リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

第7回男女の生活と意識に関する調査

一般社団法人家族計画協会 機関紙 【第731号】平成27年2月1日発行(2015年)

第7回 男女の生活と意識に関する調査

主な結果を以下に抜粋する。

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本会家族計画研究センター(北村邦夫所長)は1月14日、第7回「男女の生活と意識に関する調査」の結果報告会を本会多目的ホールで開催した。本調査は、リプロダクティブ・ヘルス少子化に対するわが国の男女の意識と行動を調べたもので、報告会にはメディア関係者ら約50人が集まった。
報告会で北村所長は、人工妊娠中絶の反復中絶者が減少したことや、「経済的に余裕がない」という理由の中絶が増加したことを「注目に値する」と指摘。このほか立ち会い分娩、子宮頸がん予防ワクチン、経口中絶薬など新たなトピックスについての分析も示し、活発な質疑応答がなされた。
報告会を受けて、NHKや日本テレビの報道番組をはじめ、国内外の複数のメディアが調査結果を取り上げた。特に、「既婚者のセックスレスが44・6%に増えた」ことが大きく報じられた。

- 調査結果の概要

第7回「男女の生活と意識に関する調査」の結果を報告。本調査は、2014年9月1日現在満16~49歳の男女3000人を対象(有効回答数1134)として、同年9月11~28日に実施した。

2002年からスタートした「男女の生活と意識に関する調査」は、2010年の5回目までは、厚生労働科学研究費補助金による研究事業の一環として行われてきたが、前回(第6回、2012年実施)以降、本会が公益目的支出計画事業の一環として独自に調査を実施している。以下、その結果の概要を報告する。
(本会理事長・家族計画研究センター所長 北村 邦夫)

  • 最新のトピックス1
  • 立ち会い分娩について

過去に行われた本調査では、婚姻関係にある回答者のうち、1か月以上セックスがない、いわゆる「セックスレス」の理由に「出産後何となく」との回答が目立った。ちなみに、第7回調査でも、婚姻関係にある男性の15・7%、女性の16・8%が「出産後何となく」を挙げている。私どもは、過酷な出産場面に立ち会ったことがその後のセックスレスを生んではいないかとの仮説を立てた。
結果は、子どもを持っている男性の51・6%、女性の50・1%に「立ち会い分娩」の経験があり(表1)、男女とも35歳未満、高卒以上、セックスに関心がある、本人あるいはパートナーに中絶経験がない回答者で「立ち会い分娩」の経験率が高かった。セックスレスとの関係については、立ち会い分娩の「経験あり」では44・6%であったものの、「経験なし」は55・0%で仮説とは異なる結果となった。男性が分娩に立ち会うことによるPTSDの頻度は低いとの先行研究もあり、立ち会い分娩後のトラウマがセックスレスの原因になるわけではないことが明らかとなった。

  • 最新のトピックス2
  • 子宮頸がんワクチン

2013年4月に定期接種の対象となった子宮頸がん予防ワクチン。その後、痛みなどの副反応が話題になり、同年6月に国は「定期接種は続けるが積極的に勧奨しない」との結論を出し、今日(15年1月)に至っている。子宮頸がん予防ワクチンについて「知っている」と回答したのは70・7%(男性52・4%、女性86・2%)。認知度は女性の方が明らかに高いが、「知っている」と回答した者に対して、国の措置についての意見を求めると、「分からない」が30・8%(男性38・6%、女性26・8%)いるものの、「痛みなどの原因を追及するためには必要な措置であった」と33・8%(男性33・1%、女性34・2%)が回答している。男女ともに年齢によるばらつきはあるが、女性の35~39歳では「必要な措置」との回答が46・3%と高く、「ワクチンを接種しなくても検診で十分」22・0%、「ワクチン接種の推奨がなくなったのは残念である」は8・5%となっている。「残念」との回答は、定期接種対象者だと思われる16~19歳の女性では27・3%と高かった。

