リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

『少子化白書』から『子ども・子育て白書』へ

以下、時事通信が報じていました。タイトルは「社会全体で育児支援を=子ども手当の重要性強調−10年版白書」です。

 政府は25日午前の閣議で、少子化の現状と対策をまとめた「子ども・子育て白書」を決定した。2008年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子供の数の推計値)は1.37と3年連続で上昇したが、「欧米諸国に比べると低い」と指摘。子ども手当の支給など、社会全体で育児を支える制度の重要性を強調している。
 白書は、30〜34歳の男性非正規社員の有配偶者率が30.2%で、正社員の59.6%の半分にとどまっていることから、「就労形態の違いにより家庭を持てる割合が大きく異なっている」と分析。若年層の所得の伸び悩みや共働きの増加などで、育児を取り巻く環境が悪化しているとの懸念を示している。
 その上で「これまでの少子化対策の視点からは、不安や将来への希望に応える政策を生みだすことができなかった」と説明。10年1月に政府が策定した「子ども・子育てビジョン」に基づき、子ども手当などの経済的支援と保育サービスの充実を組み合わせた実効的な育児支援を行うべきだとしている。(2010/05/25-09:11)

こちらにある上記白書の概要によれば、婚姻の希望(9割が希望)と、子どもの希望数(2人)が叶えば、出生率は1.75まで上げうるとのこと。だけど、たとえそういう「理想のシナリオ」どおりだったとしても、人口減少は免れ得ないということだよね。

なお、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(オンラインで見つけられた最新のものが2006年6月発表の第13回の結果)を見ると、平均理想子ども数(2.5人)と平均予定子ども数(2.0人)にもギャップがある。その最大の理由が「お金がかかりすぎる」。つまり、経済的理由が「望んでいても産めない」最大の要因になっている。

日本は中絶も経済的理由が圧倒的に多いわけだし、結局、この国は所得の再分配に失敗したということかもしれない。つまるところ、工業製品は大量生産できても、リプロダクションは家庭内で手作り(?)する他はないのだもの。もっと均一に所得を再分配すべきだったのに、一部にばかり富を集中させすぎたのが失敗の始まりなのでは? 今さら子ども手当とか、産科医療補償金とか、検診の無料化とか小金をばらまいても手遅れのような気がする。そういうのでは、女性が働けなくなる(パート化覚悟でいったん退職する)分の損失とか、成人までの育児資金などには全然足りないのだし……。