リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本政府「第4回世界女性会議並びに北京宣言及び行動綱領採択25周年における包括的政府報告」

「産むリプロ」にしか興味のない日本政府

第4回世界女性会議並びに北京宣言及び行動綱領採択25周年における包括的政府報告で「リプロダクティブ・ヘルス」に触れているのは、「11.女性及び女児の健康上の成果を高めるために帰国では過去5年間にどのような施策を講じたか?」への回答の中にある次の部分の最後、1か所のみです。

●ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、又は公衆衛生サービスの拡大を通じて保健サービスへの女性のアクセスを促進。
●性と生殖に関する保健サービス、精神的健康、周産期医療、HIV医療など、女性及び女児のための専門の保健医療サービスを拡大。
ジェンダーに特化した啓発/健康増進キャンペーンを実施。
●保健医療従事者を対象とした、ジェンダーへの配慮に関する研修を提供。
学校でのあるいはコミュニティ・プログラムを通じた包括的な性教育を強化。
難民の女性及び女児、並びに人道的支援が必要な状況にある女性及び女児に性と生殖に関する保健サービスへのアクセスを提供。
●その他。

 女性が健康であることは、女性活躍の基盤であり、男女が互いの身体的性差を十分に理解し合い、人権を尊重しつつ、相手に対する思いやりを持って生きていくことは、男女共同参画社会の形成に当たっての前提と言える。心身及びその健康について正確な知識・情報を入手することは、主体的に行動し、健康を享受できるようにしていっくために必要である。特に、女性は妊娠・出産や女性特有の更年期疾患を経験する可能性があるなど、生涯を通じて男女が異なる健康上の問題に直面することに留意する必要があり、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)の視点が殊に重要である。

これを受けて説明している取組は、次の3種のみ。
(1)妊娠・出産への支援
(2)医療分野における女性の参画拡大
(3)企業による「健康経営」の取組

「性と生殖に関する保健サービス」の具体例は、(1)の中で説明している「子育て世代包括支援センターを整備するとともに、家庭や地域での孤立感の解消を図るために相談支援を行う「産前・産後サポート事業」や、退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等のきめ細かい支援を行う「産後ケア事業」など???? 「子育て」に関係するものばかりで、女性個人に対する支援策は皆無。

ましてや、女性が人生の長期に渡ってリスクを負っている望まない妊娠や避妊、中絶のサービス改善、アクセス改善は、全く行われていないのが現状です。

一点だけ評価できるのは、次でしょうか。

厚生労働省では、2020年に、予期せぬ妊娠などにより、身体的、精神的な悩みや不安を抱えた若年妊婦等が、必要な支援を受けられるよう、SNS等を活用した周知や相談支援を行うための予算を要求している。

コロナ騒ぎでこの予算が下りなかったのではないかと心配しつつも……。

あとは「やってる感」ばかりで中身は空疎ですね。また、国連に出した英語バージョンが情報開示されていないのも、非常に気になるところです。