リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

卵子凍結を独身女性にも「容認」

本日付日本経済新聞夕刊に載った記事。タイトルは

卵子凍結に関心高まる 独身女性にも「容認」
広がる女性の人生の選択肢

9月中旬に民間会社のリプロセルフバンクが開いた説明会に20〜40代の女性約40人が参加したとか。記事では「将来のパートナーに子供がほしかったと言われるのはつらい。仕事をつづけながら出産の可能性も残したい」,「いつか子供がほしい。卵子の老化を知って自分も産めなくなると不安になった」と30代末の女性2人のコメントを載せている。

「健康な女性の卵子凍結」がにわかに話題になったのは,この夏,日本生殖医学会が指針案をまとめたことが発端だろう。この指針案は2013年9月に未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドラインとしてまとめられた。

このガイドラインでは,未受精卵子および卵巣組織凍結技術の適応について、
(1)悪性腫瘍の治療等、医学的介入による性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を
「医学的適応」
(2)加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「社会的適応」

と(2)の条件を加えることで,いつか子供が欲しいと思っている健康な女性の卵子凍結の道を開いたのである。

日経の記事が報告するリプロ社の例によれば,初年度は保管費用を含め70〜80万円(入院し全身麻酔での採卵に50万円前後,凍結に24万円),さらに卵子1個あたり年1万500円の保管料がかかるという。

晩婚・晩産化が影響しているというが,「卵子凍結は選択肢の一つだが,将来必ず妊娠できるわけではない」との専門家の意見で記事は締めくくられている。

記事に添えられた用語説明は次の通り。

卵子凍結  排卵誘発剤で卵巣を刺激し,採取した卵子液体窒素で凍結保存する。必要に応じて解凍し,体外受精に使う。卵子は細胞膜が弱く,凍結で染色体が損傷する恐れがあり,製紙凍結に比べ,技術的に難しい。欧米の学会はリスクの十分な説明などを条件に「38歳以下」を目安に,一般女性にも認めている。米国の学会は安全性が向上しているとしながらも,積極的には勧められないとの見解だ。

一見,女性の産む,産まないの選択肢が増えて喜ばしいことのようにも思えるが,身体的な負担も費用もそうとうにかかる。(全麻での採卵はリスクを伴う。)将来的に,結局,妊娠できなかったりした場合の失望感もかなり強いに違いない。私自身,いわゆる高齢出産でいろいろ心配したり焦ったりもしたので,こういう技術に期待をかける人たちの気持ちも少しは分かるつもりだが,消費者としても賢くなるべきだし,「選ばない自由」についても,もっともっと語られるべきだろう。

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