リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日仏会館で発表

フランス人研究者Christine Levyさんのお招きで、次の研究会で発表させていただきました。

日仏会館 研究センター
2010年7月22日(木)のイベント
研究会:日本近現代におけるフェミニズムと母性
[ 研究セミナー(要参加申込) ]

使用言語:日本語 (通訳なし)
日時: 2010年07月22日(木) 16:00 - 19:00
場所: 601会議室

* PDF版プログラム
* 主催:フランス外務省・国立科学研究センター在外共同研究所 UMIFRE 19(日仏会館フランス事務所)
* 協賛:東アジア文明研究所(CRCAO/CNRS UMR 8155)

この日の発表は次の3人でした。

  1. 望月雅和さん「日本における母性と子育て志向の論考〜山川菊枝の子育て思考を契機として」
  1. 塚原久美「中絶、母性、女の権利」
  1. 中須美子さん「婚外子に対する住民票・戸籍続柄裁判を闘ったその思いと婚外子差別の現状」

一見すると全然異なるこの3人の話が絶妙に絡み合って、青鞜の時代と現代とを結ぶ女の問題が立ち上がってくる感がありました。

望月さんの発表は、ともすれば「社会学者」のレッテルを貼られて終わってしまいがちな山川菊枝の深さと斬新さを知り、興味深かったです。

私へのご依頼は、もともと今書いている本の内容の一部=「安田皐月の小説『獄中の女から男へ』における母性批判、1970年代のリブの女性たちとの違い」だったのですが、その話の前提を話すために上記にタイトルを変えました。

長年、重要な裁判の原告として闘ってこられた田中さんのお話は重みがありました。とても印象的だったのは、「世論」を理由に婚外子差別を温存させようとする日本政府に対し、国連の委員たちが「(間違った)世論を変えることが政府の仕事だ」と批判したという話です。リプロでも全く同様のことが言えますからね。

結果的に、なかなか意義深い議論になりました。「母性」とはmotherhoodだけではなくmaternityでもあるということ、日本語の「母性」は自己犠牲に通じるけど、たとえばフランス人の目からすれば「母性」にはもっと積極的な「創造」の意味合いが色濃くあることなどを考えさせられました。今後の共同研究にも発展しそうで楽しみです。

事後談:おまけですが、大きなガラス窓から恵比寿ガーデンプレイスを見張らせる宿泊所もとても快適でした! ただし、その見晴らしをなぐさみに、人と会ってない時間はずっと缶詰仕事をしてただけですが……。