リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

格安中絶問題(中期中絶に対する出産一時金搾取問題)に関する国会答弁

第200回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 令和元年11月28日

国会会議録検索システムを用いて、格安中絶問題に関して次のような答弁があったことを確認しました。

○梅村聡君 日本維新の会の梅村聡でございます。
 今日は一般質疑ということで、まず一問目は出産育児一時金と、それから人工妊娠中絶の問題について質問をしたいと思います。
 出産育児一時金といいますのは、例えば出産された方が健康保険組合国保組合に出産育児一時金を申請をすると、その結果給付される、妊婦さんに給付されるお金がこの出産育児一時金だと思います。
 まず、この中身なんですけれども、この条件、支給の対象となる分娩は妊娠四か月以上、八十五日以降の分娩というふうに、このように決まりがあるんですけれども、四か月目に設定している理由は何なんでしょうか。そしてもう一つは、唐突なんですが、出産育児一時金というのは、行政用語で言えば補助金に当たるものなのかどうなのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。


184 浜谷浩樹
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
 まず、出産育児一時金、御指摘のとおり、妊娠四か月目以降の分娩に対して支給することとしております。これは、死産証明等の分娩の事実に関する事実証明が医師法等によりまして妊娠四か月目以降の分娩についてのみ行われること等を勘案したものでございます。
 また、この出産育児一時金でございますけれども、出産に要する経済的負担を軽減するために、健康保険等の被保険者や被扶養者が出産した際に、被保険者からの申請により被保険者に対して一定の金額が支給するものでございまして、そういう意味では、いわゆる医療機関等に対する補助金ということではございません。


185 梅村聡
○梅村聡君 要するに、妊婦さんの経済的な支援のために支給するものだと。だけど、それを証明するのは、ちょうど四か月を境に、四か月から後になると証明書があると。だから、分娩をした事実が証明できるのが四か月目以降だから四か月に設定をしていると。そして、これは医療機関に対する上乗せのお金ではなくて、あくまでも妊婦さんにお渡しする支給金であるということだと思っております。
 このことをなぜしつこく確認をしているかというと、これ、最初私聞いたときもそんなことがあるのかなと思ったんですが、首都圏の一部の産婦人科医院などでは、十二週を超えると、妊娠十二週を超えた人工妊娠中絶では補助金が出るので、十二週になってから人工妊娠中絶を選択した方がいいんじゃないですかというような勧誘があるという話を私最初聞いたんです。まさかそんなことを医療者が私はやるはずはないんじゃないかと、普通に考えたら思いますわね。大事なことは、これは母体保護法なわけですから。やっぱり、週数を少なくとも恣意的に引き延ばすということは、私は医療者としてはあってはならないことだし、ないだろうと思って、実はこれネットで調べたんです。
 いろんなワードを入れて、グーグルとかヤフーで調べますと、実際出てくるんですね。保険証の申請で費用は五万円からと、実際にこういうものが出てくるんです。あるいは、一部の医療機関ですけれども、ホームページの中身を見てみますと、手術費用と書いてありまして、八週から九週は十二万円、十週から十一週は十三万円、十二週台は五万円なんですね。で、また十三週から値段が十五万、二十万と上がっていくわけなんですよ。ですから、これ、何が言いたいかといいますと、出産育児一時金医療機関が受け取れば、自己負担安くできますよということを実は宣伝をされているんです。
 もうちょっと中を読んでみますと、十二週台以降の手術費用は補助金を申請したときの金額です、補助金の申請は五分から十分で完了しますと、保険証をお持ちの方ならどなたでも申請可能ですと。さらには、手術を受ける時期は患者様の御都合に合わせて患者様御自身が決めることができます、○○週台で手術を受けたいなどのようにお伝えくださいと、実際にこういうことが書かれてあるんですね。
 多くの実は産婦人科のホームページは、やっぱり十二週から後というのは中期中絶なので体に対する負担が重いとか、そういうことをしっかり書いてあるんですけれども、現実にはそういうことではなくて、経済誘導していく、あるいはこれは補助金なんだというような記載があるわけなんです。
 私、ちょっとこれ、厚労省にお聞きしたいのは、仮に医療機関が人工妊娠中絶を予定している患者さんに出産育児一時金を目的に経済的インセンティブ、あるいは口頭で、妊娠十二週台以降の手術を勧めた場合、後ろにした方がいいんじゃないかと勧めた場合は、これ健康保険法上は何か違反になるんでしょうか。あるいは、母体保護法上、保護法上ですね、違反になるのかどうか、ちょっと二つの局にお聞きしたいと思います。


