リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶幇助で有罪になったユスティナ・ウィドルジンスカに8ヶ月の社会奉仕の刑が下される

Frontline Defenders, March 14, 2023

仮訳します。

状況:刑の確定

 2023年3月14日、ワルシャワPraga Południe地方裁判所は、6回目の最終審問で、女性人権擁護者Justyna Wydrzyńskaに「中絶実行幇助」の有罪判決を下し、1カ月30時間の社会奉仕を8カ月行うよう言い渡した。

 2023年2月6日、Justyna Wydrzyńskaさんの事件の第5回審理が行われ、中絶薬を受け取った女性が証言しました。裁判所は、ユスティナ・ヴィドリスカからピルを受け取った女性を含む2人の証人の尋問の間、審理を非公開にしました。

 2023年1月11日、ワルシャワ・プラガ地方裁判所でユスティナ・ヴィドリスカの裁判の第4回審問が行われました。

 2022年10月14日、女性人権擁護者Justyna Wydrzyńskaの第3回審問がワルシャワのプラガ地方裁判所で行われました。

 2022年7月14日、女性人権擁護者Justyna Wydrzyńskaの第2回審理は、ワルシャワのプラガ地方裁判所によって2022年10月14日まで延期された。告発の証人が出廷しなかったため、審理が行われなかったのです。この女性人権擁護者は、ポーランド刑法152.2条に基づく「中絶の実行の手助け」と、薬事法124条に基づく「市場に導入する目的で未承認の医薬品を所持」した罪に問われています。有罪判決を受けた場合、最大3年の懲役刑に処されます。

 2022年4月8日、ワルシャワPraga Południe地方裁判所は、女性人権擁護者Justyna Wydrzyńskaのケースを検討する。彼女は、ポーランド刑法第152.2条に基づく「中絶の実行の手助け」と、薬事法第124条に基づく「市場に導入する目的で未承認の医薬品を所持した」罪で起訴されています。有罪になった場合、彼女は最大3年の禁固刑に処されます。

フランスで憲法に「中絶の自由」を明記する計画が進行中

madame FIGARO.jp Society & Business 2023.03.13

マダム・フィガロ.jpの記事が詳しいので紹介します。
フランスで憲法に「中絶の自由」を明記する計画が進行中。|Society & Business|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)

 フランスのマクロン大統領は3月8日、「人工妊娠中絶を選ぶ自由」を憲法に明記したいとの考えを明らかにした。その背景には、昨夏、米連邦最高裁がこれまでの判断を覆し、妊娠中絶の権利を認めないという歴史的な決定を下したことがある。

 女性の権利にとって重要な一歩が刻まれた。国際女性デーの3月8日に、マクロン大統領は「人工妊娠中絶を選ぶ自由」を憲法に明記したいと表明した。中絶の合法化のために尽力した故ジゼル・ハリミに敬意を表しつつ、大統領は「数ヶ月のうちに」政府法案を提出することを約束した。

 これに先立つ2月1日、右派が多数派のフランス元老院(上院に相当する組織)において、中絶を選ぶ「女性の自由」を憲法に明記する改正案への賛成票が166対152で反対票を上回った。左派の主張するような「権利」という考え方は採用されなかったものの、フランスの国会は中絶を憲法に明記することを肯定した。しばらく前からフランスでこの件が議論されるようになった背景には昨夏、米連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた過去の判決を破棄する歴史的な判断を下したことがある。時系列でこれまでの経緯をふりかえってみよう。


2022年夏:米国で中絶の権利が否定される

 自分の体のことは自分で決める自由を女性たちが手に入れても安心はできない。アメリカの女性たちは昨夏、そのことを痛感した。2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年に人工妊娠中絶を憲法で保障された権利とみなした「ロー対ウェイド」判決を覆した。保守的な州では、中絶を禁止したり制限したりすることができるようになり、アメリカのフェミニストや女性たちを失望させた。

 ヨーロッパでも、中絶の権利が後退している国がある。そもそもマルタでは昔から中絶を禁止している。ポーランドは2021年、胎児が奇形であっても中絶ができなくなり、中絶は事実上違法となった。ハンガリーも権利制限に傾いており、9月から中絶を希望する女性は胎児の心音を聞くことが義務づけられた。