  • 最新のトピックス3
  • 経口中絶薬

杵淵らが10年、全国932か所の母体保護法指定医を有する産婦人科医療施設の医師を対象に郵送調査をしたところ、妊娠初期の中絶方法は、掻爬法が35・3%、掻爬後吸引27・1%、吸引法10・6%であった。世界保健機関(WHO)は吸引法と経口中絶薬の使用を推奨しており、わが国で経口中絶薬が使用できないことに対して国際社会から疑問の声が挙がっている。ちなみに、13年現在、53か国(地域)で承認され、妊娠49~63日までの妊娠初期の中絶に使用されている。
今回、経口中絶薬について、「このような方法があったら利用したかった(利用したい)、利用させたかった(利用させたい)」か聞いた(表2)。結果、65・3%(男性69・0%、女性62・1%)が「分からない」と回答。認知度の低さを物語る結果となった。一方、21・8%(男性18・7%、女性24・4%)が「利用したかった」とし、当事者である女性の声が男性を上回っていた。

  • 男性の性交開始年齢遅く

過去7回行われた調査について、初交年齢から累積経験率をみた(表3)。驚くことに第7回(2014年)調査において、男性回答者の場合、過去の調査結果と比べて19歳以上での累積経験率がすべて低い。2014年調査でみると15歳以下の累積経験率は僅かに男性が女性を上回っているが、16歳以上ではすべて女性が男性を超えていた。特に29歳では男女の間には6.8ポイントの差が出ている。累積経験率が30%を超えるのは、男性では18歳(女性18歳)、50%は男性20歳(女性19歳)、70%は24歳(女性22歳)であった。ちなみに、2008年(第4回)調査での50%超えは男性19歳(女性19歳)、70%超えは男性21歳(女性21歳)であったから、この6年間で70%超えについては男性で3歳、女性で1歳遅くなっている。

 初交開始年齢に影響を及ぼしている要因を探った。初交開始年齢を遅くする要因として、結婚せずに子どもを持つことに「抵抗がある」、異性との関わり「面倒である」、子どもは欲しくない、中学生の頃の親との会話「話しをした」、喫煙経験がない、両親の離婚を経験していない、などが挙げられる。


セックスレス44・6%

「この1か月以上セックスが行われていないセックスレス」については、婚姻関係にある回答者(初婚・再婚)では前回12年調査に比べて3・3ポイント増加し、セックスレスに関連した調査を開始した04年以降留まる気配さえない。
本調査では、これまでにセックスをしたことがある者(927人)に、この1か月間のセックス回数を聞いたところ、「1回」15・5%、「2回」9・4%、「3回」6・6%、「4回」5・2%、「5回以上」8・0%という結果だった。一方、「この1か月間は、セックスをしなかった」は49・3%(男性48・3%、女性50・1%)で前回比5・3ポイント増加していた。この傾向は男女ともに同様で、前回比男女ともに5・2ポイント増であった。
これを婚姻関係にある回答者に限って見ると44・6%(男性36・2%、女性50・3%)が「セックスレス」の範囲にあり(図1)、年齢階級別には婚姻関係にある女性では40~44歳65・3%(男性37・7%)と異常に高く、45~49歳の女性でも56・8%(男性38・8%)という結果だった。
01年に朝日新聞社が行ったインターネット調査「夫婦1000人に聞く」でのセックスレス割合は28・0%。本調査では04年31・9%、06年34・6%、08年36・5%、10年40・8%、12年41・3%、14年44・6%で、婚姻関係にあるカップルのセックスレス化には歯止めがかかっていない。
婚姻関係にある回答者がセックスに対して積極的になれない理由について、男性の場合、「仕事で疲れている」21・3%、「出産後何となく」15・7%、「現在妊娠中、出産後すぐだから」11・2%、「面倒くさい」10・1%。女性では「面倒くさい」23・8%、「仕事で疲れている」17・8%、「出産後何となく」16・8%、「現在妊娠中、出産後すぐだから」9・7%の順。これを10年、12年、14年で追うと、男性では「仕事で疲れて」が他を圧倒し、女性では「面倒くさい」がトップのまま続いている(表4)。
今回、初めて、婚姻関係にある回答者について、セックスレスと回答した背景を探った。統計的に有意な差を認めたのは男女差。本来であれば、性別による補正をすべきところであるが、全体で見ると、年齢が高い、高学歴、両親の離婚を経験したことがないのほか、結婚の利点についての質問で、精神的な安らぎの場が得られる、愛情を感じている人と暮らせる、性的な充足が得られる、生活上便利になる、親を安心させたり周囲の期待に応えられる、などに「利点はない」と回答した者、セックスに「関心がない」「嫌悪している」、初めてのセックスを重大だと感じていた者、立ち会い分娩の経験がない者、などでセックスレス化の傾向が強かった。

