リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

1995年にオレゴンの3クリニックで中絶を求めてきた262人に対し,ミフェプリストンとミソプロストルを使用した中絶を行ない,事前事後にアンケートで調査した研究について,PubMedから得た情報を訳してみました。

なおミフェプリストンは商品名であり、開発名のRU-486と呼ばれることもある。1980年にフランスで開発されたこの薬は胎盤機能を低下させる働きがあり妊娠9週まで使用できる。第二の薬剤として使われるミソプロストルと併用することで人工的に流産を引き起こす。この薬は1990年代に世界各地に広がり,プロライフ運動の強いアメリカでも2000年にFDAが認可している。日本では厚生省によって個人輸入が禁止されたまま,導入の動きは出ていない。

対象者:平均27歳,妊娠49.5日(8週目)。51.1%が前に1度以上の中絶を経験。


薬による中絶を選んだ理由(これについては事前調査なので印象):

  • 手術を避けたい62.8%
  • 侵襲度が低い56.3%
  • より自然40.5%
  • 真空吸引より感染や子宮への損傷が少ない35.1%
  • 妊娠を早めに処置できる27.2%


人工流産が始まるまでの時間の過ごし方:

  • パートナーや友人,家族と一緒に過ごしたい49.8%
  • 一人きりで過ごしたい30.6%
  • 同じ処置を受ける女性たちと一緒に過ごしたい17.6%


事後の調査では:

  • 薬による中絶に満足した72.8%
  • やや満足した15.5%

*「やや満足」の群は「満足」群に比べて,中絶に関連した不快や不安を経験していた。過去の中絶経験や属性の違いは満足度に影響していなかった。


今後:

  • 周囲の女性に勧める94%
  • もう一度中絶する必要があったら再び選ぶ87%


Beckman LJ, Harvey SM.
Experience and acceptability of medical abortion with mifepristone and misoprostol among U.S. women.
Womens Health Issues. 1997 Jul-Aug;7(4):253-62.

P.S.ミフェプリストンについて,前に書いた論文の提出稿がオンラインにあります。興味のある方はご覧くださいませ。→http://www.geocities.jp/ms_coo/gihou/gihou.html(文字化けしちゃう場合には,文字コードEUC-JPにすると読めると思います。)