リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「女性と健康」に関する北京会議行動綱領

ぼやぼやしているうちに、もはや明日は金沢で開く研究会が来てしまいました。あわてて資料を作っているところです。第4回世界女性会議(北京会議)の行動綱領から、リプロに関連する部分(総理府仮訳)を抜粋したので、こちらにも載せておきます。

第IV章 戦略目標及び行動
C 女性と健康**1

89.  女性は,可能な限り最高水準の心身の健康を享受する権利を有する。この権利の享受は,女性の人生,安寧及び公私双方の生活のすべての分野へ参加する女性の能力にとって,きわめて重大である。健康とは,身体的,精神的及び社会的に安寧な状態であり,単に病気や病弱でないことではない。女性の健康は感情的,社会的及び身体的安寧を含み,生物学のみならず,女性の生活の社会的,政治的及び経済的状況によって決定される。しかし,大多数の女性は健康と安寧に恵まれていない。女性の可能な限り最高水準の健康の達成を阻む主な障害は,男女間の不平等とともに,異なった地理上の地域,社会階級,先住民グループ及び民族グループの女性間における不平等である。国内及び国際会議において,女性は,全ライフサイクルを通じて最善の健康を達成するためには,家族的責任の分担を含む平等,開発及び平和が必要条件であることを強調してきた。

90.  女性にとって,小児期の病気,栄養不良,貧血,下痢性の病気,伝染病,マラリアその他の熱帯病,並びにとりわけ結核の予防及び治療のためのプライマリー・ヘルスサービス(基礎的保健サービス)を含む基本的保健資源へのアクセス及び利用が一様でなく,不平等である。女性の健康の保護,推進及び維持の機会もまた,一様でなく不平等である。多くの途上国では,産科救急サービスの欠如も特別な問題になっている。保健政策及び計画は往々にしてジェンダーに関する固定観念をいつまでも残し,女性間の社会経済的な不均衡及びその他の相違を考慮できず,また,自らの健康に関する女性の自律の欠如を十分に斟酌しないこともあり得る。女性の健康は,保健制度におけるジェンダーに基づく偏見と女性に対する不十分かつ不適切な医療サービスの提供によっても影響を被っている。

91.  多くの国,特に開発途上国,わけても後発開発途上国では,公衆衛生支出の減少及び,ある場合には,構造調整が公衆衛生制度の質の低下の一因となっている。それに加え,料金が手頃な保健医療への普遍的アクセスに対する適切な保障のないまま保健制度を民営化しているために,保健医療がさらに利用しにくくなっている。この状況は少女及び女性の健康に直接,影響を及ぼすだけでなく,不均衡に重い責任を女性に負わせ,家庭及び地域社会内におけるものを含む,女性のいくつもの役割は往々にして認知されず,それゆえに,彼らは必要な社会的,心理的及び経済的支援を受けていない。

92.  最高水準の健康を享受する女性の権利は,全ライフサイクルを通じて男性と平等に保障されなければならない。女性は男性と同じ健康状態の多くに影響されるが,その経験の仕方は男性と異なっている。女性の間に広がる貧困と経済的依存,暴力被害,女性及び少女に対する否定的な態度,人種差別その他の形態の差別,多くの女性の自らの性と生殖に関する生活に対する限られた権限,並びに意思決定における影響力の欠如は,女性の健康に悪影響を及ぼしている社会の現実である。特に農村地域及び都市の貧困地域における,食糧不足,家庭内での少女及び女性への食糧配分の不公平,安全な飲み水,衛生設備及び燃料補給への不十分なアクセス,並びに不十分な住宅事情がすべて,女性とその家族に過重な負担を負わせ,彼らの健康に悪影響を与えている。良好な健康は生産的で充足した生活を送るために不可欠であり,自らの健康のあらゆる局面,特に自らの出産数をコントロールするすべての女性の権利は,彼らのエンパワーメントの基礎である。

93.  しばしば息子志向から起こる,栄養及び保健サービスにおける少女への差別は,彼らの現在及び将来の健康及び安寧を危険にさらす。少女を若年の結婚,妊娠及び出産に追い込み,女性性器の切除など有害な習慣にさらす状況は,健康上の重大な危険を引き起こす。思春期の少女は成熟する際に欠かせない保健及び栄養サービスへのアクセスを必要としているにもかかわらず,それを持たない場合があまりにも多い。思春期の若者のためのカウンセリング及び性に関する健康(セクシュアル・ヘルス)とリプロダクティブ・ヘルス情報及びサービスへのアクセスは,依然として不十分もしくは完全に欠如しており,プライバシー,秘密保持,敬意及びインフォームド・コンセント(医師等の説明の下の同意)に対する若い女性の権利は,多くの場合,顧慮されない。思春期の少女は,性的虐待,暴力及び売春行為に対し,また,保護されない早熟なうちの性的関係の結果に対して,生物学的にも社会心理学的にも少年より傷つきやすい。若年で性経験を持つ傾向は,情報及びサービスの欠如と相まって,望まず,かつ早すぎる妊娠,HIV感染その他の性感染症並びに危険な妊娠中絶を増加する。若年出産は,世界のすべての地域において相変わらず女性の教育的,経済的及び社会的地位の向上を阻む障害になっている。全体として,若い女性にとって,若年結婚及び早くに母親になることは,教育及び雇用機会をひどく短縮しかねず,自分自身と子どもの生活の質に長期的な悪影響を及ぼすおそれがある。若い男性は,女性の自己決定を尊重し,セクシュアリティーと生殖に関する事柄において女性と責任を分担するように教育されていないことが多い。94  リプロダクティブ・ヘルスとは,人間の生殖システム,その機能と(活動)過程のすべての側面において,単に疾病,障害がないというばかりでなく,身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態にあることを指す。したがって,リプロダクティブ・ヘルスは,人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ,生殖能力をもち,子どもを産むか産まないか,いつ産むか,何人産むかを決める自由をもつことを意味する。この最後の条件で示唆されるのは,男女とも自ら選択した安全かつ効果的で,経済的にも無理がなく,受け入れやすい家族計画の方法,ならびに法に反しない他の出生調節の方法についての情報を得,その方法を利用する権利,および,女性が安全に妊娠・出産でき,またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる。上記のリプロダクティブ・ヘルスの定義に則り,リプロダクティブ・ヘルスケアは,リプロダクティブ・ヘルスに関わる諸問題の予防,解決を通して,リプロダクティブ・ヘルスとその良好な状態に寄与する一連の方法,技術,サービスの総体と定義される。リプロダクティブ・ヘルスは,個人の生と個人的人間関係の高揚を目的とする性に関する健康も含み,単に生殖と性感染症に関連するカウンセリングとケアにとどまるものではない。

