リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

NHKで国内未承認の妊娠中絶薬個人輸入に注意呼び掛け

3月7日 19時9分のニュースで,次のような内容のニュースが流れたとの未確認情報を得ました。

  1. 国内では承認されていない妊娠中絶薬を、インターネットの通信販売で個人輸入しようとするケースが後を絶たないため、国民生活センターは、健康被害のおそれがあり、安易に個人輸入して服用しないよう注意を呼びかけた。
  2. 同センターによると、国内未承認の「ミフェプリストン」をインターネット通販で個人輸入した人から,業者と連絡が取れなくなったなどのトラブルの相談が寄せられているとのこと。
  3. センターの調べでは、日本語の通販サイトが多数見つかり、中には安全性などを強調した表示もあった。
  4. だがこの薬は、出血などの健康被害を引き起こすおそれがある。
  5. 厚生労働省が平成16年から医師の処方を条件にして、個人輸入を制限している。
  6. 指定された医師以外による中絶は、罪に問われるおそれもある。
  7. 国民生活センターの小野寺愛衣さんは「自分の判断で、こうした薬を使うのは危険なので、安易に個人輸入して服用することはやめ、医療機関を受診してほしい」とコメント。

このうち,「出血などの健康被害を引き起こす」というのは,ほとんど間違いです。人工流産を引き起こす薬なので,当然,出血はあります。大量出血が止まらないなどのリスクは多少あるようですが,それを理由に禁止すべきような副作用ではありません。また,厚生労働省個人輸入を禁止した際に,「健康被害」の例として挙げていたのは2004年にアメリカのFDAが注意を呼びかけた「感染症による死例」ですが,これ非常に稀な感染で,この薬との関連性は薄いことが分かってきたため,2011年にアメリカのFDAミフェプリストンのラベルから「感染症の警告」はすべて消しています。

ただし,ネット上で販売されている薬のほとんどが中国産のジェネリック薬で,有効成分が十分含まれていないものがある疑いもあり,また,国民生活センターに寄せられているトラブル例のように,相手の会社と連絡が取れないとか,送ってこないといった商業上のトラブルのリスクも高いようです。

間違ってはいけないのは,中絶薬ミフェプリストンはWHOが初期中絶薬として奨励しており,しかもエッセンシャル・メディシン(基本的にそろえておくべき薬)のリストにも入っている安全な薬で,正しい使い方をすれば何ら恐れる必要はありません。

むしろ,この重要な薬をいつまでも承認せず,医療を通じて使えなくしているために,こうしたトラブルが起きているのだということを,厚生労働省が自覚し,速やかに承認に向けて動き出すというのが正しい解決法だと思います。