リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

私たちの社会が「中絶」という行為に関して一般に与えている意味づけは「犯罪」「子殺し」「恐ろしいこと」「罪深いこと」といったものだ。こうした意味づけは,しつけ,教育,メディアの情報などさまざまな形で社会の中に広く浸透している。国家や,宗教など,社会に大きな影響力をもつ組織は子どもをもつことを奨励し,それに反する行為を非難する傾向にある。現在「少子化」が問題になっているが,国家は歴史的に見ても「子どもをもつこと=善」「子どもをもたないこと=悪」という社会通念を国民の間に流布させることに意を用いてきた。宗教もまた信仰の立場から中絶の問題をしばしばとりあげている。

嶺玲子「中絶のトラウマケア」宮地尚子編『トラウマとジェンダー:臨床からの声』金剛出版,2004:83.