リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

他に手段がなければ……

世界各地の中絶が規制されている国々で、インターネットを通じて中絶薬を購入する女性たちの健康を心配するBBCのニュースが各所で話題になっている。以下、冒頭を紹介する。

Women 'using web for abortions'

By Jane Dreaper
Health correspondent, BBC News

Computer mouse

There are concerns about abortion on the web

Some women in countries where abortion is restricted are using the internet to buy medication enabling them to abort a pregnancy at home, the BBC has learned.

Women in Northern Ireland and over 70 countries with restrictions have used one of the main websites, Women on Web.

A British Journal of Obstetrics and Gynaecology review of 400 customers found nearly 11% had needed a surgical procedure after taking the medication.

The website says it can help reduce the problems linked with unsafe abortions.

つづきはこちらでどうぞ。

北アイルランドやブラジルなど中絶規制の厳しい70ヵ国以上の女性たちが、ネットを通じて中絶薬を入手し、自分で服用することで、11%が外科処置を受けるはめになっているということが問題視されているが、一部には「それでも選択肢が全くないよりはマシ」との意見も出ているようだ。

コメンティング・コミュニティJezebelの"Ordering" An Abortion Online: The Choice When You Don't Really Have A Choiceと題したページでは、この件に関する様々な女性たちの率直な感想が寄せられていて、なかなか興味深い。

なお、このニュースで問題になっている"Women on Web"のほうにも、世界中の女性(男性も若干ある)の自らの中絶体験に関するコメントが集められている。母国語で書かれたメッセージは分からないが、母国語に関わらず英語でコメントを寄せている人も多い。北欧から南米まで様々な地域の様々な女性たちのメッセージを読んでいると、中絶経験というものが非常に個別的であるのと同時に、意外なほど共通した側面もあることに気づかせられる。

かつてRosalind P Petcheskyを初めとするIRRRAG(国際リプロダクティヴ・ライツ研究行動グループ)の研究者たちが、リプロダクティヴ・ライツに関する女性たち自身の主観を調査したことがある。“リプロダクティヴ・ライツ”が本当に女性たち自身の“権利意識”に即したものであるかどうか、この観念がユニヴァーサルなものであるかどうかを検証することが目的だった。ナイジェリア、フィリピン、ブラジル、エジプト、メキシコ、マレーシア、アメリカの7ヵ国の女性たちを対象とした大規模なインタビュー調査の結果、調査者たちは各国の社会的、制度的、法的障害の有無にかかわらず、これらの国々の女性たちに共通する8つの特徴を見出したのだが、その第一が、「自らの生殖力、妊娠、避妊の使用を自分でコントロールすることへの“エンタイトルメント感覚”」だった。(エンタイトルメント感覚とは、法的に保障されているかどうかとは無関係に、女性たち自身が何かについて「自分に権利がある」と感じていることをいう。)

ちなみに、日本の場合は、医師の処方を受けずにネットを通じたこの薬(ミフェプリストン、RU486とも)の個人輸入することは禁止されている。