リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

観てきた……心の琴線に触れるすばらしい作品だった。

演技自体には正直なところ素人っぽさが残っている印象を否めなかったけれども,それがかえって,彼女たち自身がDV被害者であるかのような効果を強め,観る者の心にリアルに迫ってくる。*1DVの実態を知らせるメッセージが,そこここに散りばめられているのと同時に,DV被害者のみならず,さまざまな痛みを抱えて生きてきた人々すべてをエンパワーする熱いメッセージも込められている。

作品中に,DV被害者の回復を助ける自助グループの名前として,リジリエンス(resilience)……という言葉がでてきた。リーダーズ第2版を引くと回復力,立ち直る力,弾力,弾性,反発立ち直りとある。ロングマン現代アメリカ英語辞典の説明には,「困難な状況,疾病等のあとで,ただちに強靱,健康,もしくは幸福な状態になれる能力」とあり,「彼女たちの勇気とリジリアンスは我々すべてをインスパイアしてくれた」という例文が載っていた。*2これこそ「ひまわり」という題に込められているメッセージだ。

もしやと思ったら,劇の中で紹介されている「リジリエンス」というグループはやはり実在していた。一部紹介する。

Resilience 〜自分のもつリジリエンス(力)...

レジリエンスの意味と活動

レジリエンス(Resilience)とは、英語で色々な形の「力」を意味します。例えば、回復力、復元力、元気、快活、弾力、反発などです。どのような逆境に置かれても、耐え抜く力、そこから脱する力、新しくエネルギーを発揮する力、マイナスのものをプラスに変えてゆく力 ― これらをイメージして、私たちのグループをレジリエンスと名付けました。

レジリエンスには、様々なバックグラウンドを持つ女性たちが集まります。より良い自分を見出して行こう、より良い人生を歩むための力を作って行こう、という主旨のもと、様々な活動をしています。

レジリエンスではサバイバーの皆様を、敬意を込めて「星」と呼んでいます。本来持つレジリエンス(力)で、自ら輝いていくものと私たちは思っています。DVに限らずどんなサバイバーも「星」であると思います。
resilienceのホームページより

ところで,わたしがresilienceという言葉を最初に知ったのは,以下の本の訳者奥野光さんと名古屋市大のナラティヴ研究会でお目にかかった時のことだ。奥野さんは,『現代のエスプリ』にもリジリアンスについて書いていたはずなので,興味のある方はそちらも探してみてください。

ティーヴン・J・ウォーリン,シビル・ウォーリン著/奥野 光・小森康永訳
『サバイバーと心の回復力:逆境を乗り越えるための七つのリジリアンス』
金剛出版,2002年
http://kongoshuppan.co.jp/dm/0741.html

なお教育関係の方ですが,以下のサイトでも,“リジリエンス”に関する本(E. Werner & R. Smith, Journey from Childhood to Midlife: Risk, Resiliency, and Recovery 2001, Cornell University Press)を紹介しているのを見つけました。
http://shingakunet.com/career-g/mmag/041206/column.html

*1:じつは,わたしは金沢市男女共同参画委員だった時にこの劇を招致することを提案した張本人なので,公演後に楽屋に入って出演者の話を聞くことができたけど,「この中にDV被害者の方はいらっしゃるのですか?」とはどうしても伺うことができなかった。ただ上演者の一人は,「自分は被害者ではないが,これを演じているうちにDVを疑似体験してしまい,立ち直るまでにしばらくかかった」とおっしゃっていた。

*2:塚原訳