リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

英:『女性たちのためによりよく(Better for Women)』

産婦人科医の問題意識から始まった画期的なBCOG報告書

2020年4月22日のブログの続きです。

2019年11月29日のBCOGのウェブサイトで『ベター・フォー・ウィミン』の報告書発行が報告されています。冒頭には、この調査プロジェクトを実行するにあたった産婦人科医たちの問題意識が記されています。

英国の女性たちは、エッセンシャルな(不可欠な)ヘルスケア・サービスへの幅広い障害に直面している。

国内3000人の女性を対象とした調査を行い、多くの女性が避妊や中絶ケア、閉経への支援を初めとする基本的なヘルスケア・サービスにアクセスしようともがいていることが分かった。RCOGは、一ヶ所で一度に女性にとって必要なヘルスケアを提供できるワンストップ女性のヘルスクリニックを設置するよう求めている。RCOGは、少女や女性が生涯にわたって健康とウェルビーイングを向上できるようにするために、画期的な報告書『ベター・フォー・ウィミン』を本日下院に提出した。

前書きでは「女性」と自認していない人でも産婦人科のサービスが必要になる場合があることを明記しており、人権意識の高さのほどが伺われます。

この文書で我々は女性や女性の健康といった言葉を用います。しかしながら、婦人科系の健康やリプロダクティブ・ウェルビーイングを維持するために女性の健康サービスやリプロダクティブ・サービスを必要とする人の中には、女性としての自己自認をもたない人々もいることを確認しておくのは重要です。そのため、婦人科および参加のサービスとケアの提供は、出生時に割り振られた性と一致しないジェンダーアイデンティティをもつ一人一人のニーズに合わせて適切でインクルーシブで思いやりをもって行わねばなりません。

この報告書では中絶薬の自宅服用に関して次のような提言も見られます。

提言11:すべての女性は容易にかつ罰や嫌がらせを恐れることなく中絶ケアにアクセスできるべきである。

中略……

保健社会保障省(DHSC)は、1967年中絶法における「自宅」の定義を見直し、拡大すべきである。さらにDHSCは、女性たちが妊娠初期の薬物中絶を実行するために使われる第一薬ミフェプリストンの自宅服用を許可することを検討すべきである。

こうした医師たちの提言があったからこその、COVID-19拡大下での「自宅中絶の許可」だったのですね。