 フランスでは、このような事態になる前に先手を打って憲法に中絶の権利を明記しようとする動きが出てきた。


2022年10月7日:中絶の権利を憲法に明記する改正案が野党から国会に提出される。

 このような情勢をふまえて、左翼第1党「服従しないフランス」(LFI)のマティルド・パノー議員ら数名の議員は10月7日、中絶の権利を死刑廃止同様、人権と基本的自由として憲法に明記することを盛りこんだLFI議員発議改正案を提出した。この改正案の狙いは中絶の権利が基本権であり、法に定める必要性があることを認めさせると同時に、撤回ができない原則を憲法に記載することで将来的な侵害を防ぐことにある。


2022年10月19日:元老院(上院)で緑の党などによる改正案が否決される

 同じく10月、元老院(上院)は緑の党に所属するメラニーヴォーゲル議員がいち早く提出し、元老院(上院)における8つの政党のうち共和党(LR)を除く7つの政党の所属議員が署名していた、中絶を憲法に明記する別な改正案が、「賛成」139票、「反対」172票で否決された。元老院法務委員会は、中絶を憲法上の権利として明記することはフランスの事情にそぐわないとの意見を表明した。


2022年11月24日:国民議会(下院に相当する組織)においてLFI議員発議改正案が採択される

 11月24日、国民議会(下院)はLFI議員発議改正案を一部修正したうえで、賛成337票、反対32票、欠席18票で採択した。この法案には、新人民連合環境・社会党(NUPES)、大統領を支持する諸政党、そして極右政党の国民連合さえも含む、ほとんどの議員が賛同した。ただし5時間近くにわたって、激論が交わされた末の採択だった。


2023年2月1日:元老院(上院)は中絶を憲法に盛りこむことに賛同する

 白熱した議論の末、2月1日に元老院(上院)でLFI議員発議改正案を採択した。ただし採択されたのは、原案を基に共和党(LR)のフィリップ・バ議員が提案した修正案で、法律によって定められるべき法律事項を規定した憲法第34条に「妊娠を終了させる女性の自由が行使される条件は法律によって定められる」の文言を追加するというものだった。この修正案では当初案のように中絶を「権利」とはしていない。

 社会党は直ちにこれが「女性の権利のための大きな前進」であると歓迎し、エコロジー政党は「歴史的勝利」を称えた。しかしながら完全な勝利とは言えず、左派は「責任ある」行動を取ったことを自負しながらも、文言の変更を嘆いた。いずれにせよ、元老院(上院)がこの法案を否決したら法案がほうむり去られる運命にあったことも確かだ。


2023年3月8日:マクロン大統領が憲法に中絶について明記する意向を表明

 マクロン大統領は3月8日、「数ヶ月のうちに」中絶を憲法に明記したいと発表した。この発表は、フェミニストとして人工妊娠中絶の合法化のために激しくたたかった弁護士、故ジゼル・ハリミの追悼式でおこなわれた。「女性が人工妊娠中絶をする自由を(基本法に)明記したい。(中絶の自由を)阻んだり取り消したりすることのできない不可逆性を確保するために」と、パリ裁判所庁舎の会場から宣言した。


これからのスケジュールは?

 元老院(上院)で採択された改正案は文言が修正されたため、国民議会(下院)で再審議された後、再び元老院(上院)で審議される。議員発議の場合、国会で採択された後、国民投票となるが、政府法案の場合は国民投票が不要となる。3月8日にマクロン大統領が発表したのは、まさにこの政府法案を出すということだ。「この場合、(現在合意がとれているテーマについての議論を起こしかねない点で政治的に微妙な)国民投票を経由せず、議会すなわち国民議会(下院)と元老院(上院)で5分の3以上の賛成票を得えればよい」とフランスのルモンド紙のライブレポートは伝えている。今後の展開を待ちたい。

