リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ついに許可される? モーニングアフターピル

意図せぬ妊娠の恐れがある性行為の直後に飲むことで妊娠を防止する緊急避妊薬(一般には「モーニング・アフター・ピル」と呼ばれることも)の承認を巡って、厚労省で議論が出ているようです。

11月本日付の毎日jpが「緊急避妊薬:承認へ一歩 厚労省部会が意見」の見出しで報じています。

緊急避妊薬:承認へ一歩 厚労省部会が意見

2010年11月26日 23時21分

 避妊が失敗した際などに性行為後に服用し、望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」について、厚生労働省の医薬品第1部会は26日、製造販売を承認してよいとの意見をまとめた。事前に計画的に飲む低用量ピルと違い、事後に飲む避妊薬は国内で承認されていなかった。

 性行為後の避妊には、安易な利用を招くなどとする批判がある一方、レイプ被害者への緊急対応や人工妊娠中絶の回避に有用だとして医師らからは国内導入の要望が出ていた。厚労省は12月上旬まで一般から意見募集をした上で、上部組織の薬事分科会でさらに議論し、結論を出す。

 この薬は製薬会社「そーせい」(東京)が昨年9月に承認申請したレボノルゲストレル(販売名ノルレボ錠)。医師の処方を受け、性行為後72時間以内に1回飲む。排卵を抑制したり、受精や着床を阻むなどして妊娠を回避しているとされる。成功率は80%以上。8月現在、48カ国で承認されている。これまで国内では、本来は緊急避妊以外に使われる薬を12時間間隔で2回飲む方法があった。

以下、少し説明を加えます。

緊急避妊薬を用いた緊急避妊法(Emergency Contraception)とは、避妊失敗などの非常時に使用される避妊方法を意味し、専門家のあいだではECと略されることもあります。北米ではレボノスゲストレル1.5mgを含むPlan Bという緊急避妊用の専門薬パックが店頭販売されており、日本で従来行われていたような混合型経口避妊薬で代用する方法は、専門薬に比べて吐き気や嘔吐などの副作用が強くなると言われています。

ECは「妊娠の成立を防ぐのが目的で、流産させる方法ではない」と定義され(我妻 [2002:83])、「性交後避妊法」、「事後避妊法」、「モーニングアフター」などとも呼ばれます(北村 [1999:122])。緊急避妊法には、大きく分けてホルモン剤を服用する方法とIUDを使う方法 がありますが、今回、承認を巡る議論が出ているのは前者の方法に使う薬です。(IUDのほうは現行法に触れないのですが、どれだけ行われているか、実態は不明です。)

従来のホルモン剤を使用(事後避妊薬ではない薬で代用)する事後避妊では、妊娠の危険のある性交後72時間以内に1〜2錠、さらにその12時間後に1〜2錠、緊急避妊に適した中用量ピルを服用し、排卵を止めたり、子宮内膜の状態を変えたりすることによって妊娠を防ぐものでした。この場合、通常の避妊ピルよりもはるかに多量のホルモンを投与することになるため、一時的な副作用が生じることがありました。つまり、専門薬が承認されることで、ホルモン投与が最小限に抑えられ、扶育作用が減り、ECを必要とする女性のリプロダクティヴ・ヘルスは改善されることになります。

一方で怖いのは、あくまでも「緊急時」にのみ使用すべきこの薬を常用し、(特に男性が)避妊を怠るようになることです。何よりも、緊急避妊薬は他の経口避妊薬に増して女性の身体に負担が高いものです。緊急避妊薬を解禁するなら、それに伴い、通常の避妊ピルのほうの値段をぐっと引き下げてアクセスしやすいものにするとか、コンドームを無料配布するといった手段も必要ではないでしょうか。