  • 中絶経験者13・2%

13年度の人工妊娠中絶実施件数は18万6253件、実施率7・0でともに、過去最低を記録した。1955年には117万件余(50・2)であったことを思えば隔世の感がある。

一方、本調査によれば、人工妊娠中絶の手術を受けたことがある女性は13・2%(前回比1・5ポイント減)、このうち反復中絶は25・9%(同10・4ポイント減)という結果であった(図2)。「最初の人工妊娠中絶手術を受けることを決めた理由」を見ると、第1位は「経済的余裕がない」で23・8%(男性22・2%、女性24・7%)、「相手と結婚していないので産めない」23・0%(男性24・4%、女性22・2%)、「相手が出産に同意しなかった」10・3%(男性11・1%、女性9・9%)と続く。「経済的な余裕がない」が前回から一挙に9ポイント増加しているのが気になっている。

最初の「人工妊娠中絶を受けるときの気持ち」を女性に聞くと、「胎児に対して申し訳ない」が45・7%とトップ。「自分を責める気持ち」14・8%など、中絶をリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)として捉える傾向は依然として低いものの、「人生において必要な選択である」が2008年以降13・1%、13・3%、14・7%、16・0%とわずかながらに増加傾向にあることは注目される。その一方で、「相手に対する怒り」が6・2%(前回比5・2ポイント増)、「相手に申し訳ない」3・7%(同3・7ポイント増)、「自分の親に対して申し訳ない」3・7%(同1・7ポイント増)となったのが目立っている。

  • 85・5%がコンドーム

これまでにセックスをしたことのある男女(927人)に、この1年間の避妊の状況を聞いた。「避妊をしている(いつも避妊している+避妊をしたりしなかったりしている)」と回答したのは50・3%(男性50・2%、女性50・3%)。「避妊をしている」と回答した女性に、二つまで選択可との条件で主な避妊方法を聞くと、「コンドーム」85・5%、「腟外射精法」16・0%、「オギノ式避妊法」6・1%、「経口避妊薬(ピル)」4・6%と続く(表5)。避妊法選択の推移を見ると、コンドームが02年比14・7ポイント増で日本人女性の男性用コンドームへの期待の大きさがうかがえる。オギノ式避妊法なども復活の兆しが見える。とはいえ、妊娠は女性にのみ起こる現象であることから、避妊を男性任せにしないことが重要だと考えるが、14年になってもなお、避妊を男性任せにしていることに問題はないのか。一方、4・6%の女性が使用していると回答したピルについては、20~24歳では9・1%、25~29歳で7・3%と若年女性での使用率が高まっている。

ピルの認知度は、女性では64・9%が「よく知っている」「ある程度知っている」と回答。発売以来15年目を迎えた今日でも認知度は6割程度に留まっている。使用意向を聞くと、「すでに使っている」女性が3・3%になっているとはいえ、「使いたくない」が71・4%と高率となっている。「使いたい」理由として、女性では「月経痛緩和や貧血予防の副効用」を挙げる者が最も多く31・3%(表6)。この割合は10年以降一挙に高まり、ここ2回調査では「避妊効果が高い」を上回っている。月経困難症の症状軽減を目的とした保険適用薬が08年と10年に発売されていることと無縁ではないだろう。「使いたくない」理由としては従来と同様「副作用が心配」がトップで女性では50・5%となっている(表7)。12年に45・0%であったものが5・5ポイント増加した背景には、13年12月にメディアを騒がせることになったピル服用による血栓症死亡と関係があるのだろうか。

