少子化対策として、個人の生き方を操作しようとする動きが続いています。正しい情報を広めていかなければなりません。以下は2015年3月21日朝日新聞の「個人の生き方・価値観にも踏み込む 少子化社会対策大綱」(畑山敦子記者)の見出しで報じられた記事の抜粋です。
2020年までの少子化対策の方向性を示す政府の「少子化社会対策大綱」が20日、閣議決定された。「社会経済の根幹を揺るがしかねない」と少子化への危機感を前面に打ち出した。妊娠・出産の知識を学校で教えることや、自治体などによる結婚支援策の後押し、三世代同居の推進などを盛り込んだ。個人の生き方や価値観に関わる分野にも踏み込んだ形だ。
「賛否両論、国民的議論を恐れずに皆さんに伝えていく覚悟がなければ、今の時代の少子化対策として期待に応えることにならない」。有村治子少子化担当相は20日、こう述べた。発言の念頭にあるのは、大綱に盛り込んだ「妊娠・出産の医学的・科学的に正しい知識の教育」だ。
有村大臣は「中学・高校の保健体育を意識して文部科学省と検討している」と話す。「正しい知識」が何を指すのか大綱では明示されていないが、妊娠しやすさと年齢との関わりについての医学的な知識などを教材に盛り込むことを想定しているとみられる。晩婚、晩産化で不妊に悩む人が増えているからだ。
こうした個人の生き方に関わる政策は過去にも議論を呼んできた。2013年には妊娠や出産の知識を若い女性に広めるため「女性手帳」の配布を検討したが、撤回した。「生き方への介入につながる」と批判を受けたためだ。昨年まとめた政府の人口減対策では、出生率1・8を「まず目指すべき水準」とした原案の記述が最終的には削除された。
同じ畑山さんが2015年8月15日の記事「「妊娠しやすさ」グラフ誤る 高校副読本、文科省修正へ」で次(抜粋)のように報じています。
全国の高校1年生に2学期から配られる保健体育向けの副読本で、「女性の妊娠のしやすさと年齢」のグラフに表示ミスがあったことがわかった。根拠となる論文のグラフと異なっていた。文部科学省は正誤表を教育委員会や学校に配る。
副読本は「健康な生活を送るために」(A4判45ページ)で、改訂に合わせて文科省と内閣府が作成。副読本として初めて男女の不妊問題を記載した。
表示ミスがあったのは、妊娠・出産に関する項目で「医学的に、女性にとって妊娠に適した時期は20代であり、30代から徐々に妊娠する力が下がり始め、一般に、40歳を過ぎると妊娠は難しくなります」という文章につけられた折れ線グラフ。妊娠のしやすさを示す数値が22歳をピークに25歳まで緩やかに下がり、25〜30歳はさらに大きく下がる。だが根拠とした米国の学者の論文のグラフは、22〜25歳がほぼ横ばいで、25〜30歳の下がり方も緩やかだった。
この「誤り」について高橋さきのさん(科学技術論・ジェンダー論)は次で詳しく解説しています。
「妊娠しやすさ」グラフはいかにして高校保健・副教材になったのか
この問題について来る2015年11月30日には東京でシンポジウムが開かれるようです。