以下は、本日付河北新報のサイトにあった記事です。タイトルは、「心に寄り添い共に道探る 妊娠・中絶に悩む女性支援」。次のような内容です。
若者の生き方や性の問題に、正面から向き合う女性たちが仙台にいる。予期せぬ妊娠に悩む若者や中絶の記憶に苦しむ女性に寄り添い、共に道を探る。活動を支えるのは「命を大切にしたい」という思いだ。(夕刊編集部・鈴木美智代)
「赤ちゃんなんて考えてなかったよ…っていう状況で妊娠したことが分かったらどうしますか?」「デートDV(ドメスティックバイオレンス)って自分には関係ない?」
NPOジャパンアライヴのフリーペーパー。妊娠した時に考えなければならないことや、交際相手から受ける待遇がDVかどうかなど、性や人間関係の話題を取り上げる。
「3号まで出し、イベントなどで配布しました。生徒に配りたいという先生からの問い合わせもあります」。東北事務局のローレンス綾子さん(39)=泉区=が話す。
若者の性の問題に焦点を当て、フリーペーパーのほかラジオ番組などでも情報を発信、性教育にも力を入れる。スタッフは全国に11人。全員クリスチャンだ。
県内にはもう一人のスタッフ、ジェンキンズ久美子さん(34)=青葉区=と、団体代表で米国出身の宣教師テディ・サーカさん(62)=宮城県七ケ浜町=もいる。団体の本部は栃木県佐野市にあるが、主要メンバーが活動する仙台は重要な拠点だ。
ホームページには1日約500件のアクセスがある。妊娠や中絶に関する相談窓口を設けており、10〜20代の若者を中心に毎日のように相談のメールが届く。
「中絶を選ぶ人も、本当は迷っている。別の選択肢があることを伝え、一緒に考える」とローレンスさんは言う。
別の選択肢とは、行政などの支援を受けてシングルマザーの道を選ぶことや、養子縁組など。中絶を含め、どんな場合もサポートを続ける。
「産むかどうかは、最終的には本人の決断。中絶反対と押し付けたりはしない。ただ、必要な情報を基に、納得のいく結論を出してほしい」
(後略)
さて、ここで言われている「必要な情報」って何だろう? このグループのサイトにアクセスしたとたん、わたしの目にまず飛び込んできたのは、「10週の胎児の足」をかたどったピン……あれ? ここはライフ派のサイトだったのか、と思った。うーん、どうだろう。これって偏りがないかな?
上記グループでは、「中絶」のサポートもしているようだ。それはいい。でも、「中絶」のサポートと言っても、いろいろあるからなぁ……。一般的に言って、「情報」が偏っていては「決断」を操作することになりかねない。また、さまざまな情報を得て、当人が自分の事情を様々な角度から考え抜いた上で、「産まない」と決断した場合には、それを尊重して支えていく必要もあるはずだ。真に「妊娠・中絶に悩む女性を支援する」ためには、「産む」と決めたらそのサポートを、「産まない」と決めたらそのサポートをと、両面で支援する必要がある。
これまでに相談に応じたのは163人。妊娠のほか、中絶した女性が罪悪感など負の感情に襲われる「人工中絶手術後ストレス障害」の問題も深刻で、相談が増えている。
上記で言うのは、いわゆるPAS(ポストアボーションシンドローム)のことだろうが、PASそのものがプロライフから出てきた概念であることにも注意を喚起しておきたい。彼女の問題を深刻にしているのは、彼女の中絶に対する周囲の視線かもしれない。
「望まれた妊娠→出産」に価値が置かれている社会において、「望まれない妊娠→中絶」を経た女性が負の感情におそわれること自体は、全くもって不思議ではない。しかし、その「負の感情」をすべて「胎児殺しの罪」と結び付けるのはひとつの見方に過ぎない。
実際のところその「負の感情」は、さまざまな事情の結果であるはずだ。妊娠に至った性交への後悔、相手の男性との関係破綻、妊娠や子育てへのあこがれと失意、今後、妊娠できるだろうかといった自分の身体への不安……等々が絡み合って、苦悩や悲嘆が形成されているはずである。
中絶を推奨するつもりは全くないが、人によって、場合によっては、中絶を選ぶしかないときもあるだろう。それが最善の選択である場合もきっとある。となると、常に一律に「中絶=罪」と位置づけた上でのカウンセリングは、当の女性の苦しみを緩和するどころか増強する恐れもある。各々の女性は、自分の「決断」について真に「納得」するためには、単に「罪を悔い改めよ」だけでは終わらないはずだ。
そこで、もし、今、中絶についてどう考えるかで悩んでいたり、中絶をめぐる苦しみで助けを求めていたりして、偶然、このブログを見つけた方がいたら、デュ・ピュイ&ドヴィチの『癒しのカウンセリング―中絶からの心の回復』をぜひ紹介したい。自分のもやもやした思いを整理し、「納得」を得て次の一歩を踏み出すために役立つ本だと思います。
- 作者: キャンダスデュ・ピュイ,デイナドヴィチ,Candace De Puy,Dana Dovitch,片山亜紀
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2003/01/01
- メディア: 単行本
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それと、手前味噌ながら、「On Abortion 中絶について考えるページ」にも関連情報があるので、よかったら見てください。