リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

どんな技術が使われているかに注目すべき

讀賣新聞社の医療サイト「ヨミドクター」に「副作用報道のバランスとは」という記事が20日付で掲載されています。

昨年末、避妊などに使う低用量ピルを服用して血栓症で11人が死亡したとの報道を目にしました。2004年から749件の副作用が報告されたとのことですが、この種の報道はしばしば科学的ではありません。なぜならば、この数字の持つ意味が不明だからです。

 死亡に至った例があったことは不幸なことですし、副作用の注意喚起をすることは重篤な副作用を回避するために必要です。しかしこの数字だけでは、どの程度の割合で副作用が出たのか全然わかりません。1000人中11人か、100万人中11人かによって、ピルを服用する問題の大きさがまったく異なります。また、薬を服用していない同年代の女性でどの程度の割合で血栓症が発生しているのかといった比較情報も、重大性を判断するうえで必須です。

この指摘は基本的に正しいのですが、以下に示す最後の部分はちょっとひっかかりました。

ピルの血栓症などの副作用は、以前から知られていたにもかかわらず、多年にわたって処方されているのはどうしてでしょうか? 予期せぬ結果で、人工妊娠中絶に至るのを防ぐためです。中絶は新しい生命を奪うだけでなく、中絶に伴う種々の合併症によって大きな不幸を招きかねません。

 副作用の報道が社会に与える影響を考えた上での、バランスのある報道が求められます。(シカゴ大教授 中村祐輔)

さて、中村教授が「中絶に伴う種々の合併症」と言う時の「中絶」の方法は何が想定されているのでしょうか? おそらく外科的手術、特に掻爬による子宮穿孔などの下手をすると致命的な事故が想定されているのではないかと思います。このブログでも再三取り上げてきましたが、確かに今の日本では「掻爬」は多数派ですが、この方法はもはや世界では推奨されていない方法です。それこそ「大きな不幸」を招きかねないリスクの高い方法だからです。

ピルを含め、最先端の最も優れた方法が日本であまり使われていないことの問題性を指摘し、最先端の避妊・中絶方法を導入していく必要性を訴えていくことが重要ではないでしょうか。