リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

母体保護法の運用を見直す?

現在、2011年12月18日なので過去日記です。でもって、なぜか日医NEWSの12月20日号の記事を紹介します。12月3日の平成23年度家族計画・母体保護法指導者講習会の内容なので、この開催日の日記にしておきます。

日医が提唱する「公的医療保険の全国一本化」を目指して公平な医療を守っていくとの姿勢を示した.
 続いて,「母体保護法の適正な運用」をテーマにシンポジウムが行われた.

公的医療保険の全国一本化を言って、舌の根の乾く間もなく母体保護法と言うのであれば、ぜひとも人工妊娠中絶の健康保険適用による全国一本化をうたってほしかった!

平成十二年に日本産婦人科医会が,妊娠十二週目までは女性の権利に基づく任意の人工妊娠中絶を認めるべきとの提言をしたことを紹介した.
 また,人工妊娠中絶における配偶者の同意規定の問題点を指摘し,母体保護の観点から考えていく必要があるとした.

提言をして10年以上も放置していたことについては、反省していただきたい。また、これについては「母体保護」の観点からというよりも、女性の人権の観点から考えていく必要があると思います。

まず、前段で語られている「女性の権利」は、いわゆる女性の身体的自己決定権のことなんでしょうか。これだけでは何に対するどんな権利なのか、今いち意味が分かりません。「12週」と切っているのも、胎児の生命権との兼ね合いなのかもしれませんが、生命倫理学者からは文句が出そうですね。この時点で切ることの根拠を明示する必要がありそうです。

配偶者の同意規程にいたっては、どう考えたって「母体保護の観点」よりも「女性の権利」のほうがしっくり来るのでは? 女性の身体を「母体」である限りは保護するという論理は、やっぱり問題がありますね。だって、男性の身体は「父体」になりえなくても保護されるのですから。

とはいえ、極早期中絶に関する無条件化と、配偶者の同意規程の撤廃については、わたし自身も賛成です。ただ、それを考えるのに、「従来の中絶方法」のまま(掻爬が中心)ではダメだと思います。

「改正母体保護法と今後の課題」の議論で、指定権うんぬんの議論をするのであれば、(国際的基準で)どれほどの技術水準をもつ医師かを、指定するかどうかの基準にすることも、ぜひ考えていただきたいと思います。(WHOの"Safe Abortion"の要件をクリアしている日本人産婦人科医は少ないと思います。)