リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

本日記載のニュースの順序とタイトルを変更しました。

中日新聞群馬版のサイトに掲載されていた以下の日本のニュースを優先します。

胎児の慰霊祭 厚労相は欠席
草津・栗生楽泉園

 草津町国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」で七日、国の隔離政策に伴って強制的に堕胎( だたい)された胎児二十六体の合同慰霊祭が行われた。入園者をはじめ、厚生労働省幹部や小寺弘之知事など約百五十人が参列。柳沢伯夫厚労相は公務のため出席しなかった。

 入園者でつくる自治会の藤田三四郎会長は「天上にて見守りください」と冥福を祈った上で、「堕胎された胎児たちは母に抱かれることなく、人間の尊厳を無視され命を奪われた。隔離政策に怒りが込み上げる」と国を批判した。柳沢厚労相の言葉を代読した同省の白石順一審議官は「両親、家族、入所者に多大な精神的苦痛を与え、誠に遺憾。心からおわび申し上げます」と謝罪した。しかし、式典後に会見した藤田会長は「大臣、副大臣が欠席したとは誠意ある対応と思えない」と話した。

 今回の慰霊祭は、国立感染症研究所ハンセン病研究センター(東京都)に標本として保管されていることが分かった胎児が同園に返還されたことを受け、一九八三年までに同園で火葬、納骨された二十五体とともに慰霊した。 (禰〓田功)

http://www.chunichi.co.jp/00/gnm/20061108/lcl_____gnm_____007.shtml

リプロのことを考えている一人として,この件を見ていて思うのは,“胎児の人間の尊厳”が無視されたことへの「怒り」以上に,本来は子を産みたかった入園者たちが自らの意志を尊重されず,そのリプロダクティヴ・ライツを無視され,堕胎を強要されたことの不当性はもっと主張すべきではないか,ということである。

リプロダクションの決定に関する意志を無視され,望まない堕胎手術や生殖腺の撤去手術をその身に強制されることは,独特の痛みを伴うものである。単なる精神的健康の侵害でもなければ,単なる肉体的健康の侵害でもない。人の親となる権利,いのちの継承権とでも言えるもの,あるいはその人の存在性をかけたなにものか(スピリチュアルななにものか)が奪われたことでもあり,ただの「精神的苦痛」ではすまないはずである。そうした独特の人権侵害を表現するために,リプロダクティヴ・ライツという言葉が使われるようになった。その点を踏まえておかなければ,入園者たちに対する十分な謝罪と償いを求めることも困難になるのではないだろうか。