リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

MVAの独占販売は日本だけ?

手動吸引が広まらない背景

日本では一製品、一企業しかMVA(手動吸引器)が認可されていませんが、どうやら海外では複数の選択肢がある(競争がある)ようです。

Reproductive Health Supplies Coalition の記事によると、MVAを最初に開発したのはIpasで、その製品はWomanCare Global (WCG)が世界に流通させているとのこと。他に有名なのは、Marie Stopes International (MSI) で、こちらは国際NPO団体です。しかし、世界的にはメジャーなこの2つの販路が日本にはありません。その他にも中国やインド、台湾など多くの国の企業がMVAを手掛けており、世界ではMVA供給者は競争状態に置かれているようです。

一方、日本では、一企業の独占状態で競争が全くないために、「使い捨て(ディスポーザル)」でコスト高の製品しかなく、事実上、医師も女性たちも他の選択肢を奪われています。世界では「中絶」の医療やイメージを激変させた中絶薬ミフェプリストン(人工流産薬という方が正しいと個人的には思います)さえも、日本では未だ認可されていません。これで先進国だと言えるのでしょうか?

1999年に日本で「ピル」が認可されたとき、世界の人々は「やっと日本も『中絶薬』を認可したか」と誤解したが、実のところ日本で認可されたのは諸外国では1960年代~70年代にかけて次々と認可された「避妊ピル」だった……というのは、笑い話にもならない、世界に対する恥さらしです。

こうした国の政策、中絶医療の遅れのために、不利益をこうむったり、苦しい思いをしたり、下手をしたら人生を狂わされてしまう生身の女性たちが大勢いる……と思うと、怒りを禁じ得ません。