ミフェプリストン-ミソプロストールと手術による人工妊娠中絶の比較による短期的な副作用

株式会社Kids Public産婦人科オンライン代表・重見大介医師

2月26日にm3.comに寄稿していた「経口中絶薬、重篤な有害事象の発生リスクとは」の元論文を確認 
"Adverse Outcomes"は必ずしも「有害事象」とする必要はなく、副作用と訳すこともできる言葉。


Short-Term Adverse Outcomes After Mifepristone-Misoprostol Versus Procedural Induced Abortion : A Population-Based Propensity-Weighted Study

PubMedの記述を仮訳します。

背景:
  第1期の薬による人工妊娠中絶(IA)と手続きによるIAを比較した先行研究は、選択バイアスがかかりやすく、重篤な有害事象(SAE)の評価には力不足で、適応による交絡を考慮していない。2017年から、カナダ・オンタリオ州全域の外来薬局で、ミフェプリストン-ミソプロストールが無償で調剤された。


目的:
  ミフェプリストン-ミソプロストールによる早期IA後の副作用の短期リスクを、手術によるIA後と比較すること。


デザイン:
人口に基づくコホート研究。


設定:
カナダ、オンタリオ州


患者:
第1期のIAを受けたすべての女性。


方法:
  外来患者としてミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性39 856人と、病院以外の外来診療所で妊娠14週またはそれ以前に手術によるIAを受けた女性65 176人が比較された(比較1)。ミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性39 856人と、推定妊娠9週以下で外来病院ベースの手術によるIAを受けた女性8861人が比較された(比較2)。主要複合アウトカムは、IA後42日以内の重篤な母体罹患、末端臓器障害、集中治療室入院、死亡を含むあらゆるSAEとした。副次的な広範なアウトカムは、SAE、出血、妊娠の産物の保持、感染、輸血のいずれかであった。安定化した治療逆確率加重により、曝露群間の交絡を説明した。


結果:
IA時の平均年齢は約29歳(SD、7)、33%が未産婦であった。6%が農村部に居住し、25%が低所得者層に居住していた。比較1では、ミフェプリストン-ミソプロストールIA後133人(1000人あたり3.3人)、手術によるIA後114人(1000人あたり1.8人)にSAEが発生した(相対リスク[RR]、1.87[95%CI、1.44~2.43];絶対リスク差[ARD]、1.5/1000[CI、0.9~2.2])。有害事象の発生率は、1000人あたり28.9人対12.4人(RR, 2.33 [CI, 2.11 to 2.57]; ARD, 16.5 per 1000 [CI, 14.5 to 18.4] )であった。比較2では、SAEは女性133人(1000人あたり3.4人)および27人(1000人あたり3.3人)にそれぞれ発生した(RR、1.04 [CI, 0.61 to 1.78] )。あらゆる有害事象の発生率は、1000人あたり31.2人対24.9人であった(RR, 1.25 [CI, 1.04 to 1.51] )。


限界:
ミフェプリストン-ミソプロストールを処方された女性が薬を服用しなかった可能性があり、IA時の正確な妊娠週数が必ずしも判明していなかった。


結論:
まれではあるが、短期的な有害事象は、手術によるIAよりもミフェプリストン-ミソプロストールIA後の方が、特に重篤でない有害転帰について起こりやすい。

調査を行ったのはCanadian Institute of Health Research
Welcome to the Canadian Institutes of Health Research - CIHR

Medical abortion with misoprostol-only: a sample protocol Contraception, 2023 (Open access)

ミソプロストールのみによる薬による中絶:プロトコル

ICWRSAの2023年3月9日号に載っていた記事です。

仮訳します。

コントラセプション』2023年(オープンアクセス)

Elizabeth G Raymond, Alice Mark, Daniel Grossman, Anitra Beasley, Kristyn Brandi, Jen Castle, Mitchell D Creinin, Caitlin Gerdts, Laura Gil, Melissa Grant, April Lockley, Jamila Perritt, Tara Shochet, Dominique Truan, Ushma D Upadhyay著


 Gynuity Health Projectsが率いる臨床医と研究者のチームは、ミソプロストールのみの薬物中絶のサンプルプロトコルを発表しました。このプロトコルは、データの要約を含む解説を伴っており、妊娠84日(12週)までのミソプロストールのみの薬物中絶を提供したい米国の施設ベースのプロバイダーの指針となることを目的としています。

