リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

化学的流産(chemical abortion)

この言葉が2通りに使われていることに気がついたので、メモしておきたい。

まず従来の使い方。「化学的流産」は、日本語Wikipediaの「流産」の項に次のように説明されています。(現時点)

化学的流産(Chemical abortion)

* 概念:生化学的に妊娠の成立をみた(hCGが検出された。たとえば尿中hCG測定で50U/l反応陽性)と診断されるが、超音波断層法により胎嚢などの妊娠に特有な所見が確認されず、しかも腹痛や子宮口開大などの流産徴候を伴うことなく月経様の出血をみた場合を呼ぶ。
* 症状:月経様の出血(人によっては激痛と血の塊が出てくることがある)
* 治療:経過観察

産婦人科クリニックの説明で、これを「科学的流産」と訳していたものも見かけましたが、chemicalであってscientificではないので、「化学」のほうがベターでしょう。少々奇妙な感じもするけど、この語が使われているのは「生化学的に妊娠が成立」した後の流産だから、なんですし。

上述の「奇妙な感じ」のためか、薬を使った中絶にこの語を使用(誤用?)されることもあります。RU-486などの薬を用いた人工妊娠中絶について、同じ言葉=chemical abortion(化学的中絶)が使われているのです。

ご存じの方はご存じでしょうけど、英語のabortionという言葉は、「自然流産」と「人工中絶」の両方に使われるので、文脈から判断する必要がありますね。ご注意を。

……と、ここまで書いてから、ふと気がついた。RU-486等の薬品を用いた中絶は胎盤形成を妨げるわけなので、「化学的流産」と同じ結果を導く行為なんだよね。そうだとすれば、自然なchemical abortionと人為的なchemical abortionが存在するということになる。

それでも「自然化学的流産」と「人工化学的中絶」では、あまりに紛らわしいので、その使用を推奨しようとは思いませんが。