。さらに、同性カップルが共同で養子を迎えるには、その子供がカップルのどちらかの実子であることが必要である。

 台湾で姦通罪の法律が長く続いたのは、女性の身体に対する自律の権利を国家が侵害していることを意味している。姦通罪の成立を否定した判決を歓迎したように、厚生労働省が中絶に関する法律を改正する計画を女性団体が歓迎するのは当然かもしれない。

 政府が未成年の妊婦に中絶前に相談させる心理学者や法律の専門家について、懸念の声も上がっている。実際、最近台湾では、あるインフルエンサーがフォロワーに誤ってリトアニアの「危機的中絶クリニック」への寄付を指示し、女性の中絶を阻止しようとする騒動が起きた。

 そして、この問題をめぐっては、保守的な団体がけじめをつけようとすることが予想されます。家族主流化連盟や台湾中華圏司教協議会などの団体は、「遺伝健康法」の変更に反対する姿勢を示している。キリスト教を中心とする保守的な宗教団体が同性婚に反対するために一致団結したように、中絶に関する現行の要件を改正する法律にも抵抗することが予想されるのである。

 このような宗教団体は、家族の神聖さが蔡英文政権によって攻撃されていると見ているのが一般的だろう。同性婚の合法化は家族の法的定義を根本的に変えるものであり、姦通罪の非犯罪化は台湾社会の性風俗を緩めるものであると考えるからであろう。

 12月の国民投票にかけるには遅すぎるが、今後、汎青陣営や汎緑陣営の保守派がこの問題を取り上げるかどうかが見ものである。蔡英文政権の末期だけでなく、将来の総統府の争点になる可能性もある。


www.taiwannews.com.tw

こちらも仮訳してみる。

台湾の修正案は既婚女性に中絶の決定に関する自主権を与える
支持者は女性の権利の前進を賞賛し、反対者は家庭内トラブルの発生を心配する


台湾ニュース、スタッフライター、ステファニー・チアン著
2021/11/04 13:02


 台北(台湾通信)-厚生労働省の健康増進局(HPA)が優生保護法を改正し、既婚女性が配偶者の承認なしに中絶できるようにすることを検討し、世論が沸き起こっている。

 UDN(総合通信網)によると、障害者に対する差別を避けるため、この法律を「生育保健法」と改名する以外に、HPAは各分野の専門家を呼び、既婚女性が中絶する前に配偶者の承認を得るという要件を廃止し、妊娠中の未成年の少女が中絶するかどうかについて発言できるようにするという二つの大きな変更について議論しているとのこと。

 さらに、改正案では、親が重度の遺伝性疾患、伝染性疾患、精神疾患を患っている場合や、どちらか一方の大家族が遺伝性疾患を患っている場合の例外を廃止するとしている。台湾産科婦人科学会会長の黄明照(黃閔照)は、将来的には医学的な考慮によって決定されることになるだろうと述べている。



 改正案ができるのは早くても1月だが、既婚女性が単独で中絶できるようになれば、台湾の伝統的な結婚観に深く影響するため、HPAはすでに激しい議論を期待している。しかし、UDNは、HPAの呉兆淳(吳昭軍)局長の言葉を引用し、この改正案は男女平等と女性の権利を尊重する国際的な流れに沿ったものであると述べている。

 また、呉氏は、未成年の少女は決定権を持つべきであり、法的保護者を含む他者はそのような決定を尊重すべきであると述べている。この問題で意見が対立した場合、仲介し、さらなる検討を促す方法があるはずだという。

 台湾産科婦人科学会は、毎年20人以上の女性が妊娠に関連する合併症で死亡したり、苦しんだりしていることから、この取り組みに賛同している。UDNはHuangの言葉を引用し、女性が自分の健康状態に応じて中絶について自律的に判断できないことは、女性や胎児にとって必ずしも良いことではないと述べている。

 女性の権利団体は、特に既婚女性の中絶の権利に関して、この修正案への強い支持を表明しています。台湾女性リンクの黄淑英会長はUDNに対し、家庭内暴力や婚外恋愛などの家族の悲劇につながるため、そもそも中絶の最終決定は夫が関与すべきではないと述べた。

