リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本産科婦人科学会でレクチャー

この日,日本産科婦人科学会で開かれた「女性のヘルスケアアドバイザー養成プログラム」の講義の1つを担当させていただきました。100名ほどの産婦人科医を前に,医師でもない私が日本の中絶技術が国際的な水準と比べていかに遅れているかをレクチャーするなんて,二度とないことだと思います。おおむね好意的な反応だったので,ほっとしました。

主に次のような話をしてきました。

  • 日本の妊娠初期の中絶手術のおよそ8割で,今も掻爬が行われている。約3割が掻爬単独,約半数が吸引と掻爬の併用である。
  • ところが,掻爬(D&C)は国際的には旧式で危険な方法だと見られており,WHOもD&Cは「廃れた方法」だとして,より安全な中絶薬や吸引への移行を求めている。
  • 日本も中絶薬や吸引による中絶に移行していくべきである。
  • ただし,現在,日本で行われている「吸引」による中絶は,WHOのいう「吸引」とは異なる方法である。
  • 世界では,吸引による中絶にはプラスチック製のカニューレ(吸引管)を使うことが前提となっている。なぜなら,国際社会では1970年代に「金属管からプラスチック製のカニューレへ」移行済みだからである。
  • 多くの西欧諸国では1970年前後に女性の権利としての中絶が認められた時に,どのような中絶方法が安全か医師たちが検討を重ねた。
  • その結果,金属製カニューレよりも安全性の高いプラスチック製のカニューレ(カーマン式カニューレ)が優れているという結論になり,合法的中絶については「吸引による中絶」がスタンダードな処置になった。
  • その後,1980年代末にフランスで開発された中絶薬(ミフェプリストン,またはRU486)が画期的な方法として各国に広まっていった。
  • さらに最近,海外では「手動吸引器」という大型の注射器のような器具に(電動吸引機にも使われる)プラスチック製のカニューレをつけて,妊娠の非常に早期に中絶を行うことも広まりつつある。より早期に,より安全に中絶を行えるとして,最近は先進諸国でも注目されている。
  • より安全で確実な中絶を行うために,海外ではエビデンスを重ねた結果,今や世界ではプラスチックカニューレを用いた吸引,手動吸引,中絶薬が妊娠初期の中絶のスタンダードになっている。
  • 日本でも,妊娠中絶薬やプラスチック製のカニューレ,手動吸引器などを導入していく必要がある。
  • さらに,流産後の処置として「掻爬」を行うことは,次の妊娠時に流産をするリスクを高めることになっていると思われる。妊娠を望んでいながら流産した人が,事後処置として「掻爬」を受けることで次もまた流産する可能性が高まる(「不育症」になる?)とすればゆゆしき問題であり,早急に見直しを行うべきだ。

遅くなりましたが,取り急ぎご報告いたします。