リプロな日記

日本のアボーション(中絶と流産)にまつわる諸問題を研究しています

lefteye69さんが手動吸引器Del-Emのことを書いてらしたのでご紹介しようかと思ったのですが,初めて知った人はピンと来ないかもしれないので,昨年,学会発表*1でしたときの資料をもとに若干情報を補っておくことにします。興味のある方は合わせてごらんください。

ME(Menstrual Extraction)月経吸引法

  • 6人の子持ちの主婦、全米女性機構(NOW)ロサンゼルス支部の中絶委員会に属するキャロル・ダウナーが発案。公立学校教員のロレーヌ・ロスマンが改良したDel-Emと呼ばれる携帯吸引器を使う。
  • 1971/4/7 ベニスビーチの女性の本屋で開いた《セルフヘルプ・クリニック》で初めて紹介。「柔軟なプラスチックのカニューラ(子宮に挿入するソーダ・ストロー大の細いチューブ)と、吸引を引き起こし、子宮内容物を収める携帯シリンジを使用したもの。
  • その後、中絶合法化運動を率いていたワシントン州のクーニー医師の下で改良を重ね、1971年8月のNOWの会議で発表。
  • 「この手法の支持者はD&Cで使うカミソリのように鋭い匙状のキューレットを忌み嫌う」→非合法時代の「Sharp Curettage 鋭い掻爬」
  • アメリカで中絶を合法化した1973年のロウ判決の中でも、この手動吸引法が言及されている。現在は、バングラデシュなどの発展途上国で使われている。             

    〔Chalker & Downer 1992〕



MEとMR(月経調節法)

  • MRとは 「月経の遅れを訴える女性に対して、妊娠検査や超音波で妊娠を確認することなく早期に子宮内容物を排出する処置」(WHO 2003)
  • Manual vacuum aspiration手動真空吸引法の別名: suction abortion吸引中絶法、vacuum curettage真空掻爬法、suction curettage吸引掻爬法、 menstrual regulation (MR) 月経調節法、mini-suctionミニ吸引法……とさまざま。(IPSの説明 1998-2005)


手動吸引を導入した人たちは,女性の視点に立った中絶ケアの改良も行なってきた。

  • 全身麻酔 → 部分麻酔に (事故を減らす。「女性の中には何も知らないうちに終わってしまうのは無責任だと感じる人がいる」との意見も。)
  • 初期中絶では掻爬より吸引のほうが早くて安全。
  • 電動吸引よりも手動吸引のほうが静かで安心。
  • 手動吸引(ME)は事後避妊法(だと思える)。
  • 中期中絶については、疑似分娩的方法よりもD&E(掻爬に類する方法)のほうが確実で安全であり、トラウマも少ない。
  • 専用のカウンセラーが付きそう(心のケア)。

*1:塚原久美「中絶手法の改善と中絶観」石川県母性衛生学会 北陸母性衛生学会 2005/7/23のpowerpointから若干改編