 一方、出生改革連盟の陳美儀事務局長は、未成年の中絶に関しては、関係者は適切な人道的、ジェンダー的意識を持ち、様々な産婦人科の資源に精通した専門の心理学者に依頼しなければならないと述べた。

 しかし、家族主流化連盟の曾賢英委員長は、この改正案を「個人主義」とし、偶然の妊娠、家族のストレス、疲労など、中絶する理由はさまざまであるとUDNは報じている。

 政府は、女性に中絶を独自に決定する権利を「無責任に」与えるのではなく、家族が子育てに伴う課題を解決するのを支援すべきであるとした。彼は、改正案が夫婦間の調和とコミュニケーションを乱し、政府が様々な改正を通じて「混乱」と社会問題を作り出していると非難した。

 台湾中国地域司教協議会事務局長の陳圭(陳科)は、中絶はカトリック教の信仰に反するとし、胎児はまだ完全に形成されていないものの、人間の尊厳と自律性を持っていると述べた。この改正により、男性は妊娠の責任を負わなくなり、女性をも軽んじることになると、UDNは陳氏の言葉を引用している。

 また、中絶した女性の身体的、精神的なリスクは誰が負うのか、との質問もあった。

 台湾では現在、結婚している女性が中絶する場合、配偶者の同意など一定の条件を満たすことが認められている。しかし、両親のどちらかが重い遺伝性疾患、伝染性疾患、精神疾患を患っている場合、あるいはどちらかの大家族が遺伝性疾患を患っている場合、結婚している妊婦は一人で決断することができる。


妻子想墮胎無須丈夫同意 優生保健修法強調女性自主權 | 生活新聞 | 生活 | 聯合新聞網

冒頭の1段落だけ仮訳してみました。

12年ぶりに改正された優生医療法は、大きな変化を遂げる。 先週、厚生省の国民健康保険が各界の有識者や学者を招いて改正案を議論し、合意が成立した。 優生保護法の名称を生殖医療法に改正し、既婚女性の中絶に配偶者の同意が必要なことを廃止し、未成年の女子の中絶を行うかどうかについて法定代理人の意見と対立する場合は協議することを要件とすることが柱である。 改正案は、早ければ来年1月に告示される見込みである。

中絶薬とは~基本編

リプロダクティブ・ヘルス&ライツを学ぶ

①中絶薬とは

 内科的中絶(外科手術を必要としない中絶)で使う主に内服薬(座薬として使うこともある)のこと。
 ミフェプリストンとミソプロストールを組み合わせて順次服用するコンビ薬が昨年末日本で申請された。
 ミソプロストールは単独でも中絶薬の役目を果たし、複数回くり返して服用する。



②ミソプロストール単体でも中絶薬


 ミソプロストール単独法は成功率が若干下がるけど、費用がとても安くすむため、途上国ではよく使われる。
 今ではコンビ薬も単独法も処方量や処方間隔のプロトコルが確立していて、世界保健機関(WHO)や国際産婦人科連合(FIGO)ではどちらも安全な中絶方法としている。



③中期にも使える

 1988年の開発当初は妊娠初期(9週まで)しか安全性が確かめられてなかった。
 しかし現在では、妊娠12週(医師によっては14週)まで初期中絶のプロトコルで安全・確実に使えことが確認済み。
 中期中絶にも、プロトコル(処方量や服用法)を変えれば使えるというエビデンスがある。


中期中絶のプロトコルは複数あります。例:
WHO | Medical management of abortion

FIGO's updated recommendations for misoprostol used alone in gynecology and obstetrics, First published: 23 June 2017

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女性の身体をめぐる健康と権利―日本のリプロダクションの何が問題かー

2月20日に、早乙女智子さん、福田和子さんと一緒に登壇します❣

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立教大学社会福祉研究所主催 第53回社会福祉のフロンティア
女性の身体をめぐる健康と権利―日本のリプロダクションの何が問題かー

