リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日母会長の交代 寺尾俊彦氏から木下勝之氏へ

久しぶりに日本産婦人科医会のサイトにアクセスしたら、

平成24年11月10日、故寺尾俊彦会長の後任として、医会代表理事に選出されました。

として、木下 勝之新会長のご挨拶がありました。

寺尾前会長は、昨年までお元気にご活躍であるように見受けられましたので、急な知らせに驚きました。

たしかこのブログでも前に寺尾会長の「母体保護に関わる諸問題」のページを紹介しましたが、今日は2012年の第 35 回日本産婦人科医会性教育指導セミナー 全国大会集録集(開催地:福井県)に掲載された寺尾会長の「ご挨拶」から、性教育バッシング派への批判を記している部分を抜粋してご紹介します。

 日本の学校における性教育は、制度上、ここ 10 年間全く変わっていません。
02 年(平成 14 年)5 月、衆議院文部科学委員会での山谷えり子議員(現参
議院議員)の発言で、流れは大きく変わりました。山谷議員は、熱心なカト
リック教徒であり、一方、靖国神社参拝の推進派でもありますが、学校などの
教育機関での性教育に強く反対し、中学生向けの性教育用冊子「ラブ & ボディ
BOOK」(母子衛生研究会作製)の中絶やピルによる避妊の記述を国会で取り上
げ、これによりこの性教育用冊子は、絶版 ・ 回収になりました。これが過激な
性教育 ・ 不適切教材として告発された理由は、「性器をつけた男女人形(スー
ジーとフレッド)、図解入り性交説明教材、性交技法にまで言及した性教育授業、
男女の性差を無視したジェンダーフリー教育、男女の中性化を目指す教育プロ
グラム、家庭崩壊の家族関係を肯定する記述、離婚やジングルマザーをすすめ
ると受け取られる記述」があるからとのことです。東京都をはじめ各地で処分
が行われました。山谷議員は「女性の自己決定権」や「ジェンダーフリー」を
問題視し、05 年(平成 17 年)には「過激な性教育ジェンダーフリー教育実
態調査プロジェクト・チーム」事務局長として、全国調査を行い約 3500 の事例
を集め、過激な性教育が行われるなど教育現場が「異常な状態」になっている2
と訴えるキャンペーンを展開しました。
 今、女性の意識の変革には驚くべきものがあります。若者の性に関する意識
は大きく変わっています。これに対し、学校での性教育の現状は、あまりにも
お粗末と云わざるを得ません。少子化も進んでいます。核家族がすすみ、兄弟
も少なく、赤ちゃんに触れたこともない子ども達も増えています。赤ちゃんの
可愛さや母性愛を教える必要があります。厚生労働省の 2011 年人口動態統計
によると、第1子出産時の母親の平均年齢は、30.1 歳と初めて 30 歳を超えま
した。著しく高齢化しています。40 歳になったら子どもを造ろうと考えてい
る人がいることも驚きです。
 このような女性の意識の変革に対応して、性教育の多角的、且つ、一体的な
改革が必要です。

まだまだご活躍いただきたかったです。惜しい方を亡くしました。木下新会長のご見識と意欲に期待いたしましょう。