リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

世界では中絶が早期化し減少している

今週いくつかの海外からのニュースを眺めていると、世界では中絶が早期化し、減少し、脱犯罪化している傾向が見て取れます。

www.scoop.co.nz

ニュージーランドでは、2007年に中絶経験者の23%を占めていた10代の中絶が、2019年には10%未満に激減した。逆に30歳以上の女性が中絶に占める比率は、同じ時期に28%から39%へと増えている。20代の女性が最も多く、2019年にはすべての中絶の51%を占めていた。

統計を取り始めた1980年から2003年のピークまでは中絶数が増加して行ったが、最近は横ばいになり安定している。

避妊へのアクセスが改善されたのが中絶数減少に貢献しており、中絶率の減少は、医薬品の政府補助を決定するファーマックと呼ばれる国家機関が長期作用型可逆的避妊インプラント(LARC法)のジャデーレ(Jadelle)を認可した時と時を同じくしている。

2019年には判明している妊娠数(出産、死産、中絶数の合計)のうち18%が中絶に終わっている。この中絶率はピークだった2003年(25%)以来現象の一途をたどっており、2012年頃から横ばいに変わった。ただしこの数値には流産は入っていない。

女性たちは妊娠のより早期に中絶を受けるようになっている。2019年の行われた中絶の69%が妊娠10週未満だった。同じ比率が2009年には50%、1999年には37%だった。

中絶の早期化には、中絶へのアクセス改善と、より早期に妊娠診断が可能になったことが影響している。

1998年以来中絶監視委員会が行って来たこの調査は今回で最後になるかもしれない。新しい中絶法案が2020年3月20日に通過したことで、中絶は他の医療サービスと同列に扱われるようになり、現在の刑法(2961年)と避妊不妊中絶法(1977年)が書き換えられたためである。

現在、ニュージーランドでは妊娠20週までの中絶は自由に行えるようになった。20週を超えた場合には、医療専門家の指示を仰がなければならない。

参考:
Abortion Legislation Act 2020 - Wikipedia

イギリスのマンチェスターでは、10代の若者の妊娠も中絶も激減したそうです。
www.mancunianmatters.co.uk

若者の行動パターンが大きく変わったことが一因とされています。ただし一方で、10代でも妊娠を継続して出産し、きちんと子育てしている人たちがいることもこの記事では強調しています。日本でも、「若者の妊娠=困ったこと」と一面的に決めつけないようにすべきですね。