リプロな日記

日本のアボーション(中絶と流産)にまつわる諸問題を研究しています

アメリカの中絶薬の動向

アメリカで行われている中絶で、中絶薬の利用と中絶手術が半々になったことを報じたDAILYSUN New Yorkというサイトの記事に違和感をおぼえた。

「選択肢が増えるのは良いものの、中絶薬を手軽で身近なものにしてはなりません。」というコメントが憤った表情の女性のイラスト付きで載っているからだ。これって、誰の判断なんだろう? 誰が誰に対して怒っているのだろう? 中絶薬が手軽で身近なものになれば、避妊を怠るバカな女が増えるとでも言いたいのだろうか? 

いやむしろ、中絶薬があるからといって、避妊を怠るようになるのは男性側ではないのだろうか? 

いつの世にもどの文化にも望まれない妊娠は一定割合で生じている。中絶を必要とする女性たちに、より負担の多い中絶方法という選択肢しか与えられていない現状にこそ、女性たちは怒りを向けるべきではないのではないか?

情報源(New York Post)の記事を確かめたところ、「手軽で身近なものにしてはなりません」というコメントは、日本語版で付け加えられたのだろうと推測される。

元々の記事は、中絶薬が普及しているヨーロッパとは異なるアメリカの動向を示したものだった。New York Postの記事によれば、アメリカではこれまで中絶薬は妊娠7週までに制限されていたが、この春、食品医薬品局が妊娠10週までに拡大したことが影響しているらしい。いわゆる妊娠初期とは妊娠12週未満を指すのだから、10週でもかなり厳しい制限だと言えるだろう。

ちなみに、WHOでは、2003年の段階ではミフェプリストンの使用について慎重な構えだったが、2012年には妊娠週の制限を撤回しており、妊娠中期の中絶でも安全に使える薬だと評価している。アメリカでなおも妊娠週数が厳しく制限されているのは、決して医学的な判断に基づいていたわけではなく、政治的な思惑が影響しているのだと考えられる。

つまりこの記事は、決して中絶薬の普及を嘆いているものではなく、アメリカでは中絶許容派と中絶反対派の勢力が拮抗していることを示している。大統領選の絡みもあって、この記事が掲載されたのであろうことも踏まえておきたい。