リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

女性医師減少の予測

本日付の北陸中日新聞朝刊に「病院出産、10年後に20%減 産婦人科医会が推計」という記事が載りました。

病院勤務の産科医の就労環境を改善しなければ、10年後に病院(20床以上)で扱える出産数は、2009年の約54万件から約20%減る可能性があるとの推計を、日本産婦人医会常務理事の中井章人・日本医科大教授がまとめた。

その理由というのが驚きで、なんと「女性医師が子育てなどのために、労働環境が過酷な出産診療から離れると予測される」ためだというのです! 

同医会の09年8月の全国調査では、女性産婦人科医の約3割が、自分自身が妊娠・育児中だった。その一方で、病院勤務医の勤務時間や当直回数はここ1、2年ほとんど変わらなかった。

上記の「育児中」というのが、いったい何歳の子どもまでを入れているのかは分からないけど、仮に中学生までだとしても、いったんひとりでも妊娠・出産したら10数年間以上は「妊娠・育児中」に該当するわけだから、まあ、不思議な数値ではないでしょう。

そのため中井教授は、「勤務形態の改善がなければ出産診療に関わる女性医師が減り、10年後には病院勤務の産科医が25%減少。病院の出産受入件数は約41万件に落ち込む」と推計しているとのこと。

遅ればせながら最近読んだ小説『ノーフォールト』に描かれていた女性産科医の姿がだぶってきます。医療訴訟絡みの話だけど、背景として多忙すぎる産婦人科医の問題が描かれています。

そういえば、同じ北陸中日新聞で、少し前に院内助産院の記事が載っていましたっけ。産むのも産まないのも産ませるのも病気の治療も、同じ女性の身体が対象だというだけで、いっしょくたに引き受けねばならない産婦人科医療のあり方そのものを考え直さなければならない時が来ているのかもしれません。

Memo:日本医師会こちらのサイトで「勤務医の過酷な労働条件:女性医師の立場から」という女性脳外科医下田仁恵さんの報告を読めます。産科医とは違いますが、子育て中勤務医の実態を垣間見ることができます。

追記です:こちら日本医科大学の中井章人先生による報告がありました。タイトルは、「産婦人科医師の就労状況と未来予想図」です。