95  上記の定義を念頭に置くと,リプロダクティブ・ライツは,国内法,人権に関する国際文書,ならびに国連で合意したその他関連文書ですでに認められた人権の一部をなす。これらの権利は,すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数,出産間隔,ならびに出産する時を責任をもって自由に決定でき,そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利,ならびに最高水準の性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルスを得る権利を認めることにより成立している。その権利には,人権に関する文書にうたわれているように,差別,強制,暴力を受けることなく,生殖に関する決定を行える権利も含まれる。この権利を行使するにあたっては,現在の子どもと将来生まれてくる子どものニーズおよび地域社会に対する責任を考慮に入れなければならない。すべての人々がこれらの権利を責任を持って行使できるよう推進することが,家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルスの分野において政府および,地域が支援する政策とプログラムの根底になければならない。このような取組みの一環として,相互に尊敬しあう対等な男女関係を促進し,特に思春期の若者が自分のセクシュアリティに積極的に,かつ責任を持って対処できるよう,教育とサービスのニーズを満たすことに最大の関心を払わなければならない。世界の多くの人々は,以下のような諸要因からリプロダクティブ・ヘルスを享受できないでいる。すなわち,人間のセクシュアリティに関する不十分な知識,リプロダクティブ・ヘルスについての不適切または質の低い情報とサービス,危険性の高い性行動の蔓延,差別的な社会慣習,女性と少女に対する否定的な態度,多くの女性と少女が自らの人生の中の性と生殖に関し限られた権限しか持たないことである。思春期の若者は特に弱い立場にある。これは大部分の国では情報と関連サービスが不足しているためである。高齢の男女は性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルスについて特有の問題を抱えているが,十分な対応がなされていない場合が多い。

96  女性の人権には,強制,差別及び暴力のない性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを含む,自らのセクシュアリティに関する事柄を管理し,それらについて自由かつ責任ある決定を行う権利が含まれる。全人格への全面的な敬意を含む,性的関係及び性と生殖に関する事柄における女性と男性の平等な関係には,相互の尊重と同意,及び性行動とその結果に対する責任の共有が必要である。

97  さらに女性は,セクシュアリティと生殖に関する保健ニーズへの対応の不十分及びサービスの欠如のために,特別な健康上の危機にさらされている。妊娠及び出産に関連した合併症は,開発途上世界の多くの地域で,出産可能年齢の女性の死亡及び罹病の主要原因のひとつである。経済が移行期のいくつかの国々でも,同様の問題がある程度存在する。安全でない妊娠中絶は多数の女性の生命を脅かし,最も高い危険を被るのが主として最も貧しく最も若い層であることから,深刻な公衆衛生問題になっている。これらの死亡,健康問題及び傷害の大半は,男女とも自ら選択した安全かつ効果的で,経済的にも無理がなく,受け入れやすい家族計画の方法,ならびに法に反しない他の出生調節の方法についての情報を得,その方法を利用する権利,および,女性が安全に妊娠・出産でき,またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利を認め,安全で効果的な家族計画手段及び産科救急医療を含む適切な保健サービスへと改善されたアクセスを通して予防できる。これらの問題及び手段には,カイロの「国際人口・開発会議」(ICPD)(注14)の報告に基づき,特に同会議の「行動計画」の中の関連パラグラフを参考にして,取り組むべきである。殆どの国では,女性のリプロダクティブ・ライツの無視が,教育及び経済的・政治的エンパワーメントの機会を含む,公私の生活における女性の機会を著しく制限している。自らの出産に対する女性の管理能力は,その他の権利の享受にとって重要な基礎をなす。性と生殖に関わる行動に関する事柄における女性と男性による責任の共有もまた,女性の健康の向上にとって不可欠である。

他に今回は、イギリスの産婦人科学会ガイドラインWHOのリプロ・ヘルスに関するマニュアルを紹介する予定です。

*1:ローマ・カトリック法王庁は,この節に関して全般的に留保することを表明した。この留保は1995年9月14日の第4回世界女性会議の主要委員会第4回会合でのローマ・カトリック法王庁の代表者が行った声明に述べられたところにより解釈されるものとする。
(訳注) リプロダクティブ・ヘルス,リプロダクティブ・ライツの訳語については,様々な議論があるところ,外務省監訳「国際人口・開発会議『行動計画』」((財)世界の動き社,1996年)にあわせ,カタカナ表記することとした。