リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

富山県医師会母体保護法指定医師の指定基準等の改正について

忘備録

指定医師の実態の一部を垣間見れる資料として貼り付けておく。厚労大臣の報告・助言勧告が可能なんだね。研修はやはり手薄になっている。年1回の研修で更新料は1万円である。

富山県医師会母体保護法指定医師の指定基準等の改正について
平成 26 年 1 月 16 日
富山県医師会会長 馬瀬大助
富山県医師会母体保護法指定医師審査委員会委員長 種部恭子


1.改正の経緯について
 新公益法人制度への移行に伴い母体保護法の一部が改正され、厚生労働大臣が必要に応じて報告・助言勧告することを条件に、特定法人である都道府県医師会であっても母体保護法指定医師の指定が可能になりました(下記第四十条参照)。
これに伴い、厚生労働省による母体保護法指定医師の指定のあり方に関する調査が行われ、日医からは、都道府県医師会が独自に定めている母体保護法指定医師の指定基準を自主的に統一すべきであるという見解が示されました。
 この度日医から指定基準の改正モデル案が示されたことを受け、富山県医師会も平成 25 年 12 月26 日付けで母体保護法指定医師の指定基準、細則、審査規則を一部改正いたしました。改正した指定基準等の本文は別添をご参照ください。


母体保護法の一部改正 平成 23 年 6 月 24 日
(医師の認定による人工妊娠中絶)
 第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつた
ときには本人の同意だけで足りる。
(指定医師を指定する医師会の特例)
 第四十条 第十四条第一項に規定する公益社団法人には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び
公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十八年法律第五十号)第二百八十三条に規定するもののほか、公益社団法人及び特例社団法人(同法第四十二条第一項に規定する特例社団法人をいう。以下この項において同じ。)以外の一般社団法人であつて、母体保護法の一部を改正する法律(平成二十三年法律第七十五号)の施行の際特例社団法人であつたもの(次項において「特定法人」という。)を含むものとする。
厚生労働大臣は、都道府県の区域を単位として設立された特定法人たる医師会に対し、当該医師会が行う第十四条第一項の指定に関し必要があると認めるときは、報告を求め、又は助言若しくは勧告をすることができる。


2.富山県医師会母体保護法指定医師の指定基準・細則・審査規則の改正ポイント
以下に、母体保護法指定医師新規指定および更新の条件を含めた、主な改正ポイントをお示しいたします。
1) 人格の評価(面接を重視)
 従来、新規指定の際に人格の評価として郡市医師会長の意見書の添付を求めておりましたが、改正指定基準では、母体保護法指定医師審査委員会の位置づけを明記し、審査委員会での面接等の評価を重視することにいたしました。
改正指定基準;「細則4の①」郡市医師会長の意見書を申請書類から削除。申請書は直接富山県医師会長あてに提出。
2) 技能の評価(専門医の標記)
 従来、日本産科婦人科学会専門医の資格を有することで技能の評価に足るとされておりましたが、公正取引委員会の見解を受け、特定の団体による専門医のみに限定しないことになりました。
改正指定基準;「指定基準2の(1)」産婦人科専門医、とのみ表記。
3) 技能の評価(必須症例数の変更)
 従来、技能の評価基準として人工妊娠中絶手術 15 例以上の実地指導が条件でしたが、女子人口当たりの人工妊娠中絶数は年々減少しており、症例数の確保が困難になることが想定されます。改正モデルでは必須症例数の見直しが行われました。
改正指定基準;「指定基準2の(2)」中絶手術実地指導を受けた必須症例数は 10 例に変更。
4) 研修機関の条件(症例数の変更)
 従来、年間の開腹手術 50 例以上、分娩 200 例以上が研修機関としての条件の一つでしたが、腹腔鏡下手術の増加および分娩数の減少を踏まえ、条件を変更いたしました。
改正指定基準;「指定基準3の(1)」開腹手術 50 例以上(腹腔鏡下手術を含む)、分娩 120 例以上に変更。
5) 研修連携施設の新設
 単独の研修機関では中絶手術実地指導を受ける症例数を確保することが困難な場合が想定されるため、研修連携施設を設けることといたしました。研修連携施設で実地指導を受けた中絶手術症例を、技能の評価基準となる必須症例数(10 例)に含めることが可能になります。
改正指定基準;「指定基準3の(3)」研修連携施設を富山県医師会に登録することにより、研修機関と認める。
6) 母体保護法指定医師研修会の研修内容の指定と受講の義務付け
 従来は都道府県ごとに更新に要する研修内容が異なっておりましたが、最低限の研修内容について条件が設けられたことを受け、母体保護法指定医師研修会の内容を限定しました。新規指定および更新の際には、母体保護指定医師研修会 1 回以上の受講が必須であり、この受講がない場合は、指定医師として指定・更新いたしません。
 なお、母体保護法指定医師研修会は、富山県医師会主催で年 1 回開催いたしますが、日本医師会、日本産婦人科医会、都道府県産婦人科医会等の主催の研修会で、内容がテーマに合致するものであれば、母体保護法指定医師研修会として認定いたします(認定の可否は富山県医師会母体保護法指定審査委員会が判断いたします)。
 また、従来通り、更新の際には母体保護法指定医師研修会の受講を含め日本産婦人科医会研修参加証 6 枚相当の研修受講が必要です。
改正指定基準;「細則8の①」生命倫理母体保護法の趣旨と運用、医療安全・救急処置、の3つのテーマでの母体保護法指定医師研修会を、1回以上受講することを義務付け。新規指定に対しても同研修の 1 回以上の受講を条件とする(「指定基準2の(3)」)。
7) 中期中絶の実施は入院設備を有する医療機関のみに限定
 従来、母体保護法の設備指定には「原則として入院設備を備えること」が条件とされておりましたが、中期中絶については必ず入院設備を備えることが求められることになりました。
改正指定基準;「指定基準5」中期中絶を行う場合は必ず入院設備および分娩を行いうる体制を備えること。
8) 更新手数料の見直し
 富山県医師会では、更新の必須条件である「母体保護法指定医師研修会」を、指定された研修内容で年 1 回開催します。研修会の開催費用に充てるため、更新手数料を見直しました。
改正指定基準;「審査規則第 17 条(4)」指定更新手数料 10,000 円
 なお、本年の母体保護法指定医師指定更新に際しては、従来必須研修会としていたものを「母体保護法指定医師研修会」とみなして審査いたします。