昨日(2006/11/15)付でasahi.comのサイトに載っていた緊急避妊薬ノルレボ(NorLevo)に関するニュースから,ご紹介します。
コンドームの破損などで避妊に失敗したとき、その72時間以内に服用すれば妊娠の可能性を低くできる「緊急避妊薬」の臨床試験(治験)が年内にも始まることがわかった。性行為後に行う緊急避妊について、厚生労働省は「コンドームの不使用につながり、性感染症が増える」などの理由で公的に認めていない。しかしこの数年、同様の効果が望める婦人病治療薬が本来の目的外で処方される形で普及している現実があり、議論になりそうだ。
治験の対象となるのは,フランスで開発され,ヨーロッパ,韓国など約60ヵ国で販売されている「ノルレボ」という薬。日本では,日本発の国際的なバイオ医薬品開発企業を自認する「そーせい」が販売権をもち,朝日によれば年内にも販売する意向を厚労省に伝えたという。
厚労省は「『性感染症も防げるコンドームの普及を阻むおそれがある』『安易な性行為が増える』などの懸念が根強くある」として、緊急避妊を推進していない。同様の懸念は低用量ピル(経口避妊薬)でももたれ、国内での承認までに9年かかった。
一方で、内閣府がまとめた犯罪被害者等基本計画に基づく警察庁の施策では、今年4月から強姦(ごうかん)事件の被害者は緊急避妊薬を公費で得られるようになっており、政府が医師に目的外処方を求める「閣内不一致」な状態になっている。
公的には存在しない緊急避妊薬だが、既存の婦人病治療薬を本来より多く服用することで近い効果が期待できるため、「避妊に失敗した」と駆け込んできた女性に目的外で処方している病院は少なくない。海外の承認薬を個人輸入して処方する医師もいる。厚労省も「違法性はない」と黙認している。
これまで日本で緊急避妊専門薬は販売されていなかったが,下記の北村さんを初めとする一部の医師たちは,その処方を推進してきた。
日本家族計画協会クリニックの北村邦夫所長が昨年8月までに緊急避妊を求めて来院した663人に理由を尋ねたところ、「コンドームの破損」(42%)をトップに「避妊せず」(20%)、「コンドームの脱落」(17%)が続いた。北村医師は「望まない妊娠・中絶を避ける手段として緊急避妊を公的に認めるべきだ」と話す。
治験は、薬の有効性や安全性を、実際、女性に服用してもらうなどして確かめる。その上で厚労省に承認を申請し、ゴーサインが出るには数年はかかるとみられている。同省の人口動態調査や衛生行政報告例によると、すべての妊娠の約2割が中絶に至っており、同省は中絶を減らす手だてを検討中だ。
さらに朝日の用語解説から。
〈緊急避妊〉 コンドームや低用量ピルと異なり、性行為後にするのが特徴。欧州を中心に、70年代からホルモン剤を性行為後2回、間隔を置いて服用するヤツペ法が広がり、海外では00年ごろから緊急避妊だけを目的とする薬が普及した。日本では数年前から、ヤツペ法に基づき既存の婦人病治療薬を緊急避妊目的で処方されることがあり、「モーニング・アフター・ピル」などの名で知られている。
以上の引用は,すべてhttp://www.asahi.com/national/update/1115/TKY200611150321.html より。
なお緊急避妊薬(モーニング・アフター・ピル)は,ミフェプリストン(RU-486)などの早期中絶薬とは別もので,作用も異なるし,使用時期も異なる。前者は無防備なセックスの直後数日間,後者は最後の月経開始日から数えて7週まで使える。
ノルレボ(NorLevo)を開発したHRA Pharmaが提供するこの薬の情報は以下にあります。→ http://www.norlevo.com/
この頁の解説から一部訳してご紹介。
HRA Pharmaが開発したこの緊急避妊薬は,現在,世界25ヵ国で販売されています。このセクションでは,緊急避妊薬がどのように作用するかを詳しくご説明します。NorLevo®は,プロゲスチンのみを使用している製品です。一回に0.750 mg levonorgestrel2錠分が含まれてます。この薬にはエストロゲンは用いられていません。NorLevo® はあなたが未計画の妊娠を避けるための助けになります。予防措置をしない性行為や避妊の失敗,避妊ピルののみ忘れ,コンドームの破損などの場合にお役に立てます。
NorLevo®は,AIDSなどの性感染症は予防できません。Norlevo® のマークがついた緊急避妊薬は,通常の避妊の代用ではなく,あくまでも例外的なケースに用いるべきです。(訳:塚原久美)
さらに詳しい情報は→ http://www.norlevo.com/general_english/what_is_ec.htm