186 浜谷浩樹
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
 まず、出産育児一時金は、これは被保険者等に対して支給するものでございますけれども、一方で、まとまった出産費用を事前に用意していなくても安心して出産ができるように、被保険者と医療機関との間で代理契約を結ぶことによりまして、医療機関が被保険者に代わって請求と受取を行うことを可能としております。
 この制度を活用するか、又は加入している保険者に直接出産育児一時金の請求を行うかの選択につきましては、被保険者に委ねられております。そういう意味では、その代理契約の締結に当たりましては、こうした内容につきまして、被保険者に十分に説明した上で、制度の活用の意思を確認することが必要というふうに考えております。
 その上で、出産育児一時金につきましては、流産を含む分娩につきまして、妊婦の経済的負担を軽減するために一定の金額を支給される制度でありまして、健康保険法上は現に分娩の事実があれば支給することが必要、支給されるべきものというふうに考えております。


187 渡辺由美子
○政府参考人渡辺由美子君) 母体保護法の関係についてお答えいたします。
 先生おっしゃったように、この母体保護法は母性の生命健康の保護ということが目的でございまして、そのために妊娠中絶ができる期間等々を定めているものでございます。
 したがいまして、御指摘のような経済的インセンティブで勧誘をするという行為そのものをもって直ちに母体保護法違反ということはできないと思っております。


188 梅村聡
○梅村聡君 要するに、ここをついてきているわけですよ。法律には違反をしていない、どっちの法律にも違反していないから、まあやっても構わないだろうということですけど、これ法律違反だからやってもいいとかいう問題ではなくて、そもそも、人の体を扱う医療者としてやるはずがないだろう、そんなこと、ということがまず前提にあって、その上に法律というのはルールがあるわけだと思うんですね。
 私、是非これちょっとお願いをしたいのは、今までは法律がどうだこうだで規制はできたと思うんですけど、やっぱりこれは本来の医療者がこんなことをやっていいのかどうかという、こんなモラルのことを取り上げなあかんこと自体が僕は情けないことだと思いますけれども、現実的に法律の網の目を縫ってこういうことがやっぱり行われてきているわけなんですね。
 これ、母体保護法による指定医は、これは厚生労働省が法律は管轄をされていますけれども、実際には都道府県の医師会が審査であるとか指定というものは、これはされているわけなんです。あるいは、この母体保護法指定医を取る前提は産婦人科学会の専門医であるということですから、モラルの上にいろんな知識や技術が乗っているという考え方だと思いますので、私、是非、こういう問題が今出てきているんだということを厚労省と、そして都道府県医師会と、それから産婦人科の学会の皆さんとしっかり共有をして、やっぱり法律の問題ではなくて、こういうことは本来やってはいけないんだという、そういう認識の共有を是非持っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


189 渡辺由美子
○政府参考人渡辺由美子君) 御指摘ございましたように、母体保護法におきましては、この人工妊娠中絶を実施することができる医師というのは各都道府県の医師会が指定するということになっておりまして、各医師会におきまして、指定申請に関する審査はもちろんでございますが、二年ごとの資格審査、それから不適格な場合には指定の取消しということもできることになっておりますので、まずはこの制度の中でしっかりと適切な形でやっているかどうかということを確認すべきものだと思いますが、御指摘のございました共有ということにつきましては、厚生労働省におきましても、この趣旨につきまして、ちょうど近々、関係団体とともに共催をしております指定医の講習会等もございますので、そういった場を活用してしっかりと共有をしていきたいと思っております。


190 梅村聡
○梅村聡君 患者さんや国民のためにも、是非しっかり共有をお願いしたいと思っております。