リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬は命に関わる――という間違い

2011年3月12日に登録されたYahoo! 知恵袋での質問に対し、3月28日付の「ベストアンサー」でもって解決済みとされた中絶薬に関するとんでもない誤報について、ここに紹介し間違いを指摘します。(今後、参照する人が増えないように、リンクはあえて外しました。)

質問の要旨は「経口中絶薬についてなんですが、関西では処方してくれる病院があるのですが、東京に住んでいるので関東で探しています。関東で経口中絶薬を処方してくれる病院をご存知の方は教えて下さい。」

なお質問者は「経口中絶薬は、日本でも医師の処方があれば使用できるということを踏まえての質問です」とおっしゃっています。

これは本当です。処方してくれる医師がいれば使用できますし,数は少ないにしても正式な手続きを踏んで中絶薬を海外から取り寄せて使用している日本人産婦人科もいるようです。実際,質問主も「関西では処方している病院がある」との情報を得ていたようです。(ただし,手続きは簡単ではないのと,日本では医師自身が中絶薬の安全性・確実性を知らないことが多いので,二の足を踏む医師が多いのも事実です。)

ところが,これに対する「ベストアンサーに選ばれた回答」は,次のようなものでした。

認可されてない=違法に使用と言うことでどっちにしろ違法だと思いますが…経口中絶薬は医者のもとで使用しても危険ですよ。へたすれば命に関わるようなことです。なので認可されている国でも手術による堕胎の方が多いです。将来子どもは望まない、自分の身に何が起きても構わない(死に関わるような事でも)と言うのなら別ですが。闇医者は違法ですからね。

第一の間違いは,未認可薬でも,医師が治療に必要だと思い,輸入等の手続きを取れば,取り寄せて使用することができるのに,未認可=違法と決めつけているところです

第二の間違いは,何の根拠もなく「経口中絶薬は医者のもとで使用しても危険ですよ。へたすれば命に関わる」と言っていることです。

中絶薬(ミフェプリストン,別名RU486)は,医師の元で正しく使う限りは非常に安全な薬ですし,日本でもかなり制限されているとはいえ,使用の道が100%絶たれているわけではありません。

さらに危険「なので認可されている国でも手術による堕胎の方が多い」というのも間違いです。認可されたばかりであるとか,医師が手術を好むなど様々な理由で,「認可されている国でも手術による中絶の方が多い」ケースはあるかもしれませんが,中絶薬が危険なためではありません。

なお,この回答者は合法的かつ医療的に行われる「中絶」と,違法の闇医師によって行われる「堕胎」の二つの概念を混同しており,また「中絶薬を使った中絶」が闇医師でなければ得られないかのように読める書き方になっているのも誤解を広めます。

しかし,残念ながら,こうした誤情報が「ベストアンサー」に選ばれてしまっているのが現状なのですね。正しい情報を普及する必要性を痛感します。