 推奨されるミソプロストールのみのレジメンは、ミソプロストール800mcgを舌下または膣から服用し、3時間ごとに繰り返し、合計3〜4回服用することです。患者が必要に応じて使用できるように、追加の投与量を提供する必要があります。
 米国では、エビデンスに基づいた中絶医療へのアクセスを継続的に確保することが最も重要です。ミフェプリストンとミソプロストールの両方からなるレジメンが薬による中絶の標準となっていますが、ミソプロストール単独は安全で効果的な代替手段として推奨されており、ミフェプリストンが入手できない場合やアクセスできない場合によく使用されています。

 ミフェプリストンを含むレジメンと比較すると、ミソプロストールのみを使用した場合の方が、妊娠の持続または継続の可能性が高くなります。中絶の結果を評価するためのフォローアップ戦略が重要です。


背景説明
 ミソプロストールのみによる薬による中絶のサンプルプロトコルは、米国食品医薬品局(US FDA)によるミフェプリストンの初期承認に異議を唱える訴訟、Alliance of Hippocratic Medicine v. FDAに対応して作成されました。

 テキサス州の連邦裁判官は、中絶に反対する保守連合である原告側を支持する判決を下すとの見方が有力です。近日中に予想される判決では、ミフェプリストンを薬局で調剤し、郵便で送ることを認める最近のFDA規制の変更を撤回するよう、FDAに命じる可能性があります。あるいは、メーカーにミフェプリストンを米国市場から撤退させ、中絶が保護されている州でもこの薬へのアクセスを断ち切る可能性もあるのです。

 ミフェプリストンは、2000年に米国でFDAによって初めて承認されました。ミフェプリストンは、2000年にFDAによって米国で初めて承認されました。ミフェプリストンは、議論の余地のない安全性と有効性を持っており、十分に文書化された圧倒的な科学的・医学的証拠と実際の経験によって裏付けられています。著者らは、迅速に査読、修正、掲載原稿の受理をしてくださいました雑誌「避妊」の編集チームに感謝しています。<<

マクロン大統領、中絶の権利をフランス憲法に明記することを支持

ロイター 2023年3月9日

Macron backs enshrining right to abortion in French constitution | Reuters

仮訳します。

  • フランスのマクロン大統領は8日、中絶の権利を憲法に明記することを支持すると表明した。

 マクロン大統領は、2020年に93歳で死去したチュニジア生まれのフランス人フェミニストで弁護士のジゼル・ハリミ氏を称える式典で、国際女性デーにこの声明を発表した。彼女は中絶の権利の断固とした擁護者だった。

