リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

より困難で受け入れがたい中絶しかない日本

エビデンスのないD&C(搔爬)をやめて中絶薬を導入すべき

WHOの"Medical management of abortion"(2018)の目的のところを読んでいて、WHOが2015年に”Health worker roles in providing safe abortion care and post-abortion contraception"というガイドラインを見落としていたことに気づきました。

これらの文献は、2019-20年に発行を予定している”Safe Abortion"の第3版までのつなぎとして、最新のエビデンスを踏まえた情報を政策決定者や医療従事者等に提供しています。

何十年も、充分なエビデンスもなくD&Cを続けてきたなんて、世界ではありえない非常識だということが分かります。

”Medical management"にも、”Health worker roles”にも、もはや”D&C”という言葉は全く出てきません。一方、後者において、D&Eは「高度な訓練を受けた医師のみが行える妊娠12週超の外科手術」と位置付けられています。

妊娠初期の中絶については、医師でなくても、訓練を受けた助産師などの医療従事者が安全に提供できるMA(薬による中絶/人工流産)という手段を採用することで、アクセスを高め、コストを抑えることが提唱されています。MAの登場については、次のように書かれています。

安全で有効なオプションとしてメディカル・アボーション(つまり、薬を用いる非外科的中絶)が登場した結果、適切な標準的技法も安全な中絶を提供するために要する医療者の技能もよりシンプルなものになり、安全な中絶の提供における医療提供者の役割を大幅に広げて考えることが可能になりました。

MAが「登場していない」日本では、より複雑な方法で、提供者は指定医に限られ、コストもかさみ、アクセスもより困難で、おまけに強いスティグマのために「より受け入れがたい」中絶ばかりが行われているわけです。