リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

前から気になっていることはいろいろあるけど,そのうちのひとつをば。「リプロダクティヴ・ヘルス/ライツ」という表記をよく見るけど,英語の文章で“reproductive health/rights”という表記は見かけたことがない。どうやらヤンソン由美子さんの造語(?)らしいのだけど,こう訳してしまったことには,メリットとデメリットの両方があると思う。

メリットは,日本語では言いにくい「権利」をさりげなく追加しているところ……かな!!!? デメリットは,重要な要素としてreproductive freedomが含まれているはずであるreproductive rightsの概念を,単に「性と生殖にまつわる健康の権利」と誤解させてしまっていること。(でも,ヤンソンさんがreproductiveを「性と生殖の」と訳した慧眼には,脱帽しています。)

日本では,「健康の権利」が(特に中絶問題に関しては)身体的健康に限定されてきたけれど,そのことも問題をさらに大きくしている。「精神的健康を理由にした中絶」が認められていない先進国は日本くらいだという事実さえ,あまり知られていない。

身体的健康(特に,懐胎している女性の生死が関わる場合)については,他人にはどうにもしようがないかもしれないけれど,精神的健康については,社会のありようによって変えられるはず。実際,精神的な苦悩によって中絶に追い込まれるような人がいなくなる社会になってほしいものです。