リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

スリランカのリプロ事情

この週末、JICAのプログラムでスリランカから来日しているドクターの一泊ホームステイをお引き受けした。

ふたを開けてみたら、なんと彼女は産科医で、家族計画も仕事の一部だという。さっそくスリランカのリプロ事情を伺った。

スリランカは中絶が禁止されている。「ネットでみたら、実際にはけっこう多いみたいですね」と言ったら、illegal abortionがあること自体は認めたが、彼女自身は中絶にはノータッチだそうだ。(彼女は自らをob&gynとは言わず、obstetricianと言っていた。)

既婚者で子どもも2人いる30代半ばのこのドクターは、国の公衆衛生部門で働いている。そんな彼女が日本のリプロ事情を知って一番驚いたのは、「シングルマザーがいないこと」だとか。スリランカでは、「母親になるのは誇らしいこと」なので、独身でも妊娠したら多くの女性が産むのだそうだ。「だれがサポートするの?」と聞いたら、たいていは産んだ女性の親だという。彼女個人のバイヤスを割り引いたとしても、「未婚で妊娠したのは恥ずかしいこと」だという観念はほとんどなさそうだった。

だからといって、さほど多産の国ではなく、出生率は人口置換水準とんとんの2人強程度。国が無料で避妊を提供しており、その多くは「ループ(loop)」だという。旧式のIUD、おそらく日本で言う「リング」のことだと思いながら聞いていた。彼女いわく、「ループなら1個30円で、10年は有効。その30円は政府が支払うので、希望するなら、国民は無料で利用できる」。日本の避妊ピルと中絶の料金を教えたら、「どうして日本政府は1人30円ですませないのか?」と目を丸くしていた。

その高い料金を誰が払い、誰が受け取っているのか……等々、話は尽きなかった。海外事情を知れば知るほど、つくづく日本という国のおかしさを痛感させられる。