リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本のがん健診

先日、性教協石川セミナーで購入してきた季刊『セクシュアリティ』42号「生と性のデータ集II」(p.42-46)にHPVワクチンや子宮頸がんとの関連でタイムリーな情報があったので抜粋して紹介する。

季刊 SEXUALITY (セクシュアリティ) 2009年 07月号 [雑誌]

季刊 SEXUALITY (セクシュアリティ) 2009年 07月号 [雑誌]

事実

  • 子宮頸がんの罹患率は20代半ばから急増し、30代半ばに人口10万人に対し22人とピークを迎える。30代半ばではこのうち2人が死亡するが、40代までに死亡率は倍増する。
  • 子宮がんは女性の疾患だがHPVの運び屋役は男性であるのに、男性は接種対象外とされている。
  • 学校での接種が摂取率上昇に貢献するし、若い人ほど免疫獲得力があるのに、日本では学校でのHPVワクチン接種は困難だと言われている。
  • 政府によるHPVワクチン接種公費助成実施国は、ヨーロッパ19か国、北米2か国、中南米3か国、アジア太平洋圏ではオーストラリア、ニュージーランドの2か国のみ。
  • 1983年から老人保健法による保険事業の一環として子宮がん検診が行われるようになった。
  • 日本の子宮がん検診受診率は対象者の2割程度で、OECD各国と比して最低である。(他の国々は最も高いアメリカで8割以上、低いオーストリアアイルランド、ベルギーでも6割前後である。)
  • 日本は医師数、医療費ともに先進7か国の中で最低。


考察

  • 子宮がんは早期発見、早期治療で完治するとも言われており、また、たとえワクチンを打っていても、ワクチンが効くタイプのがんしか予防できないことを考えても、まずは検診受診率を高めることが最も重要ではないだろうか。
  • もしHPVワクチンを接種するなら、男性も含めて学校で全員接種することも検討すべきであろう。


感想
★お金がなくて(!!)このところ定期購読できていなかったけど、やっぱりいい雑誌ですね。バックナンバーを買わねば……。

★関連事項として気になったこと:日本ではHIV感染者もエイズ患者も増加している。にも関わらず、エイズ関連予算は減少の一途を辿っている。一方、最近は地方のニュースなどでHIV感染者やエイズ患者が「過去最多」といった報道をしばしば見かける。「感染爆発」してからでは手を付けられなくなる。若年層のコンドーム離れも言われるなか、なおいっそうの総合的な性感染症対策が望まれる。


予断だが、現在、普天間の件をきっかけに民主党叩きが激しくなっている。しかし、ことリプロダクティヴ・ヘルスの面から見ると、長年にかけて現在の医療体制を築いてきた自民党の責任は大きいということを、忘れるわけにはいかない。ついでに言うと、厚生省が厚労省になった頃から、「労働者としての国民」以外の健康は、ますますないがしろにされるようになったような気がしてならない。