低用量ピルの普及に関わり続けている筆者は、今回「低用量ピルがもっと普及するためには、どのようなことが必要か(○はいくつでも)」を聞いた。その結果、第一に挙げられたのは「気軽に相談できるクリニックを増やす」38・7%(男性32・2%、女性44・2%)、次いで「健康保険が使えるようにする」33・2%(男性25・6%、女性39・5%)、「費用を安くする」33・1%(男性30・4%、女性35・3%)、「CM等の広報をする」21・1%(男性23・1%、女性19・3%)、「国や地方自治体が費用を無料にする」12・9%(男性10・2%、女性15・1%)などであった。女性のうち「気軽に相談できるクリニックを増やす」は25歳未満で、「健康保険が使えるようにする」は30歳以上で高かった。「費用を安くする」は服用を希望する世代である20~34歳での切実な声として挙がっているといえる。

  • 緊急避妊法の認知度上昇

「あなたは、緊急避妊法、モーニングアフターピル、性交後避妊のいずれかの言葉を聞いたことがありますか」の問いに対して、38・6%(男性34・1%、女性42・4%)が「聞いたことがある」と回答している(図3)。『ノルレボ?錠』という緊急避妊ピルについては、11年2月に承認、5月に発売されたが、認知度は確実に高まっている。「過去1年間に緊急避妊法を利用したことがあるか」に対して、6・2%(男性4・5%、女性7・3%)が「ある」と回答しており、女性で見ると81万4370件の緊急避妊薬が使われたと推計される。

  • 子どもが欲しい人の特徴

「子どもが欲しい」と回答している人は75・5%。性差が顕著で女性78・9%、男性71・5%。本来であれば性別補正が必要であるが、ここでは全体で分析した。「子どもが欲しい」と回答した割合が高かったのは、高学歴、自営業や主婦(主夫)、(中学生の頃)家庭が「楽しかった」、結婚したい、(母親または父親に対して)産んで育ててくれて感謝している、と回答した者。また結婚について、社会的信用を得たり周囲と対等になれる、精神的なやすらぎの場が得られる、愛情を感じている人と暮らせる、自分の子どもや家族を持てる、性的な充足が得られる、生活上便利になる、親から独立できる、親を安心させたり周囲の期待に応えられる、などに「利点がある」と回答した者。さらに、セックスに関心がある、異性と関わることが面倒でない、高収入群などであった。国の少子化対策についても、「国は目標に向け積極的に取り組むべき」と回答した者の82・1%が、「子どもの教育費の支援をしてほしい」と回答した者の81・5%が「子どもが欲しい」と答えている。


 編集帖

▼昨年の10月に内閣府より「母子保健に関する世論調査」が発表され本紙の10月号で一部を紹介したが、調査の中の「マタニティマーク」の認知では「言葉だけは知っていた」を含め「知っている」と答えたのは、女性が63・8%、男性が41・4%。60歳以上の男女は半数以上が「知らなかった」と答え、認知度が低かった。都市の規模別では「知っている」人の割合は公共交通機関が発達している大都市が高い。

▼本会はマタニティマークが制定された2006年からマークの「キーホルダー」「車用ステッカー」を制作し、全国の自治体に頒布し啓発に努めている。都内の駅構内にはポスターが貼られ、電車の中ではキーホルダーを付けている妊婦を見かけることから、マークの認知度は高いと感じていた。車中で席を譲られた妊婦が「ありがとうございます」と返す言葉はうれしく感じるし、マークの効果かなとも思う。

▼認知度が気になり調査票を見ると、マタニティマークについては説明文のみで、マークは掲載されていない。「言葉だけは知っていた」と同じく「マークなら見て知っていた」人もいるはずで、調査票にマークを掲載していたら認知度はもう少し高かったのではないか。

▼マークの認知度が高くなるのは良いことだ。しかし、残念ながら認知されると反対派も現れ、調査後もネット上では「アンチ」投稿や議論が活発だ。反対理由はいろいろだが、思いやりが感じられない意見ばかりである。大事な妊娠期に大きなストレスを受けたり、嫌がらせをされることがあってはならない。大切なことは周囲の者が妊婦や子ども、子育てをする人を理解し、思いやりを持って接することだ。マークの意義を尊重し、これからも妊婦にやさしい環境を目指した粘り強い啓発が必要だ。(TS)