朝日新聞2019年11月27日に掲載
日本の15~44歳の女性の予定外妊娠は年間61万件にのぼるとする推計を、バイエル薬品と東京大の研究チームが発表した。低用量ピル(経口避妊薬)など、失敗の少ない避妊方法が増えれば予定外の妊娠が減り、経済的、社会的な負担を減らせるという。
同社と東京大の大須賀穣教授(産婦人科)によると、1年間の出生数や人工中絶数などを基に予定外の妊娠数は年61万件と推計した。その分娩(ぶんべん)や中絶にかかった費用は2520億円で、予定外妊娠する可能性のある女性が使った避妊費用は373億円だった。
コンドームよりも失敗が少ないとされる、低用量ピルや子宮内避妊器具(IUD)などの使用が10%増えると、避妊費用は109億円増える一方、予定外妊娠数は4万件、分娩・中絶費用も181億円少なくなるとした。最適な使い方の場合に予定外妊娠は7万件減り、分娩・中絶費は280億円削減できるという。
研究チームは、失敗の少ない避妊方法を多くの人がとった場合でも、IUDなどの普及が進む海外の事例から出生率の低下にはつながらないとみている。大須賀教授は「より失敗率の低い避妊法の選択は、経済的のみならず社会的な負担の軽減につながる」としている。(姫野直行)
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日本における予定外妊娠の医療経済的効果