リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

アエラ掲載「中絶は犯罪ですか? 堕胎罪という矛盾」

朝日新聞社アエラ(AERA)最新号(2012.12/31-2013.1.7 Vol.26 No.1)に標記の記事が掲載されました。目次には、「ある母親が直面した刑法の条文/出生前診断による中絶は罪に問えるか/年間20万件、中絶大国の法の不備」とあります。

ライターは古川雅子さんで、副題に「明治時代から法で定められている『堕胎罪』をめぐって、一人の母親が国を相手に訴訟を起こした。高齢出産、出生前診断が増えるなか、法の建前と実態の狭間のグレーゾーンになるケースは少なくない。」とあるところから、新型出生前診断の登場と絡めて法の見直しを促進しようとする姿勢が感じられます。

この裁判は、弁護士でもある原告の足立恵佳さんが、国を相手にたった一人で国家賠償訴訟を起こしたもの。勝ち目は非常に低いし、賠償金は保険適用にならなかったことで生じた諸経費のみとしており、もちろんお金目当ての裁判ではありません。出生前診断による中絶を経験した足立さんは、自分のケースが「堕胎罪」に該当することに衝撃を受け、またそれが「経済条項」による中絶という実態とは異なる扱いにされてしまうことに驚き、また法律家として、実態とそぐわない法のあり方に疑問を抱いたのです。記事によれば、足立さんがこの裁判を起こした目的は、「堕胎罪」という耳慣れない罪の存在を世に知らしめ、この実態に合わない法を長期間放置してきた国の怠慢を問い、法律と現実の乖離の見直しを迫るためだといいます。

出生前診断が独り歩きして、実質的には胎児条項(胎児の障害を理由とする中絶を許容する条項のことで、これを定めている国も少なくない)に該当するような中絶が、あるいはどんな理由であろうとも一律に「経済条項」にあてはめられていくことは私も疑問です。また、日本において「堕胎罪」があること、そしてどんな中絶であろうと母体保護法の「経済条項」というずた袋に投げ入れられてしまうことが、合法的な中絶を受ける女性たちにうしろめたさや罪の意識を負わせる一因になっているのではないかとも思います。さらに日本の中絶医療のあり方が問い直されることにもなるかもしれません。

足立さんは勇気ある一歩を踏み出しました。国の姿勢を問うとても重要な裁判です。アエラの宣伝をするわけではありませんが、よかったら記事を読んでみてください。また原告を支援していく方法を考えたいので、関心のある方、ぜひご連絡ください。