リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

医報とやま No.1593/26.2.15 中絶の配偶者同意要件について

忘備録


母体保護法における配偶者の同意と、 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

種部恭子先生の文章です。

 日医は昨年、母体保護法指定医師指定基準の改正モデルを作成しました。富山県医師会はこのモデル案に基づいて、平成25年12月26日に富山県医師会母体保護法指定医師指定基準の改正を行い、引き続き法の適正な運用をはかり研修を実施する予定です。
 母体保護法では、本人及び配偶者の同意を得て人工妊娠中絶を行うことができる、と定めています。民法では、嫡出推定の観点から「夫=配偶者」は法律婚によるもののみならず、夫婦と同様の共同生活を行っており懐胎させることが可能な状況にあつたパートナーも含むとしています。
 一方、未婚の女性の場合、とくに婚姻が禁止されている16歳未満の女性の場合は、妊娠させた相手は法律上の配偶者の規定に該当しません。しかし産婦人科医はこれまで、 トラブルを避ける意味で、高校生や中学生同士のカップルの場合でも女性とそのパートナーの両方に同意・署名を要求していました。一般女1生においても、中絶に際しては女性とその相手の同意・署名が必要であると考えている方が多いと思われます。
 相手の同意の要否を明確にしたいと考え、内閣府の専門調査会委員を務めた際の席上や富山県を通じて厚生労働省に問い合わせたところ、「配偶者(事実上の婚姻関係にあるものを含む)がなく、婚姻の意思をもたず共同生活を行っていない未婚の女性の場合、人工妊娠 中絶に際しては、本人の同意で足る」と回答を得 ました。公式なルートでの言質を取る必要があると考え、平成25年12月7日に開催された日医家族計画・母体保護法指導者講習会に出席し、質疑応答で登壇された厚労省雇用均等児童家庭局母子保健課長に直接質問したところ、厚労省の正式見解として以下の回答があり、1月 21日付で日医から都道府県医師会に通知されました。
 「配偶者とは、婚姻関係にあるもの (事実婚を含む)を指す①したがって、母体保護法上は、婚姻していない方、すなわち配偶者の存在しない方については、配偶者の同意は不要である。」
 しかしこの回答に関して、日医の検討委員会内で「現実には社会の変化により妊娠をめぐる状況は複雑になっているため、トラブルを避けるためにも弾力的に運用する必要がある」との意見が出されたことが申し添えられています。
 国連女性差別撤廃委員会 (CEDAW)、 国連拷問禁止委員会では、刑罰を伴う中絶、つまり堕胎罪の存在、そして中絶に配偶者や親権者の同意を求めることは、重大な権利侵害であると報告し、国連人権理事会は、刑法による中絶の犯罪化は国家の不当な介入であり人権侵害と決議 しました。 これを受け、国連は2011年に日本を含む加盟国に対し、中絶の非犯罪化、お よび配偶者や親の同意の要件の廃止 などを求める勧告を行っています。
 今回厚労省が示した見解によると、未婚の女性に限っては本人の意思のみで中絶を受けることが可能でありますが、国連の勧告に反する状況であることに変わりはありません。
 日弁連は、リプログクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康 。権利)に関する法や政策の問題点を精査 し、国連の勧告やCEDAWの指摘事項に対する国の対応 に関してアドボカシー活動を行 っています。健康を守るプロフェッショナルである医療 ・医学団体 は何の取り組みもしていません。ちなみに、日弁連の方が役員に占める女性の割合が高い。 これでいいのでしょうか。