リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「10代の人工中絶率、佐賀は全国1」

上記タイトルの記事が2008年5月24日付の佐賀新聞のサイトに掲載されています。

 佐賀県内の2006年度の10代の人工妊娠中絶は341件、人口1000人あたりの中絶率は14・2人で、中絶率が全国で最も高かったことが厚生労働省の保健・衛生行政業務報告で分かった。効果的な性教育が確立していないことや、間違った避妊法が若年層に広まっていることが要因とみられる。

 母体保護法都道府県への届け出が医師に義務づけられている妊娠22週未満の中絶件数を集計した。県内の14・2人は全国平均の8・7人を5・5ポイント上回り、初めて全国ワーストワンとなった。2番目に高かったのは福岡13・4人、鳥取の12・9人、高知の11・9人と続く。

 県内の年齢別件数は19歳の191件が最も多く、続いて18歳が66件、17歳が39件。15歳未満も1件あった。

 県内10代の人工妊娠中絶率は1988年度に全国平均を上回り、近年は全国10位以内で推移してきた。性教育に取り組む医療関係者は「福岡など他県から中絶に来るケースもあり実態を完全に反映した数字ではないが、厳しい現実を表した数字であることには違いない」と指摘する。

 背景には、情報誌やインターネットの普及など、若年世代に性情報があふれていることがあると考えられる。ただ、こうした状況は佐賀に限らず全国共通。県内では正しい避妊方法など性教育の実効性に疑問の声もあり、県母子保健課は「高校を卒業するまでの教育が鍵。一度きりの講演会ではなく、自分に置き換えて考え、行動するようなプログラムが必要な時期にきている」と話す。
05月24日更新

20歳未満の総数と中絶比は「平成18年度 衛生行政報告例 平成18年度」の「第62表 人工妊娠中絶件数,年齢階級・都道府県別」と「第63表 人工妊娠中絶実施率,年齢階級・都道府県別」でそれぞれ確認できます。

次の厚生労働省統計表データベースシステムで、統計表を検索できます。
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/IPPAN/ippan/scm_o_NinshouNyuuryoku

ただし、同県の20歳未満の内訳は見あたりませんでしたので、別の出所と思われます。

いずれにしても、上記でも指摘されているとおり、「性情報」があふれていながら、「性教育」がうまく機能していないことが伺われる。(高校を卒業するまでに「一度きりの講演会」では、正しい情報を伝えることは困難でしょう。)一部の保守派による“過激な”性教育バッシングによって(過激なのは性教育ではなく、性教育バッシングのほうです)性教育が行いにくくなればなるほど、「過激な性情報」が氾濫していく。

佐賀県DV総合対策センター通信 No.12(2008年2月号)では、若年世代の中絶の多くが「デートDVなどの性的暴力によるものが大半」だと見ている。この通信では、デートDVとは「交際相手への暴力」のことだと端的に説明されている。デート相手の女性が(そもそも)望んでいないセックスを強引に行うことは間違いなく暴力である。だが、もうひとつ考えられる。女性の側がセックスそのものには同意していたとしても避妊抜きでは合意していなかった場合に、男性によって避妊抜きのセックスが強引に行われるケースである。

最後の点は、沼崎一郎さん、宮崎尚子さん、森岡正博さんの論争がいろいろ考えさせられますよ――最新の森岡論文はこちらで読めます。