リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

緊急避妊薬レボノルゲストレルのOTC化に関するパブコメ

私も以下のパブコメを提出しました。

 女性のリプロダクティヴ・ヘルス&ライツを取り巻く諸問題の研究者として、レボノルゲストレルのOTC化に賛成します。以下、理由を述べます。

1.女性の生殖にまつわる健康と権利を保障し推進するために、レボノルゲストレルのOTC化は不可欠です

 WHOの最新(2017年)の緊急避妊に関する勧告では、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と述べられています。現在の日本において、最も効果が高く最も安全な手段はレボノルゲストレルに他なりません。
 日本でも、無防備なセックスのリスクにさらされている女性や少女がこの薬に容易にアクセスできるようにすべきです。

2.緊急避妊薬としてのレボノルゲストレルの性質上、早期服薬は非常に重要です

 海外の専門家たちのあいだでは、レボノルゲストレルは、基本的に精子および/または卵子の卵管通過を邪魔して排卵または受精を妨げることで緊急避妊薬として機能する薬であり、さらに子宮内膜に作用することで着床を防げる可能性もあると考えられています。
 レボノルゲストレルは服用するタイミングで成功率が変動します。性交後72時間以内のいつでも構わないわけではなく、〈できるだけ早めに服用〉することで避妊の可能性は高まることが知られています。海外の多くの国々で、特に先進国のほぼすべてがこの薬を処方箋なく入手できるOTC扱いにしているのは、緊急事態に陥った女性が一刻も早くこの薬にアクセスできるようにするためです。日本でもOTCで購入できるようにすべきです。

3.薬の安全性・有効性は科学的エヴィデンスに基いて判断してください。

 レボノルゲストレルが非常に安全な薬であり、深刻な副作用を引き起こすことはないことは海外では何度もくりかえし報告されています。国際的にレボノルゲストレルが安全で有効な薬品であると見なされていることは、審査が非常に厳しいWHOの必須医薬品リストにも掲載されていることからも明らかです。
 最新のレビューによれば、この薬を用いても妊娠が継続した女性は1000人につきわずか11〜24人であり、非常に多くの女性がこの薬を用いることで妊娠を回避できるのです。この大きなメリットの一方、この薬のリスクはたいへん低いと考えられています。
 なお、緊急避妊薬にアクセスしやすくすることで子宮外妊娠を見逃して死亡するリスクが高まるといった議論は、海外の信頼に足る文献には全く見当たりません。仮に、子宮外妊娠のリスクを理由にこの薬のOTC化を阻むのであれば、それを支持する科学的論拠を提示して議論すべきです。

4.女性のリプロダクションに関する自己決定を尊重してください

 レボノルゲストレルをOTC化しないのは、一種の「パターナリズム」であり、女性の自己決定を否定するものです。女性のリプロダクティヴ・ヘルスと自己決定を尊重するために、この薬は最低でも薬局でのOTC薬にすべきです。女性のリプロダクティヴ・ヘルスのニーズを充分に考慮し、特に意図せぬ妊娠をするという事態に鑑みるのであれば、女性たちの緊急避妊へのアクセスを第三者が妨害してはなりません。
 薬へのアクセスに様々な障害を設けることは、国際的な義務である到達可能である最高水準の医療を得る女性の権利を尊重、保護、達成することの妨げにもなり、医療に差別を持ち込まないという規定にも反します。

5.女性のみのニーズを阻害するのは性差別にあたります

 日本は女子差別撤廃条約の締結国であり、他の条約締結国同様に女性の人権としてのリプロダクティヴ・ヘルス&ライツを促進していく義務を負っています。海外の例にならって、科学的エヴィデンスと女性の権利尊重に基づき、日本でもレボノルゲストレルをOTC化していくべきです。
 また、海外諸国に比べて日本女性のあいだで避妊ピルの使用率が低いことは、この薬のOTC化を阻む理由にはなりえません。発展途上国の多くは避妊ピルの使用率が低いにも関わらず、ほとんどの国が緊急避妊薬を合法化し、導入しています。
 性教育の不足についても、むしろこの薬をOTC化するにあたって、女性たち自身や産婦人科医療や医薬品に携わる人々のあいだでリプロダクティヴ・ヘルスを守る意識を涵養していくことが重要でしょう。さらに、女性の健康と権利を尊重、保護、推進していくために、販売価格や販売方法、性教育や一般人への情報提供のあり方などについても再検討していく好機になるのではないかと期待しております。

以上