リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ホルモン出す新避妊具

本日付の讀賣オンラインで見つけた情報です。

子宮内膜 増殖抑える

 効果的で副作用の少ない避妊法として、黄体ホルモン放出型の子宮内避妊具(商品名ミレーナ)が今春、登場した。出産後など長期に確実な避妊を求める女性にとって、新しい選択肢になりそうだ。月経時の出血量や痛みを減らす利点も注目されている。(中島久美子)


過多月経に効果も

 望まない妊娠は、未婚女性ばかりでなく、出産を終えた既婚女性でも大きな問題だ。厚生労働省の2005年統計によると、40歳以上の女性の場合、出産2万348件に対し、人工妊娠中絶は2万1010件と、出生数を上回る。

 現在、最も使われている避妊法はコンドームだ。性感染症予防にも有効だが、ピル(経口避妊薬)や、「銅付加IUD(子宮内避妊用具)」の方が、避妊の効果は高い。

 今回、承認されたミレーナは、銅付加IUD同様、医療機関で医師が子宮内に挿入する器具だ。形状も同じだが、中央部分から女性ホルモンの一つ、黄体ホルモンが持続的に子宮内に放出される。

 妊娠は、子宮内に入った精子卵子と受精し、厚くなった子宮内膜に着床して成立する。ミレーナから放出される黄体ホルモンは、〈1〉子宮の入り口である子宮頸管(けいかん)の粘液を変化させ、精子が子宮内に入るのを妨げる〈2〉子宮内膜の増殖を抑え、受精卵の着床を防ぐ――作用がある。

 避妊効果は、ピルや銅付加IUDと同程度だが、それぞれ長所、短所がある。

 ピルは女性ホルモン薬で、毎日の服用で排卵を抑えるが、飲み忘れると効果が落ちる。月経時の出血が多い過多月経や痛み(月経痛)の緩和などの利点もある一方、副作用で吐き気や頭痛などが起こることがある。心臓病や糖尿病、授乳中の女性は使えない。

 銅付加IUDは、装着すれば2〜5年にわたって避妊でき、授乳中でも使える。ただ、月経量の増加や、月経時以外の出血が起きやすい。

 ミレーナは、両者の利点を併せ持ち、副作用を減らした方法とされる。

 月経は、子宮内膜がはがれ落ちて起きる。ミレーナによって子宮内膜の増殖が抑えられ、月経時の出血量が減り、痛みも和らぐ。使い続けると無月経になる場合もあるが、除去すればすぐに月経が戻り、妊娠が可能になる。作用はほぼ子宮に限定され、全身への副作用はほとんどない。一度装着すれば5年間、効果が続く。

 愛育病院(東京)産婦人科部長の安達知子さんは「ミレーナは、過多月経や月経痛に悩む女性にとっても一考の価値があります」と説明する。

 100か国以上で承認され、延べ850万人以上が使っている。国内では避妊にだけ承認されているが、過多月経や月経痛の緩和のために使う場合も少なくないようだ。

 東京都の主婦(43)は、月経時の出血や痛みで、子供の学校行事に参加できないこともあった。ピルや他のホルモン剤でも、あまり良くならず、今年7月にミレーナを装着した。「月経を気にせず予定を組めます」と話す。

 ただ、使用開始から数か月は子宮内膜への刺激などで月経時以外に少量の出血が続くことが多い。出産経験がないと子宮口が開いていないため、挿入時に痛む場合がある。

 保険はきかず、医療機関で差はあるが、10万円前後かかる。

本当に安全なんだろうか……と気になって調べたら、Dr.北村が早くも3月に毎日新聞で紹介していました。

第124話 「ミレーナ」で安心して映画が観られます

 「生理の量が多いために、長時間じっとして座っていられません。海外旅行もままならないし、映画を見に行くのもためらいます」。そんな女性に朗報です。ピルと子宮内避妊具を合体させた「ミレーナ○R52mg」がわが国にも登場したからです。

 月経時の出血量が異常に多い場合を過多月経といいます。日本産科婦人科学会の用語集では140ml以上をいうと定義しています。しかし、月経血量を直接測定することは簡単ではありませんので、クリニックには「生理にかたまりが出た。夜用ナプキンを使っても漏れてしまうことがある。めまいや息切れが気になる」などの訴えで来院することになります。過多月経を起こす原因としては女性ホルモンの異常、子宮筋腫など子宮の病気、血液の凝固系障害などが想定されますが、重症な貧血になっていることがありますので、それを踏まえた診断と治療にあたることになります。

 わが国で久しぶりに承認された避妊法の名前が「ミレーナR52mg」。実は、黄体ホルモンの一種であるレボノルゲストレルを含有する子宮内避妊具です。子宮内避妊具が医療機器であるのに対して医薬品に分類されることから子宮内避妊システム(IUS)と呼ばれています。経口避妊薬(ピル)と子宮内避妊具を合体させたようなものですが、経口的に飲むピルと違って、レボノルゲストレルが子宮内に局所的に放出されて、子宮内膜に直接作用する、子宮頸管粘液の粘性を高めて精子の通過を阻止する、子宮内避妊具の避妊作用を合わせ持つなどによって妊娠の成立を阻止することができます。妊娠の成立を阻止するわけですから人工妊娠中絶とは明らかに異なります。一日に放出されるレボノルゲストレルは0.02mg。ということは理論上2600日(約7年間)有効な避妊法ということになりますが、海外における臨床試験結果での5年目までの妊娠率は何と0.14。100人の女性の避妊法使用開始一年目での妊娠率がコンドームでは2〜15、腟外射精4〜27、ピル 0.3〜8ですから驚くほど高い避妊効果を維持しているかがおわかり頂けるでしょうか。

 「ミレーナR52mg」に含まれるレボノルゲストレルが子宮内膜に局所的に作用して内膜の増殖を抑制することで月経血量を劇的に減少させるだけでなく、20〜60%の女性が無月経を経験することになります。したがって、過多月経の女性も安心して長期間座ったままの生活、たとえば映画を見に行くこともできるというわけです。貧血が改善する、月経痛が和らぐことも避妊以外の利点として注目されています。

 子宮内避妊具のように装着と除去は婦人科医にお願いしなければなりませんので、出産経験があり、これ以上妊娠を望まない女性、次の出産まで期間をあけたい女性、長期にわたって避妊を望む女性に適した避妊法だということになります。それに加えて、月経血量の多いことが気になっている女性、月経血量が少なくなることを望む女性はお近くの婦人科に相談されてみては如何でしょうか。ちなみに使用を薦められないのは、妊娠または妊娠している可能性のある女性、過去3か月以内に性感染症の既往がある女性、子宮の形態や位置の異常がある女性などが挙げられています。日本で行われた臨床試験でも、装着直後に少量の出血が続く、月経周期が乱れるなどのマイナートラブルがなかったわけではありませんが、時間の経過とともにこれらの問題はほとんど消失していきます。米国、ドイツ、フィンランドをはじめとして112カ国で使用されている「ミレーナR52mg」の恩恵を日本人女性にも預かって欲しいと願わずにはおれません。

 2007年3月8日

女性自身が自分の意思で自由に調節できない“避妊の医療化”の側面が気になりますが、選択肢が広がったという意味では良いことなのかもしれません。

なお、levonorgestrel含有の膣リングによるステロイド避妊法が有望であることは、我妻堯先生が2002年の著書『リプロダクティブヘルス』の中でも触れていらっしゃいました。

リプロダクティブヘルス―グローバルな視点から性の健康をみつめる

リプロダクティブヘルス―グローバルな視点から性の健康をみつめる