リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

望まない妊娠を防止するために

第5回男女の生活と意識に関する調査の結果がまとめられたようです。こちらのページで「速報」を見ることができます。調査内容は多岐にわたりますが:

セックスレス化の進行については、毎日新聞jpが「セックスレス:夫婦の4割が…「面倒」「出産後何となく」」(2011,01.13)という記事にまとめています。

妊娠中絶に関する部分については、産経MSNが「日本人女性の15%超が中絶経験 繰り返す女性も増加」(2011.1.27 10:50)という記事にまとめています。

以下、この産経MSNの記事から一部引用して解説します。

中絶したことがある女性は135人(15・5%)。このうち48人(35・6%)は2回以上の中絶経験があり、5回以上も3人いた。2008年の前回調査に比べ、中絶経験率(前回14・9%)、反復中絶率(同25・4%)ともに高くなった。

年齢が上がるに従い中絶率が上がっているという点を見落としてはなりません。若い人ばかりが安易に中絶を繰り返していると見るのは間違いです。

 中絶の理由で最も多かったのは「相手と結婚していないので産めない」で27・4%。次いで「経済的な余裕がない」13・3%、「相手との将来を描けない」11・9%、「仕事・学業を中断したくない」7・4%−など。

「結婚していないので産めない」という答えには、「(この相手とはあるいは今は)結婚したくない」、「結婚したくてもできない(どちらかが既婚である)」といったケースばかりではなく、「結婚して相手に頼らない限り、経済的その他の負担を一人で負って産み育てられない」という判断も含まれているでしょう。また、相手の男性はどのような態度なのかということも気になります。「彼女を妊娠させた男性」にも質問してみたいものですが、女性に聞く場合でも、「相手の男性が産むことを承知してくれない」とか、「相手の男性が産むのを喜ばない」といった項目があったら、男女間のパワー・バランスの中で中絶を選ばざるをえなくなる女性たちの実態が浮き彫りになるように思います。

実際、パートナーとの関係が中絶の大きな要因になる背景には、今の日本では女性が一人で産み育てられないこと、仕事・学業と両立できないことが大きな原因になっているわけで、他の先進国に比べて日本の母子家庭が極度に少ないこと、大学の男女共同参画が非常に遅れていることも、それを裏付けています。

さらに、避妊教育の不足も原因です。

 中絶を繰り返す女性の特徴をほかの設問とのクロス集計から探ると、「初めての性交渉の時に避妊しなかった」という人の割合が、中絶経験がない人や1回だけという人に比べて高い一方、避妊方法を「教師や学校の授業から知った」という人の割合は低く、正しい性教育を受けられなかった可能性が示唆された。

昨年、一緒に活動していた小中学校の性教育担当の先生方から聞いたのですが、一時期の性教育バッシングのために、小中学校の性教育はかなりの「自粛」モードに入ってしまい、充分な性教育を行えない状況が続いているそうです。わたし自身も、大学生や大人に対して性に関するお話をしてみて、みなさん関心は高いのに正確な知識をもっている人はあまりにも少ないと実感しています。

そればかりか、専門家のあいだでさえ、避妊や中絶に関する科学的な裏付けのある最新の知識をもっている人は、しごくまれだというのが実態で、困ったことだと思います。特に中絶についてはひどい。やはりこうした問題をタブーにしていてはならないと、強く思います。

望まない妊娠を防止するとともに、中絶問題をタブー化しないために、微力を尽くしていきたいです。