リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬を薬局で販売せよ

2007年のオランダでの議論と現在(overtime treatmentについても少し)

2014年に私はアムステルダムを訪問し、ガニラ・クレイヴェルダさん(Dr. Gunilla Kleiverda)を初めとするWoWの医師やメンバーにお会いしました。その時の資料の山が埋もれているので、少しずつ整理することにしました。

まずは上述のガニラさんが2007年にオランダ語で書いている記事の要約をご紹介します。

薬局で中絶ピル
2007年12月4日
G・クレイヴェルダ著

  • 望まない妊娠をした女性自身が中絶を望んでいるのに強制的に他の選択肢などを聞かせる「望まないカウンセリング」を行うことは非倫理的である。
  • オランダで中絶を求める女性の8割以上が中絶薬の対象になる。他の国に比べて、オランダでの中絶薬の使用率はまだ低い。不十分な情報や妊娠7週を境界線とみなす間違った取り扱いがその原因の一つである。
  • 流産を診る総合医助産婦は、薬を用いた人工流産(中絶)も診ることができる。
  • 薬局で正しい情報を添えて中絶ピルを販売すれば、女性の自己決定権に寄与できる。

こんな以前から、すでに中絶薬の店頭販売を主張しているわけです。びっくり! 結局、オランダでもまだそれは実現していませんが、他の事項については様々な変化が見られます。現在、強制的なカウンセリングは行われなくなっています。おそらくその分、中絶を申し出てから5日間の「再考期間」が設けられたようですが、月経の遅れが17日間以内であれば(つまり妊娠5週目半ばまでは)再考期間なく速やかに中絶を受けられるようになっています。情報源はオランダ政府

「月経の遅れが17日以内」については、説明が必要ですね。この期間の中絶処置はおそらくoverdue treatmentと呼ばれるもので、オランダでは法的に規制される「中絶」とは別物とみなされる「月経血抽出処置」のことだと思われます。これについては、確認できたら追記します。

なお、オランダ政府によれば、中絶はすべて医療保険で賄われるためオランダ在住者であれば無料で受けられるそうです。料金が高ければ高いほど医者にとって利益になる日本とは真逆で、保険で賄われるために、少しでもコストが削減される方向へと自然に圧力がかかります。よりコストがかからなくするためにも、より早期の中絶が行われ、それが結果的には女性の利益にもつながるわけです。