 「このメッセージの強さが、憲法を改正し、女性が中絶を求める自由を憲法に明記する手助けになることを願っている。

 これは、「今日、この自由が押しつぶされるのを目の当たりにしているすべての女性たちに、普遍的な連帯のメッセージを送ることになる」とマクロン大統領は述べた。

 この動きは、米国最高裁が昨年6月、女性の中絶の憲法上の権利を認めた1973年の画期的な判決「ロー対ウェイド事件」を覆したことを受けてのものだ。

 フランス議会の両院はすでに憲法にこの権利を明記することに賛成しているが、上院は中絶を「自由」と呼び、国民議会は「権利」と呼んでいる。

 マクロン大統領は、数カ月以内に憲法改正のための法案が議会に提出されるだろうと述べた。

 1972年の画期的な事件では、レイプによって妊娠した未成年者を中絶させたとして裁判にかけられたハリミが無罪を勝ち取った。


取材:ドミニク・ヴィダロン、エリザベス・ピノー 編集:アリソン・ウィリアムズ

2月28日に提出した内容

経口中絶薬メフィーゴパックに対するパブコメ

 日本では従来、妊娠早期の中絶には外科的手法しかありませんが、人権および医療の観点より内科的な中絶方法の選択肢は不可欠です。そのため、このたび承認申請されているラインファーマ社の経口中絶薬メフィーゴパックを承認し、アクセスのよい形で提供することを求めます。
1.メフィーゴパックを承認して下さい
 このミフェプリストンとミソプロストールのコンビ薬(二薬をセットにした製品)は、1988年に中国とフランスで使われ始めて以来、世界各地に広まり、現在は80か国以上で使われています。この薬を導入していない先進国は日本のみだと言われています。
 この薬を用いた内科的中絶は、WHOが2003年のガイドライン『安全な中絶』で外科的な吸引法と並んで「安全な中絶方法」として推奨されています。さらにこの薬は、2005年からWHOの『必須医薬品モデルリスト』に入り、2019年からは同リストの「中核リスト」に収載されています。中核リストに収載されるためには、非常に安全で効果が高いことはもちろん、取扱い方法が簡単で、値段も手ごろで誰でも使えることが重要な条件になっています。
 この優れた薬を、ぜひ日本でも早期に導入するために、まずはこの薬を承認してください。

2.この薬を厳重管理しないで下さい
 このたびのパブリックコメントの資料「メフィーゴパックの概要」によると、厚生労働省は、この薬を中期中絶薬プレグランディンと同様の厳格な流通および使用方法で取り扱う予定のようです。しかし、それは大きな間違いです。なぜならば、メフィーゴパックとプレグランディンは世界では全く別々の位置づけをされている薬だからです。
 メフィーゴパック(上述コンビ薬)は、先に述べた通りWHOの必須医薬品中核リストに入っているほど安全・有効な薬であり、WHOが2022年3月に発行した新しい『中絶ケア ガイドライン』では、妊娠12週までの薬による中絶を行うために、医師(専門医以外も含む)のみならず助産師や看護師、准看護師や薬剤師、中絶を望む本人でもこの薬を扱うことが「推奨」されています。ところが、一方のプレグランディンは全くもってWHOの推奨外であり、上記新ガイドラインには名前も見当たらないような薬です。
 プレグランディンとミソプロストールは基本的に同じ作用をもつプロスタグランジン製剤ですが、世界では後者の方がより良い薬であるとのエビデンスが示されています。ミソプロストールは安くて(1回4錠で100円程度)常温保管が可能で経口と経腟の二経路で使用可能であるのに対し、プレグランディンは高額で(1回1個投与で4000円を3回ほど繰り返す)冷凍保管が必要で、経腟でしか投与できないためです。日本で中期中絶にもっぱら使われているプレグランディンは、今回の経口中絶薬の手本とすべき薬どころか、1997年に厚労省が子宮破裂や子宮頚管裂傷の恐れがあると注意喚起を行っているような薬であるため、むしろミソプロストールに置き換えていくべき薬なのです。リスキーでアクセスの悪い薬に合わせた取扱いをするなど本末転倒です。より良いアクセスを求めます。

3.この薬をすべての人に手に届く形で提供して下さい
 メフィーゴパックの使用を日本産婦人科医会の会員(母体保護法指定医師)のみに限定している現行の法制度は、この薬を必要とする人にとっての障壁となるため、変えていく必要があります。現行の刑法堕胎罪と母体保護法は指定医師にしか中絶ケアを行えないとしてきましたが、それは外科的中絶(特にそうは法)を前提してきたためです。WHOは2003年以来、でそうは法(D&C)を「安全な方法」とはみなさず、より安全な「吸引法」か「薬による中絶」に移行することを求めてきました。また、より多くの職種が取り扱えるようにすべきです。
 日本産婦人科医会の医師たちは、この薬を「入院」させて服用され、その費用は「従来の外科的手法と同様の10万円」にするなどと発言してきましたが、それではこの薬にアクセスできなくなる当事者を増やすばかりです。世界的にすでにスタンダードである経口中絶薬を必要とするすべての人々に届けていくために、法制度を変えるための施策に乗り出して下さい。

4.中絶ケアを必要とするすべての人の人権を保障して下さい
 今や国連では安全な中絶(妊娠初期の中絶では吸引法や内科的中絶)を受けられることは女性と少女(ならびに妊娠しうるすべての人々)の権利であると明記している時代です。女性の人権が反映されていない古い法律や外科的中絶を前提とした中絶医療制度そのものも改善していく必要があります。日本ではリプロダクティブ・ヘルス&ライツが理解されず、政策に組み入れられてきませんでした。この分野の研究を発展させ、政策に反映するための仕組みを作って下さい。
以上