緊急避妊薬のオンライン処方が始まり、OTC化(市販薬化)に向けて女性団体の動きが活発化している。産婦人科医の中でも賛否両論があるなかで日本産婦人科医会が会員のアンケート調査の結果を歪曲して報じるなど、現場レベルでの混乱が続いている。
避妊と同様に中絶の配偶者同意の問題や中絶薬の承認に関しても、女性運動が起こり、海外メディアが関心を持って報じるものの、中絶薬の承認予定をめぐっては運用の仕方や価格などについて論争が続いている。そこには当事者不在の産婦人科医療という大きな問題があり、我が国におけるリプロダクティブ・ヘルス&ライツの認識が未成熟であることが関連しているのではないだろうか。
本シンポジウムでは、長年中絶問題を国際的視野で研究し、著書も多数出されている中絶研究者の塚原久美氏、産婦人科医として女性たちの健康を支え、学際的な活動をしてきた「性と健康を考える専門家の会」の代表理事を務める早乙女智子氏、海外の多様な避妊法を紹介し若者の避妊について発信を続ける大学院生、福田和子氏を招き、現在の日本の状況と問題点について考えたい。

【日 時】2022年2月20日(日)15:00~17:00
【登壇者】塚原久美氏(RHRリテラシ―研究所、金沢大学非常勤講師)
    早乙女智子氏(産婦人科医、政治家)
    福田和子氏(なんでないのプロジェクト代表)
【主 催】立教大学社会福祉研究所
【申 込】事前登録制。こちらからご登録ください。→http://s.rikkyo.ac.jp/99cf999
【問合せ】立教大学社会福祉研究所(r-fukushi@rikkyo.ac.jp)
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日本の子宮頸がん、過去10年の罹患率増は世界ワースト

ケアネット 公開日:2021/08/17

これって人災ではないのだろうか。

 子宮頸がんは、発症頻度は高いものの予防や制御のしやすいがんであり、先進国においては経済や社会の発展に伴って、罹患数や死亡数は減少トレンドにある。しかし、感染予防に最も効果的なHPVワクチンの接種が進んでいない日本においてはこの傾向と反する状況にあることが新たな研究で裏付けられた。子宮頸がんの罹患率・死亡率と、人間開発指数HDI)との関連を調べた中国チームの調査によるもので、Cancer誌オンライン版8月9日号に掲載された。

 研究チームは、2018年の子宮頸がんの罹患率と死亡率をGLOBOCANデータベースから抽出し、平均寿命、教育、国民総所得からなる平均的な社会経済的発展の指標である人間開発指数との相関関係を分析した。現在のトレンドはCancer Incidence in Five Continents PlusとWHO(世界保健機関)の死亡率データベースから経時的なデータが得られる31ヵ国を対象に、Joinpoint回帰法による年間変化率を用いて分析した。さらに、うち27ヵ国を対象に、今後15年間の将来の傾向についてAPCモデルを用いて予測した。

 主な結果は以下のとおり。

・全体の子宮頸がんの罹患率および死亡率は、人間開発指数と負の相関があった(罹患率r = -0.56、死亡率r = -0.69、p < 0.001)。しかし、日本においては正の相関があった(罹患率r= 0.48、p<0.022、死亡率r= 0.81、 p<0.001)。罹患率と死亡率の双方が正の相関を示したのは日本のほかはブルガリアのみだった。
・ほとんどの国では、過去10年間の罹患率(26/31ヵ国)、死亡率(30/31ヵ国)は減少または横ばいであり、減少傾向は効果的な子宮頸がん検診プログラムを実施している国でとくに顕著だった。
・日本の過去10年間(2003~2012年)の平均年間変化率は、罹患率4.2%、死亡率0.5%だった。大半の国がマイナスとなる中、罹患率は31ヵ国最も高く、死亡率は2番めに高かった。
・今後15年間の予測トレンドにおいても、多くの国で減少または横ばい(罹患率19/27ヵ国、死亡率26/27ヵ国)傾向となったが、日本はいずれも上昇予測となった。

 著者らは「子宮頸がんの罹患率、死亡率は、社会経済的発展と負の相関を示しており、特に、効果的な子宮頸がん検診プログラムとHPVワクチン接種を実施している国では、発生率と死亡率が横ばいまたは減少傾向にある国が圧倒的に多かった」としている。

 本結果は、HPVワクチン副反応のネガティブキャンペーンにより積極的なワクチン接種勧奨の差し控えが続き、ワクチン接種率が1%未満(2002 年度以降生まれの女性)という日本がいかに世界の潮流からかけ離れた危機的な状況にあるかを、改めて浮き彫りにする内容となっている。

(ケアネット 杉崎 真名)

www.carenet.com