リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

提案:避妊と中絶を産科医療における特定行為として助産師に任せては?

日本の医療崩壊と看護師による特定行為

2025年を目標に10万人の特定行為看護師を養成なんて無理では? 医療提供体制改革が進んでいない。

2020.3.9付けの朝日新聞によれば、次のような状況らしい。

特定行為の研修修了生数の推移

 看護師が医療行為の一部を医師に代わってする「特定行為」が始まって5年。厚生労働省は2025年までに10万人以上を養成したいというが、今年3月末で目標の約2%、2400人程度にとどまる見込みだ。看護師が行為をすることへの不安が医療機関などにあり、研修負担が重いことがある。このままだと地域医療体制への影響は必至だ

理由はいろいろあって、研修負担が重いこと(しかも自費で日本看護協会のホームページを見たところ何十万円もかかる)が一番の問題のようだけど、どうやら医師たちが看護師を信用せず業務を抱え込み、手放さないようにも見える。

これら特定行為のなかに、リプロダクティブ・ヘルスケアを盛り込み、助産師に任せてはどうだろう。助産師はすでに妊娠確認のエコーなども使えるし、看護師資格も当然もっている。

助産師に避妊ピルの処方、妊娠初期における中絶薬処方、手動吸引中絶処置の行為が認められれば、おそらく診療費も下がるし、女性にとってはアクセスしやすく、自分の一生にわたるリプロダクティブ・ヘルスを総合的に任せることができる力強いパートナーを得られることになる。

残念ながら、現状としては、日本の助産師たちの多くは中絶に積極的でないようだ。だからもちろん、やりたくない助産師に良心的拒否権を与えることも大切になる。だけど、中には積極的に総合的な女性のリプロダクティブ・ヘルスケアの担い手になることを望む助産師だっているはずだ。その方向に教育していく必要もある。

実際、国際助産師連合(ICM)は明確に、中絶は助産師の職務の一部と定めており、助産師教育の中にも総合的中絶ケア、女性中心的総合的中絶ケア、中絶後ケア、女性中心的総合的中絶ケアの四項目を含めている。それらのマニュアルもあるし、メディカル・アボーション(薬による中絶)トレーニングのカリキュラムも組み込まれている。(国際助産師連合の発行文書は、以下に示す日本看護協会が提供している「国際情報」のページで日本語で世界基準の内容を読むことができる。)

世界基準 | 日本看護協会

できないことではない。産科医療はそうでなくても人手不足だ。産婦人科の医師たちには、「熟練を要する」リスクの高い古めかしい中絶医療は早々に手放していただき、現代の医師しかできない仕事に集中してほしい。