京都新聞 社説:飲む中絶薬 女性の健康と権利、尊重を

2023年2月26日 16:00

社説:飲む中絶薬 女性の健康と権利、尊重を|社会|社説|京都新聞

 国内で初めて飲み薬の妊娠中絶薬の製造販売承認を、厚生労働省の部会が了承した。早ければ3月にも正式に承認される可能性がある。

 日本では手術による中絶が一般的で、海外に比べて薬の導入の遅れが指摘されてきた。承認されれば、女性の心身の負担を軽減する新たな選択肢となることが期待される。
 安全性を十分見極めながら、希望する人に届けられる体制を整えたい。

 審議されている中絶薬は、英製薬会社が一昨年に国に承認申請していた。妊娠9週までを対象とし、妊娠継続に必要なホルモンを抑える1剤目を服用し、36~48時間後に子宮を収縮させる2剤目を服用する。臨床試験では、服用後24時間以内に93%の成功を確認したという。

 中絶薬は、1998年にフランスや中国で承認され、現在は世界70カ国以上で使われているとされる。

 だが、日本では子宮内から金属製器具を使ってかき出す「掻爬(そうは)法」が続けられている。

 世界保健機関(WHO)が2012年に、母体を傷つける恐れがあり、安全性に問題があって「時代遅れ」だと指摘している。飲み薬の承認は、遅すぎたと言わざるを得ない。

 厚労省は、服用後の急な体調変化などに備え、当面は有床医療機関で使用することを条件にする見通しという。日本産婦人科医会も、当初は入院可能な施設での使用を求めている。

 緊急時の対応のほか、オンライン診療も含めた相談、カウンセリングなどで、安心して服用できる体制を整えるべきだ。

 薬の値段に関しては、自由診療のため、十数万円以上になることが多い手術と同程度になる可能性が懸念されている。

 高額で入院も必要となれば、希望に反し、日帰りできる現行の手術を選ぶ人も出かねない。

 海外では平均卸値が千円程度とされ、オランダなど一部の国では公費負担もある。医師や研究者らでつくる団体は、自己負担が高額にならないよう求めている。

 日本の中絶を巡る取り組みが後回しになってきた背景には、刑法の堕胎罪に起因した根深い懲罰意識があると、専門家から指摘されている。男性医師が大半を占める医療現場も、改善を怠ってきたのではないか。

 母体保護法も、中絶には本人と配偶者の同意が必要としていることが、大きな障壁となっている。薬も同様の扱いになるとみられる。

 WHOは同意要件の廃止を求めている。国連国際人口開発会議は、産むか産まないかを決める権利を女性の基本的人権に位置づける「性と生殖に関する健康と権利」(リプロダクティブ権)を提唱している。

 自分の健康と人生設計について自ら決めるのは当然だ。中絶に関しても、女性の意思が尊重されるよう、法改正の議論も求められる。

 学校などでの適切な性教育などを通じて、妊娠や中絶について男女がともに学び、考えることが重要だ。女性だけの問題にしてはならない。

『新版 中絶と避妊の政治学 戦後日本のリプロダクション政策』岩波書店より2月22日刊行!

自民党と宗教団体の関係があらわになった今こそ読んでほしいです!

なぜ日本では避妊よりも「まず中絶」だったのか?世界的にも特異な生殖政策を生んだ政治的な構造とは。

中絶合法化=1948年、ピル解禁=1999年。なぜ日本では避妊よりも「まず中絶」だったのか?世界的にも特異な政策が生み出された政治的な構造とは。戦後日本が直面した人口増をめぐる産科医ら医師団体と宗教団体の攻防、女性運動など利益集団と国家アクターの駆け引きから、現在に続く生殖についての制度を設計する政治過程を描きだす。

『新版 中絶と避妊の政治学 戦後日本のリプロダクション政策』岩波書店より2月22日刊行!

新版 中絶と避妊の政治学 - 岩波書店