リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬無許可販売で薬事法違反

下記を本日付のNHKニュースで見つけました。

中絶薬無許可販売 中国人逮捕

日本では承認されていない妊娠中絶薬などを許可を受けずに販売したとして、東京の中国人の夫婦が薬事法違反の疑いで逮捕されました。警視庁は中国人向けの新聞で宣伝してこの5年間でおよそ3500人に売りさばいていたとみて調べています。

逮捕されたのは、中国人で東京・葛飾区の会社員、姜広鋒容疑者(27)と妻の孟寧容疑者(30)です。警視庁の調べによりますと、2人はことし1月から今月にかけて、医薬品を販売する許可を受けずに中国製の錠剤の妊娠中絶薬や男性向けの性機能改善薬などをおよそ9万円で中国人の大学生らあわせて6人に販売したなどとして薬事法違反の疑いが持たれています。調べに対しいずれも容疑を認めているということです。妊娠中絶薬は海外から個人輸入した女性が子宮から大量に出血するケースが報告されていて、日本では医薬品として承認されていませんが、2人は中国人向けの新聞に広告を出し、1箱3000円で郵送などで販売していたということです。警視庁はこの5年間に中国人を中心におよそ3500人に妊娠中絶薬などを売りさばき5000万円を得ていたとみて調べています。

(8月27日 12時28分)

これってやっぱり息隠(ミフェプリストン)なんでしょうね……? 新聞では報じてないみたいですが。

それにしても、ミフェで「大量出血」という話は、どう考えてもマユツバです。「大量」というのは相対的なものですよね。素人が考えても、ミフェによる出血が通常の月経血より多いのは当然のように思えますし。その薬を使うことで、どういうことになるのか、ちゃんと理解せずに使った人が、驚いて助けを求めたんじゃないのかなぁ。もし輸血が必要なくらいの異常事態になっていたとすれば、そのように「警告」されているはずですし、そんなに危機的な状況ではなかったんじゃないか……とも疑われます。きちんと情報提供とインフォームド・コンセントがあった上で使っていたら、「これくらいで当然」と思っていた程度の量だったんじゃないのかなぁ??

もうひとつ気になったのは、「1箱3000円」という話。そんな値段で日本で売って儲けが出るくらい中国では安いの!? いくら「ひとりっこ政策」の国だと言っても……うーん、今の日本の中絶費用って、どんなに安くても数万円でしょう? 

単に安ければいいと言いたいわけじゃありません。それでも、日本って、中絶のコストばかりではなく、避妊のコストも他の国に比べてかなり高いでしょう? 健康保険がきく国もあるというのに……日本ではすべて自前。一方で、避妊についても、中絶についても、きちんと情報提供がなく、選択肢もきちんと与えられていない。それがどういうものなのか、もし使ったらどうなる可能性があるのか……ということが、ちゃんと教えられることなく、「大量出血」だとか「副作用」といった」言葉で漠然と、そしてさりげなく、「脅し」をかけることで自発的に「敬遠」するように仕向けられている……ようにも見える。

人間にとってリプロダクション(生殖)とは何なのか、生殖をコントロールするということは、個人にとっていったいどういう意味があるのか……根本から考え直す必要があるんじゃないでしょうか。そのためには事実が必要です。きちんとエヴィデンスを添えて選択肢を提示した上で、当事者に選ばせる……日本にも、そういう仕組みがほしいです。